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Page.1 いつもそこにあるであろう休みの始まり


 学生の後期ほど憂鬱なものはないと思ってる。特に1年生のだ。

前期の関係性構築に失敗すれば、

ともいえば夏休みや前期終了後の休みに誰とも遊びに行かなかったら、

後期初めのオリエンテーションでボッチになるのは必然といえる。



「レイン、後期の自由授業は決まったか?」

「イル…まあ僕はとりあえずそこそこ便利そうなやつを…」

「そんな適当でいいのか?将来の夢とか無いのか?」

「ないかな」

「そんなんでいいのか?お前魔法学科だからそっち関係に進むのかと思ったけど」

「…難しいんだ、色々とね」



まあその点でいえば僕は恵まれたほうだと思う。

こんな自分とバカやってくれる奇特な友人がいる

ちょっとした安心感に浮かんでいたところにまた一人やってきた



「二人ともここにいましたか、暇ならこの後クエストでもしませんか?」

「ヴィア、お前今日は用事あるんじゃなかったのか」

「それはもう終わらせてきましたよ。思ったよりしょうもない依頼でした」

「さすが俺らのエースだな、先生の依頼をしょうもないというか」

「ただの素材集めですよ。そこまで大層なものじゃありません」

「でもハゲちゃんの依頼だったんだろ?あの人優しそうな顔して意外と面倒なこと頼んでくるじゃん」

「イル…先生をそんなあだ名で呼んでやるなよ…」

「後で面倒ごと頼まれても知りませんよ、それよりクエストは行くんですか?」

「もちろん行くよ、イルは?」

「ここ最近サボり気味だったしな、もちろん行くぜ」



イルヴァータとヴィア、二人の仲間と出会ってからは楽しい日々が続いている

特にイルヴァータことイルの面倒ごとは良くも悪くも毎日退屈しない

学院生活も最初は不安しかなかったけどうまくやれているんじゃないかな



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「とりあえず何やるか決めないとな」

「私は討伐系でいいと思いますけどね、

なんでしたら明日から長期休みですし遠征もいいんじゃないですか?」

「遠征か、そういえば二人と組んでから旅行は初めてだな!いいんじゃねぇか?」

「旅行じゃなくてクエストじゃないの…」

「ばっかお前、旅行しながら各地のクエストすんのがいいんだろ」

「ふふふ、レインは固く考えすぎですよ。イルみたく…は楽観的過ぎますけど」

「おい」

「イルがもう少し落ち着きを持ったほうが私の負担が減るんですけどね」

「喧嘩の特売か?!買い占めてやるよ!」

「イル、少し落ち着いて。ヴィアも煽らないの…」



仲はいい…はずなんだけどなぁ?


そんなこんなで三人で騒ぎながらも町のハンターズギルドを目指している

少し歩くと、見えてきたのは少し薄汚れた5階建ての白い建物

いつもより少し騒がしめなそこには人々の活気を感じる

裏手の少し大きめの建物からは微かに血の匂いが漂っている

今日もハンターたちは元気に外を駆けていたみたいだ

やっぱり僕はここが好きみたいだ



「何か今日いつもより騒がしくないですか?」

「んーなんかレアなモンスターでも討伐されたんじゃない?」

「なんだろうな?とりあえず中入ろうぜ」



中に入ると喧騒はより大きくなった、ただ少し慌ただしさを感じる



「あ!フラテルアルマの!ちょうどいいとこに!」

「よおビーちゃん、何があった?」

「ビーちゃんじゃなくてビシュアンさんって…今そんなこと言ってる場合じゃないのよ!

返ってきたハンターさんがバジリスクの呪いで石化していってるのよ!レイン君は一緒?!」

「僕ならここに、とりあえず急を要すみたいだし案内してください、応急処置位なら出来るはずです」


訪れて早々事件みたいだ…にしてもバジリスクの呪いとはまた面倒な…

ビシュアンさんの案内で件のハンターのもとに向かうと


「おお、レインか。っかー情けねぇとこ見せちまったな!

ドジ踏んじまってな、ちょいと頼むわ!」


そこには先輩ハンターであるグオルさんとそのチームメンバーがいた

どうやらグオルさんがやられたらしいけど割と平気そうに見える

足元から腰あたりまで石化が進んでいるのにそこまで焦っている風に見えないのは

さすがに心臓が強すぎではなかろうか…

何なら周囲の方が本人より深刻そうだ


「グオルさん、さすがに治療法があるとはいえもう少し深刻な感じを出してくれないかな…」

「あん?死ぬわけでもあるめぇに慌てたっていいこたねぇだろ?」

「おっちゃん、流石にそれは根性ありすぎ」

「本当ですね。治らない訳ではありませんが下手すれば命に関わるんですよ」


イルとヴィアも心底呆れたような顔をしている

この人は頼りになる人だけどどこかズレてるんだよなぁ


「とりあえず解呪だけはするけど石化の方はどうにもできないからね」

「おう頼むぜ、いい加減気合と魔法で抑えるのも疲れてきてんだ」


気合って…思わず頭を抱えそうになったけど仕事に取り掛かる

それに多分アスカさんの魔法がメインで気合は関係ないでしょ…


それにしても普通の回復魔法と違って解呪の魔法は手間がかかって仕方ない

もう少しコンパクトに使えればいいんだけど…そこは要研究と実践しかない

手始めに魔法陣の構築から始めるとするか



「グオルさん…すいません私が未熟なばっかりに…」

「あん?おめぇさんのせいじゃねぇさ、これはドジった俺が悪りぃ。

それに呪いの解呪なんか誰でもできるもんじゃねぇ、

進行の遅延ができるだけでも大した腕だぜ。こいつがヒーラーとしてこと優秀なだけよ。

それはおめぇさんも知ってるだろ?」



何やらすごい持ち上げられているけど恥ずかしいからやめてほしい


どうやらグオルさんの呪いはそこまで強力なものでも無いようで解呪としては問題ない…

しかし少し違和感を覚える、なんだ?



「とりあえず魔法陣の構築が終わったので、グオルさん少しじっとしててください」

「すまねぇな」

「ではいきますよ。《ステリア・ガ・テスタ》!!」



手の平に構築した魔法陣を通じて魔力を送り込む

ステリアの呪文は広く使われる解呪魔法【ハリア】の上位魔法だ魔力や発動難度は相応に上がるが

その分数多くの呪い、特にモンスターが使うものに対して強く効果を発揮する

ハリアも便利だけどあちらは呪いにかかってすぐ使うことでの対抗魔法に適性がある

速度か強度か、使い分けかな



「おお、なんか楽になった気がするな。アスカもありがとよ、もう大丈夫みたいだぜ」

「レインさんありがとうございます!」

「どういたしまして。でも石化自体はまだ治ってないんですからね

魔法の石化と違って呪いの石化は魔法薬じゃないと治らないんですから」

「わぁってるよ…最近働きづめだったしここいらで休暇でも取るかぁ

お前らもゆっくり休みな」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



グオルさんの治療も終わり本来の目的を果たそうと階下に戻った僕たち

普段ならクエストを探して出発するけど、今回は遠征だからその計画を練るみたいだ



「とりあえず手近な護衛依頼かなんかでアリアクムあたりまで行かねぇか?」

「初っ端から海に出る気ですか?まずは手堅くクルーガーで稼いでからですよ」

「クルーガーなんかいつも行ってるじゃねぇかよ、貯金もあるしある程度遠くまで行っちまおうぜ」

「気持ちはわかるけどねレイ、ヴィアも初めて遠くに行くのは不安なんだよ」

「そういうわけではありません。あくまでも準備をしっかりとして…」

「はいはい、そう言うことね。とりあえずアリアクム決定な」



レイが強引に行き先を決定したことにヴィアはやや不満そうだった

それでもすぐため息とともに諦めがつくあたりレイとの付き合いが長いことがわかる



「出発は…お、丁度明後日に出発の護衛依頼があるな」

「じゃあそれにしようか」

「そうですね、明日準備の時間も取れますし、何より善は急げですからね」

「おっし決まりだな。じゃあこれ手続してきちゃうわ」

「「よろしく」」



かくして僕たちの旅は始まる、夏の長期休暇のちょっとした大冒険

僕たちはみんな、浮足立っていた。

もちろん、これが本当の大冒険になるなんてまだ知らなかった



夏季休暇に入る学生、様々なことをしたい若さに対する答えは旅行!

早速海辺の町へ行こうと護衛任務を受けた3人の依頼者とは…


次回:Page.2 癖の強い護衛対象

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