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幼馴染が着替えようとしてるけど……俺の存在忘れてない?

「遊斗ー、ここで着替えるわねー」

「おーう……ちょっとまて」


 俺の部屋で着替えようとする幼馴染、兎乃。あまりにも自然な流れだったが、俺は違和感にすぐ気づき兎乃の行動を止めた。


「え、どうしたの。見られたらマズい物でもあった?」

「俺が見たらまずいだろ!! 自然な流れでここで着替えるな」

「なぁんで?」

「なんで? そりゃあ幼馴染とはいえ、男が女の着替えを見るなんて最低だからだ」

「私は別にいいけど?」


 えっいいの!? 幼馴染とはいえ、男が女の着替えを見ようものならトラブル待ったなし。見られた側はキャー!!と叫びながら男を殴り飛ばすに決まってる。

 なのに兎乃ときたら、


「兎乃? お前、男子に着替え見られてもいいのか……?」

「えー誰でもは嫌だよ。でも遊斗とは幼馴染じゃん?」

「まぁ、そうだが?」

「昔は一緒にお風呂入った仲だしー。今更着替え程度大丈夫だって」

「俺が良くないわ!!」


 見てもいいとか超困る!! 不意だろうと合法だろうと関係ない。女の着替えなんて見るだけで変な気分になりそうだし、後が怖い。


「え、幼馴染のことそんな風に見てたんだー。結構むっつり」

「じゃあ逆に聞くが、兎乃は今でも俺とお風呂入れるのか?」

「……入れるし」

「恥ずかしいのバレバレだぞー」

「うっさい!!」


 顔を真っ赤にさせながら叫ぶ兎乃。ほほう、流石に裸は恥ずかしいか。


「お前に恥じらいがあってよかったよ。少し安心した」

「私がビッチにでも見えたわけ? で、でも頑張れば入れるし、遊斗だって照れてたし!!」

「俺?」

「私がここで着替えようとした時、遊斗は明らかに動揺してた。そんなムッツリさんが、女の裸に反応しないわけないじゃん」

「くっ……」


 見透かされてる……いや、見ようと思えば見ますよ? ただ、後は怖いしやっぱり見ちゃいけない気がしちゃうし……正直見たいけど勇気がないだけです。


「やっぱりさ、私の事女として認識してくれてるワケ?」

「……当たり前だろ。昔とは違うんだから」

「へー、そっかぁ……」


 悪そうな笑みを浮かべながら兎乃が近づいてくる。固まって動けない俺を気にせず、じわりじわり。そして俺の耳元に顔を近づけ囁いた。


「私ね、流石に裸は恥ずかしいけど……下着くらいなら全然平気なんだよ?」

「うさ、の?」

「遊斗は私の下着程度で恥ずかしがるもんね、流石童貞」


 当たり前だろ。一緒にお風呂へ入ったお前なんてどこにもない。

 成長して色んな部分が女になったお前を、純粋な目で見れるわけがないだろ。


「もういいだろ……俺だって彼女が出来たら、それくらい」

「ほんとに?」


 ダメだ、兎乃のペースに飲まれている。一緒にお風呂で動揺させたのなんて一瞬。俺の童貞心を上手いこと揺さぶり、甘い言葉を重ねていく。


「着替えで動揺するのに、裸なんて見たら気絶するんじゃないのー? そんなんで夜の相手なんて勤まるかなぁ?」

「……ノーコメントだ」


 AVのモザイク混じりな裸しか見たことない俺だ。生裸なんて見た日には1週間くらい頭から離れず何も集中できなくなるかもしれない。


「あはは、堅苦しくならないでいいのにー。じゃあさ、私で練習しよ」

「練習?」


 兎乃からの提案に心臓がドキッとする。


「そ、ここで着替える私を遊斗が見続けるの。もちろん、目はそらさないでね」

「また訳の分からないことを……」


 呆れた口調をしているが、内心はバックバクだ。昔からの幼馴染とはいえ今ではかなりの美人に成長した。体型は全体的に引き締まりつつも胸やおしり等、付くべき肉がちゃんとついてる。

 そんな彼女が今から着替える、反応するに決まってるだろ。


「そうだなー……あ、まずはスカートから脱ごうかな」

「は?」

 

 いきなりそこから!? 

 と、動揺する俺をクスッとあざ笑いながら、兎乃はスカートに手をかける。


「お、おいまて……」

「あ、やっぱり動揺してる。かわいいねぇ」

「違う、こんなのおかしいだろ。どう考えても……」

「あー、ホックが外れてゆるくなったー♪」

「おい!!」


 スカートのホックが外れ、若干下にずれていく。下着部分はシャツで隠れてまだ見えない。しかし、もう少しスカートが下に落ちれば……


「あー、手はなしたら落ちちゃいそう……そうだ」

「?」

「遊斗、私、何色履いてると思う?」

「へ……」


 また、妙な揺さぶりを掛けてくる。

 兎乃との距離は近い。つまり細かいところまで、兎乃のアレが見えてしまうわけだ。


「クイズみたいなもの。想像したら楽しいでしょ」


 ゴクッとつばを飲み込みながら考えてしまう。昔は白一色だったか……でも今は成長して色んなのを履いてるかもしれない。黒かピンクか、それとも……


「なーに考えた?」

「いや、その……もうやめないか?」

「ふふ、ダーメっ♡」

「っ!!」


 スカートから手を離し一気に地面に付いた。幼馴染なんかじゃない。目の前にいるのは男を弄ぶ小悪魔だ。女として誘惑する兎乃が履いていた下着は……


「へ……」


 想像とは程遠い、ショートパンツくらい長くて真っ黒なものだった。


「正解は黒、だけどスパッツでしたー!!あはは!!」

「……からかったな?」


 妄想から生まれた欲情と、拍子抜けだった現実によるギャップ。妙な気分だ。最後まで俺は幼馴染の手のひらで転がされていたという訳か。


「まさかパンツだとでも思った? バッカじゃないの」

「純粋で悪かったな」

「へー」


 兎乃は俺から離れドアに向かう。そしてドアに手をかけようとした瞬間振り返ると


「遊斗ってほんと……ムッツリさん♡」


 イタズラっ子みたいな微笑みをした。


「着替えるんじゃなかったのか?」

「えー? そのつもりだったけど、十分楽しめたから♪」

「……そーかい」


 楽しげな雰囲気のまま、兎乃は俺の部屋を後にした。


「はぁ……」


 正直どうにかなりそうだった。

 幼馴染の女性が目の前でスカートを脱ごうとした。健全な男子高校生にとっては刺激の強すぎる出来事だ。


「変にドキドキさせやがって……」


 その先がパンツだろうとスパッツだろうとはたまた別のものだろうと関係ない。

 可愛い幼馴染の着替える姿が頭から離れず、俺はしばらく悶絶していたのだった……


~~~


「めっちゃ恥ずかしかった……」


 壁にもたれかかりながら、さっきまでの出来事を振り返る。私だって女の子、幼馴染とはいえ男子の目の前で着替えるなんて恥ずかしい。

 ドキドキしてたのは遊斗だけじゃない、私もだ。


「でも、遊斗は私の事女だと意識してくれた」


 何故あんなことをしたのか。それは遊斗が私を友達としか見ていないのか確かめたかったから。

 けど、私を女として認識し、童貞心を十分くすぐる結果になった。


「今度は覚悟決めて、お気に入りの下着で誘惑しよ……♡」


 スパッツの中を覗くと、そこにはピンク色の大人な下着。本来はスパッツの中も見せるつもりだったけど、恥ずかしすぎてやめた。

 けど、これからは私の全てを遊斗に見せ、もっともっとドキドキさせてやる。

 いつか私に夢中にしてあげるから。楽しみにしててね、ムッツリ遊斗♡


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