表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絡繰異聞・前日譚  作者: 和条門 尚樹
堕天使の章
10/30

堕天使

「バカバカ、この大馬鹿っ!」

 天音(あまね)にぃは、ご立腹だ。飛行実験と飛行訓練の後、唐突(とうとつ)天音(あまね)にぃの自室に呼び出されたから、何事かと思った。

 ご立腹そうな天音(あまね)にぃだけど、普段(ふだん)なら(こわ)いけれど、今は全然(こわ)くない。部屋に入るなり()()められてのお言葉じゃ、裏の本音が(ちが)うところにありそうなのが、バレバレだ。こういうところ、天音(あまね)にぃは(あま)い。というか、幼い。天音(あまね)にぃの方が年上のはずなのに、()ねている詩音(しおん)を相手している気分になる。

「どうして(ぼく)があんなにお(ぜん)()てしてあげたのに、()げないのさ!?」

 道理で訓練コースが面白(おもしろ)かった訳だけれど、はて、()げるとは?

 どうやら、疑問がそのまま口から出ていたらしい。頭の上の天音(あまね)にぃが、眉間(みけん)にしわを寄せた。

「自由になりたかったんじゃないの?」

 何のことか(わか)らず、見上げたまま首を(かし)げたら、今度は深々と嘆息(たんそく)された。

「空の上は、さぞかし自由なのだろうなって言って、空を飛びたがってたじゃん。だから。璃音(りおん)も、もう(かしこ)いから(わか)ってるでしょ? このままここにいたら、一生(ぼく)一緒(いっしょ)に実験()けだよ」

天音(あまね)にぃとなら、問題ないな」

(ぼく)とならって……えっ、ちょ、璃音(りおん)!?」

 とってもくだらない問題だったみたいなので、お返しに天音(あまね)にぃをぎゅっとしてやったら、見事にパニックになった声が聞こえた。

「というか、天音(あまね)にぃじゃなきゃ、イヤだ。天音(あまね)にぃがいるから(もど)ってきたのに」

 天音(あまね)にぃにも(だれ)かがいないと可哀想(かわいそう)だ。と、結構前から思っているのは、(だま)っておく。天音(あまね)にぃはきっと、側にいてくれる(だれ)かを、ずっと(くる)おしく求めていたのだ。そして、自分も、また。

 だから、ちょうど良いのではないだろうか。

天音(あまね)にぃは、自分がいては不満か?」

 上目遣(うわめづか)いに見上げたら、天音(あまね)にぃが撃沈(げきちん)した。

「何だよ、もう。本当に天使が堕天(だてん)してる……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ