第1話 姉の行方不明
お待たせ致しましたー
俺は、我孫子賢也。
まあまあ、珍しい名字と関西弁が通常運転以外は……どこにも居るような男だと思う。
長野に移住してきて、十年近く経ったくらいか。古馴染みで、引きこもりになりかけてた友人の三ツ矢柊司に店を開くから来ないかと誘って……なんやかんや、こじんまりとはしてるが、良い雰囲気のコーヒーショップを開店して順調やった。
あのふわふわな妖怪とかが来るまでは。
それまでは、俺がオーナーで柊司が店長。実質ふたりで経営していた店に……どう言うわけか、空想でしかなかったケサランパサランが現れた。柊司は可愛いもんに目がないからすぐに気に入ったんや。綿ぼこりのまんまやったら、俺もまあええかと思ったわ。
(けんど……コーヒー豆のカス食っただけで、人間みたいになった)
赤ん坊やけど……まあ、可愛いらしいちょぉ茶がかった黒髪の赤ん坊に。柊司はすぐにまっぱのそいつをカーディガンでくるんで……あやすくらい気に入ったんや。俺が聞いても、即養子にすると言い切るくらいに。
素性はともかく、放っておけないと言い切った。古馴染みの俺は危険やとそん時は思ったで??
妖怪変化みたいな存在に……柊司が関わって危険がないと言い切れんかったんや。その後に出てきた……めっちゃ胡散臭い座敷童子とか名乗って、適当に颯太とか呼べ言ったガキにも……育てていいと言われたんで、柊司はめっちゃ喜んだ。
この古馴染みの嬉しそうな顔……『あの事件』以降、俺でも見たことがない。
(イツねーちゃんがいなくなってから……見てないわ)
もう何年経つんや??
俺らが新卒になった後くらいやから……そろそろ十年。
俺は直接立ち会っていないが……柊司がイツねーちゃんと、その日は柊司の入社記念で飲みに行こうと約束したんやて。
シスコン……に近いくらい、姉を尊敬していた柊司はその誘いをずっと楽しみにしていた。俺もあとで合流すると決めていたんに……定時で上がって、煙草吸いながら空いてる時間潰しをしてたら。
柊司から、連絡があったんや。
『……姉さん、が……消え……て』
誘拐か、と一瞬疑いかけたがそうじゃないと、柊司は途切れ途切れだが、通話でこう答えた。
『トラックに撥ねられて……そうしたら、光って』
傷だらけの体のまま、イツねーちゃんが消えたと。
わけがわからんかったが、その後警察がいくら捜索してもねーちゃんの体は見つからず。
警察がもう無理だ、と捜索を手放した頃に遺体のない葬式が開かれた。
喪主だった柊司は……ずっと、声を出さずに泣いていた。
次回はまた明日〜




