ぬいぐるみからのご招待
ぬいぐるみとかが出てくる話です。
ほのかは、どうしても自分だけの部屋がほしかったのです。
お兄ちゃんや弟と同じ部屋できゅうくつに過ごすのは、もううんざりでした。だって、お兄ちゃんはお友だちを何人も連れてきては、部屋で本を読んでいたほのかを追い出しますし、弟は、ほのかの大事なぬいぐるみたちをわざと乱暴に扱うのです。
おまけに、3人の部屋はとてもせまくて、机とたんすが3つずつ、それでいっぱいになってしまうのです。ふとんを敷くにも、弟がぶちまけたブロックや、お兄ちゃんのマンガが邪魔をします。ほのかは、自分のぬいぐるみをちゃんと机の上に避難させているのに。
ほのかのお友だちは、みんな1人の部屋をもらっていました。莉乃ちゃんは、学校の教室くらい大きな部屋で、グッピーを飼っているのです。親友の真優は、こじんまりとした自分の部屋に大好きな歌手のポスターやアニメの人形を飾って、思いっきり楽しめる空間に仕立てていました。2人とも、どれだけ部屋を自分の好きに変えても、誰にも文句を言われないのです。
真優や莉乃ちゃんのお家に行くたび、ほのかはちょっとだけ悲しくなります。自分だけ、どうして一人の部屋をもらえないんだろうって思ってしまうからです。
そんなほのかの、言葉に出せない願いをいつも聞いてくれているのは、ぬいぐるみたちでした。純白の体に金の角のユニコーン、愛くるしいコーギー、小さくてふわふわのふくろうに、まんまるい瞳のこねこ。みんな、ほのかの一番のお友だちで、一番の理解者でした。
ほのかは毎晩、兄弟が寝てしまった後に、ふとんの中でぬいぐるみと遊びます。あったかくて薄暗いふとんの中は、ユニコーンたちと歩く森でした。聞こえてくるいびきは、竜のうなり声。ぬいぐるみたちとほのかは、世界の危機をなんべんも救ってきた冒険者なのです。
ところが、ある夜、ぬいぐるみたちのやりたいことは少し違うようでした。
「さあ、今日は何と戦う?」
ほのかがコーギーに聞いたとき、コーギーは首を振りました。
「今日は、僕らのお部屋で遊ぼうよ」
そう言って、驚いているほのかをユニコーンの背中にのせて、ぬいぐるみたちは駆け出しました。ふとんの世界を抜けると、ぬいぐるみたちが住んでいるお城がありました。満天の星の下に、そのお城は旗をひらひらとはためかせて、堂々とたっていました。
お城で遊ぶのは、なんと楽しいことでしょう! ぬいぐるみたちは、先を争って、自分の部屋をほのかに見せたがりました。ユニコーンの部屋にはシロツメクサのじゅうたんが敷き詰められていて、天井には星のモビールがつり下げられていました。コーギーの部屋にはおもちゃがたくさんあったので、みんなでぐったり疲れるまで遊びました。ふくろうの部屋には面白い本がぎっしりつまった本棚が、こねこの部屋にはふかふかのベッドがありました。
帰る前に、ほのかはもう一つの部屋に案内されました。そこは、ぬいぐるみたちの部屋と同じくらいの広さでしたが、がらんどうでした。
「ここは、ほのかの部屋だよ」
コーギーが、ほのかに言いました。ほのかがその時どれだけ嬉しかったか、皆さんにもよく分かったことでしょう。
次の日、ほのかは熱を出してしまいました。お城で一晩中遊んで、疲れてしまったのでしょうか? 学校もお休みして、ほのかは子ども部屋で一日中休んでいます。
ぬいぐるみたちは、ふとんの外に並べられていました。ほのかを見つめるぬいぐるみたちは、どこか申し訳なさそうな目をしていました。
夕方になって、お兄ちゃんや弟たちが帰ってきました。2人とも、ほのかのことを心配しているようでした。おかゆとすりりんごを運んできてくれたのは弟だし、お兄ちゃんはほのかがせがむと絵本を読んでくれました。
やっぱり、1人部屋はまだいらないな。ほのかはふとんの中で思いました。みんなと同じ部屋にいる方が、楽しいや。
その後もほのかは、たびたびぬいぐるみたちのお城に遊びにいくのでした。