アメリカ転勤前【九條家vs片岡家、沖田家】③
静まり返った応接室、入れ替えて貰ったコーヒーを飲みながら総司が
「可愛い子だろ?姉も同様に小学生前だけど、平仮名の読み書きが終ったらしい。運動能力や音感も良く先生方がベタ褒めする程で、将来楽しみだよ………あの子が《さんた》と呼ばれ虐待された本人だ。」
両家が驚いたようでビックリした声で
『えっ、あの子が?』
「邸に来て1ヶ月程だが、素直な良い子だ。どうして、あんな小さな子を虐待したり放置したり出来るんですかね?教えて貰えます?」
俯いて何も言わない両家を見ながら脇に座ってる弁護士に
「麻生先生、書類をお願いします」
アタッシュケースから数枚の冊子になった書類を机に並べた。
その書類を見ながら両家が
『この書類は?』
「双子達は九條家で育てます。その関連書類ですよ。」
『はっ?こちらに返してくれるんじゃ』
「放置…見捨てたのに、ふざけた事仰る。」
『けど、親戚でも無い赤の他人に迷惑じゃ無いかと』
「優秀な子とわかったからですか?子に拒否されましたよね。」
『姉は…しっかりしてそうだし』
「姉の方が症状が酷かったんですよ、泣き叫ぶで済めば良いですけど。でもまぁ、どうしてもと言うなら返しますよ。2人合わせて600万払って下さればですけど。」
『600万って?子供とお金の交換ですか?非道な』
「非道とは貴方方に言われたく無いですね。あの子達にかかった費用ですよ。」
『それでも金額が高いかと』
「存在が証明出来ない子供の治療費、特別部屋2週間の使用、邸に来て1ヶ月の衣食住代、教師5人の費用、あと子供部屋の家具代、全て2人分ですけど。」
『……でも』
「九條家の子として育てるのに安物買うはず無いですよ、教師も一流の方ですし。」
『それでも』
「此方が勝手にしたから無料にしろとでも?其方が最初に言ったじゃないですか『赤の他人に迷惑かけたら悪い』とね。一括払いして下さい。赤の他人に分割払いなんてあり得ませんし。あぁ、経営難でしたね。片岡産業は特に。息子さんの散財凄いですね。再婚相手と沖縄に逃避行ですよね。」
『な、何で』
「九條家の情報網を舐めないで頂きたい。それに貴方方は何もわかってない」
『何をでしょうか?』
「犯罪者に子供は渡せません。九條家次期総裁の息子の実子として戸籍作りましたよ。役所や裁判所等、色々回って許可して貰ました。あの子達の将来の為に養子じゃ可哀想でしょ?」
『実子?』『犯罪者って?』
「幼児虐待、育児放棄、上の子2人は迎えに行ったのに双子を見捨て、自ら命を絶とうと精神的に追い込んだ件等、諸々有りますね。」
『そんなっ、』
「倒産したら従業員が路頭に迷うのも困りますよね。あの子達の為に警察には黙っておきます。そのかわり実子の件の書類と今後2度と九條家と双子達に係わらない誓約書にサインして貰います。」
両家は青い顔で汗を書きながら無言でサインし拇印した。
「この書類と虐待の証拠と診断書はあの子達が大学卒業、社会人になる迄は貸金庫で保管します。其方の為にも他言無用で……九條家を甘く見ないでくださいね。じゃ、気を付けてお帰り下さい。」
「あぁ、沖田さん待ってもらえます。少し伺いたい事あるんで」