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絡繰異聞・前日譚  作者: 和条門 尚樹
創造主の章
12/30

日常の崩壊

「……ふうん、一ヶ月(いっかげつ)ねぇ」

 思わず、口から()()ていた。確かに、そろそろ粛正(しゅくせい)される頃合(ころあ)いかな、とは思っていたけれど。

 (ぼく)の元々の研究動機を璃音(りおん)が満たしてくれたおかげで、やっと改めて、今までの()()()(かえ)余裕(よゆう)ができたんだけれど、まあヤバかった。そりゃあ(みんな)にも、マッドサイエンティストと呼ばれていても無理ないなと思った。何せ、やっていることは立派な人体実験だ。しかも、人間を絡繰(からくり)人形にするソレを、(むし)嬉々(きき)として、実行していた。

 最終的に形になったのは、全部で十二人。璃音(りおん)の前に十人、そして璃音(りおん)の後にも、組織からの指示で、一人。しかも、形になりだしてからのカウントということは、失敗作も当然あるわけで。幸いにも(ぼく)の主な担当は素体(そたい)と呼ばれる義躯(からだ)作りだったけれど、人間の精神活動を機械に(うつ)()えていた、他の担当の所業も加えたらどうなることか。うわ、自分で言ってて鳥肌(とりはだ)立ってきた。

一ヶ月(いっかげつ)で全部()(はら)って投降するんだったら、命だけは保障してやるってさ。『考える猶予(ゆうよ)一ヶ月(いっかげつ)やる』……はん! あいつら何様のつもりだっていうの」

 周囲がざわついている。多くが真っ青な顔をしている。そりゃそうだ。彼等(かれら)は、無理矢理(むりやり)集められてきた、(ある)いは金に目がくらんだ(やと)われ助手が大半だ。まさか、一緒(いっしょ)粛正(しゅくせい)されてくれるはずもあるまい。

 一緒(いっしょ)粛正(しゅくせい)させる、義理もない。今の(ぼく)には、璃音(りおん)がいるから。

「ほら、聞いたでしょ!? 出て行くなら今のうちだよ、とっとと行った行った!」

 シッシッと追い出すように手を()って見せたら、(さら)にざわめきが広がった。え、まさか(ぼく)の言葉が意外だったとか言わないよね。かつてのことを考えたら、意外に思われても仕方がないのかなぁ、反省。もう、(おそ)い気もするけど。

 (あお)い顔に少しだけ色を()(もど)して、我先にと飛び出していくかつての助手たち。きっと、たまたま今は折り悪くこの場にいなかった、他の助手たちも連れて、()()してくれることだろう。

 急にガランと人気が減ったせいか、研究所がなんだか広々として見えた。広々と、というよりは、寒々と、か。

「……ま、こんなもんだよね」

 ぼやいていたら、背後から小さな足音が(ひび)いた。

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