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絡繰異聞・前日譚  作者: 和条門 尚樹
贄人形の章
21/30

まるで水槽の中

 こぽ、こぽぽ。

 気泡音(きほうおん)子守唄(こもりうた)代わりに聞きながら、意識は微睡(まどろ)みよりも(さら)に深く(しず)んでいる、自覚があった。

 思考がまとまる気配もなく散り散りで、自身の置かれている状況(じょうきょう)ですらも把握(はあく)できない。身体(からだ)の感覚が(ひど)くあやふやで、一体自分がきちんと目を開いているのか、それとも閉じているのかさえも、自信が持てなかった。

 遠くで、(だれ)かと(だれ)かが言い争っているような気がする。

 いや、正確には。(だれ)かが、(だれ)かに、()って()かっているように思えた。しかも、思ったほど遠くはない。分厚い硝子(がらす)(かべ)を、(へだ)てているだけで。

 自分のこともよく分からないのに、何故(なぜ)だかその二人のやりとりは知覚できる。気がする。

 よくよく考えたら、奇妙(きみょう)なことだ。身体(からだ)(はな)れて、これではまるで、幽体離脱(ゆうたいりだつ)ではないか。

 吸い寄せられるように、ふらふら、ふわふわと(かべ)(とお)()けて二人組に近付けば、()せていた視界に(いろ)(もど)ってきた、気がした。

 瑠璃色(るりいろ)(かみ)の子供が、少し(くれない)がかった茶髪(ちゃぱつ)の子供に、何ごとかを(うった)えている。そして、どちらの顔にも、なんとなく見覚えがあった。

 いや、なんとなくどころではない。だって、彼等(かれら)は。自分は。

 一気に(ふた)をしていた記憶(きおく)(あふ)()しそうになり、浮上(ふじょう)しかけていた意識がまた悲鳴を上げた。

 ずぶりと無意識の沼底(ぬまぞこ)()きずり()まれて、二人の姿が急速に遠ざかっていく。

 咄嗟(とっさ)()ばした(うで)は、何処(どこ)に届くこともなく。

 ああ、(しず)む。()()まれてしまう。

 こぽり、こぽ。

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