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二人目の友

「ふぅ」


 短く息を吐いて、イリスは掌に集めていた魔力を霧散させた。

 空にはまだ幾つかの光弾が残っていたが、それらも全て弾けるように消失していく。

 視線を向けると、見下ろした先にはクラリッサが仰向けに倒れて気絶している。彼女の周囲にはマジック・ミサイルが降り注いだことによるクレーターのような弾痕が無数に出来上がっていた。

 イリスはそこから視線を外し、背を向けた。

 近くで倒れているヘイゼルの元に向かい、彼女を助け起こす。


「生きているかい? 助けるのが遅くなってすまないね」

「……イリス、さん……? どうして……?」

「どうしても何も、君はボクの恩人だよ。助けにくるのは当然じゃないか」

「で、でも……わたし」

「待っていたまえ、今回復魔法をかける」


 手を翳し、癒しの光で照らす。

 ヘイゼルの傷は見る見るうちに塞がっていき、鞄の中にあるカートリッジがまた一つ消費されていく。


「君はボク達のために怒ってくれたんだろう? だったら助けにくるのは当然さ」

「……それは理由の一つに過ぎません。確かにガエルの横暴は目に余るものでしたけど、一番は……彼の父が、両親の仇だったかも知れないからです。わたしは、復讐心に我を忘れて、イリスさんを巻き込みました」

「だとしてもだ」


 イリスの手が、ヘイゼルの目に溜まった涙を優しく拭った。


「ボクにとってはその理由の一部になれただけでも光栄なのさ。君を助けるには、充分過ぎる動機になる」

「イリスさん……!」


 涙で潤んだ瞳が、イリスを見上げる。

 彼女は高潔だ。弱きものを見捨てず、例え実力が釣り合わなかろうとイリス達を助けにくるような無茶もする。

 それを無謀な愚か者となじることは、イリスにはできなかった。


「君のその高潔さに惚れたんだ。よければ、友達になってほしい。そうすれば、今後も君を助ける理由ができるだろう?」

「……わ、わたしでよければ」


 イリスは立ち上がり、手を差し出す。

 ヘイゼルはその手をしっかりと握り、身体を起こした。


「さて」


 ぱんぱんと身体に付いた草を払い、遠くを見る。

 いつの間にかガエルは逃亡していたようだった。


「ガエルは何処に行ったと思う?」

「もう彼が逃げられる場所は多くはありません。で、あれば」

「ケンドールの屋敷か。ヘイゼル、道案内を頼めるかな?」


 友達なので、呼び捨てにしても構わないだろう。

 そう言われたヘイゼルも全く気にしてないようだった。


「で、でも」

「彼等は君の両親の仇なのだろう? 仇を打つかどうかはわからないが、問いただしておこう。ボクには、それをするだけの理由がある。それに、個人的に用事もあるからね。彼が持っているあの水晶、あれは危険な代物だ」

「……わたしの両親が死ぬ以前に、あの屋敷は多くの魔物達に襲われました。でもそれらは不思議と統率が取れていて、まるで誰かに率いられているようで……」

「……やっぱりね」

「あれは何かの魔法なのでしょうか?」

「断言はできないが、それに近いものだろう。ただ」


 一度言葉を切る。

 その先を口にするのは、イリスにもある種の覚悟が必要だった。


「あれはボク達の魔法、仮に禁術と呼ばれる封印されたものを用いても封じられるかはわからない。理外の力だ」

「……そんなものが……」

「不思議な話ではないだろう。ボクは、冒険者とは未知を追う者達だとも聞いていたよ?」


 だからこそ冒険者を目指したというのも、理由の一つではある。


「それは、そうかも知れませんけど。でもそんな力が目の前にあって、それをあいつらが持っているなんて」

「そう。危険なんだ。実はね、事態は一刻を争う」


 あくまでも冷静に、イリスは告げる。

 ヘイゼルからすればそれは、冗談を言っているようにも聞こえたかも知れない。

 ただ、ここでイリスがルブリムを連れにも戻らず、カートリッジの補充もしないことが一つの理由となっていた。


「……わかりました。案内します」

「助かるよ。これはボクの独断だから、ひょっとしたらギルドはクビになってしまうかも知れないけどね」


 同じ冒険者仲間を攻撃するどころか、領主を害そうと言うのだ。

 これが世に知れたら、イリスは罪人として追われるかも知れない。しかし、別の方法が思いつないのもまた事実だった。


「そんな……!」

「大丈夫さ。いざとなったら、君に庇ってもらうからね」


 気休め程度の笑顔を浮かべながら、イリスはヘイゼルを見上げる。

 彼女がそれで安心してくれたとは思わないが、決意は伝わっただろう。

 何も言わず、ヘイゼルは先導して歩き出し、イリスもそれに続くのだった。

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