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なんか書けるかもで始める小説1

作者: ナル

なんか書けるかもって思って書き始めてみる。

頭の中には漠然としたもやもやが霧のようにかかっている。

茫漠としたそれらの想いや記憶の断片は、いったいどこに向かっていて、どこに還っていくのか。それすら分からず、そんなことをただぼんやりと思うがままに指を走らせていると、なんだかとっても切なくなってくるのだった。そして導かれる結論は、、、


こんなことをしても無駄


分かってる、帰ってくることのない人を、待ち続けたとしても、たとえこんなものを書いたとしても、帰ってこないものは帰ってこない。待ち人は来ず。分かり切っている話だし、完全に頭の中で理解ができている。でも――


笑顔が浮かぶんだ。そんな時はどうしても君の笑顔が浮かぶんだ。日差しを受け、眩しいくらいに幸せそうに笑う、君の笑顔が、瞼を閉じれば、暗闇にポンっとそこだけ嘘みたいに笑顔で僕に笑いかけているんだ。僕は微笑ましく思う。そして、大好きだなあって話しかけようとして、そこで追憶の君はいなくなる。コンセントから電気の線を抜いたみたいにあっという間に、いなくなる。残された僕は、ただ真っ暗な中で、蹲っている。


そうやって僕は、世界を汚してしまった罰を受けている。






「出だしはいいんだよなあいつも……」

うんうん、と僕は相方の呟きに頷き返す。

「あ、詰まった、まただよ、ミスったろあれ」

うんうんと、と僕は相方のぼやきに付き合ってあげる。

「あーも何で飛ぶんだよあーも、やられちまったよ」

人ってさ、と僕はつい話し出してしまった。

「ん?何?」

相方は気難しそうな顔でこっちも向かず、画面を眺めながら聞く。


「人ってさ、こんな画面の中みたいに殴り合ったら、どうなるのかな」


「はあ?」


僕らは、


ネット上の格闘ゲーム


その対戦者同士のどちらが勝つか、賭けをしている。




空想同然の酷い現実の中で、現実みたいな空想世界での格闘戦にこの身を焦がしているのだ。


「ほらパンチ!ほらキック!」賭けに負けた相方の貧相な背中に、僕は軽ーく殴って跳び蹴りをした。


「やるなあロストフレイム!!」空想科学ヒーローみたいに相方は腕を交差させた。


空想世界で出たであろう炎の柱の列を僕は躱して、躱して、そして立ち止まった。


「ねえ、詰まんないよ」


相方はあ、と言葉に詰まり、立ち止まった。わりわりい、詰まんなかったよなあ、今日一日ずっとこんなのに付き合わせちゃって、ごめんよ、そう言った気がしたけど、小声だったから無視した。


「ごめんよ」

今度は割とはっきりした声で相方が謝っている。


僕は首を大きく横に振る。


え? って感じに、相方は止まる。


「そうじゃないよ、詰まんないんだよ、何もかも、この酷い出来の世界も、この酷い現実世界から見た空想世界も、何もかも」


「あの、それに対して俺は何をどう言えばいい訳?」


「詰まんないよ」


画面の中で、思い切りぶちのめされた対戦者のキャラクターが地面に激突して、大きな音を立てる。

くるっと相方は振り返り、画面を見て愕然とした表情になる。それを放置して僕はくるっと踵を返し、帰ろうとする。


「帰るよ」それだけ言ってあげる。


パタパタと歩いて、それから一度だけ振り返ろうと後ろを向いた。


なぜか相方は、そこで棒立ちになっていた。



「え? ダメじゃん。こいつが負けたら、、、え、いや……」


「どうしたの?」近寄ってにやにやと相方をなじろうと近づくと


すっと口に手を当てられた。


その手に両手をかけ、どかせる。


「どうしたんだって聞いてるんだけど」


「大借金だ、こいつは負けないはずのやつで、大金賭けてた」









「今の世の中って、お金がある人にも、お金がない人にも厳しい世の中だよなあ」

騒げるネットカフェ、スタジアム

看板を死んだ目で見上げながら相方が言う。

「何だそれ、じゃあ誰にとっていい世の中なんだよ」僕が聞くと、

くけけけと相方は笑う。

「お前みたいな、ちょっとだけお金を持ってる連中にだよ!」ポーンと背中を叩いてくる。

「お前だって、ほんの小一時間前までは、ちょっとだけお金を持ってる一員だっただろ!」背負い投げ一本。豪快に決まって、相方は地面に叩きつけられる。


「ほらもう、さっさと行こ」


相方は寝たまま


「行こうって、あれ? おい? 大丈夫?」


相方は寝たまま。


ちょこちょこ近寄って、相方の顔を上から覗き見る。


道路脇の草っぱらの雑草が目元の水滴を吸い上げてい重くなって

ポタっと

地面に垂れ下がる。

相方はポロポロ涙を流していた。


「やだよ、俺、やだよ、こんな生き方したくなかった、やだよ、助けてくれよ、なあ」


棒立ちの僕に相方は助けを求めている。


「無理だよ、俺に頼ろうっても無駄だよ」口から言葉が流れ出た。しっかり閉じておくべきだったと気付いたときに遅かった。


相方はパッと立ち上がり、うぉらあああっと意味不明の大声と共に、強烈なタックルを僕に浴びせて、そして、僕の前から消えた。フラフラと


僕もよく分からなくなって、フラフラと家に帰ることにした。


「ねえ、」


後ろから声をかけられた。


「女の子? うん?」僕は振り返るのもなんだか気怠くて、そのまま声を出した。


「あなたってさ、嘘の世界に生きてるよね」


「はい?」やれやれと大袈裟に両手を広げる。


「今、見てて思った」


「は? え?」


「友達、追っかけないのね」


「あいつは、ああなったら、ほおっておくしかない訳で……」


「こんな嘘みたいな世界の中で、生きてる振りをして、動いてる。奇妙な人ね、それも飛びっきり巧妙に立ち振る舞って、嘘を嘘と思わせないように、計算して生きてるのよね。変な男。すっごく興味深いとも言えるわ」


僕は殴ってやろうかと拳を作って、振り返った。


かわいかった。ちょっと高飛車な発言の割に、その子は、かわいかった。綺麗だとさえ言える。

タイプです。付き合って下さい。風が吹いてその子の長めの黒髪がサラサラ流れた。

やっぱりタイプです。付き合って下さい。


「君は……」


「何?」ゴミでも見るような目が気に入らなかった。画面の中で女性格闘家をぶちのめした男性格闘家の拳が頭の中で何度もループした。


「君は間違ってないと言えるの? この世界には絶対に静止した基準となる絶対空間なんてのはないんだよ? 自分の座標にないからって、おかしいって言うのは狭いよ、世界が小さいだけだ、君の世界が小さいだけだ。」


アインシュタインになったつもり? とでも返ってくるかなと思ってたら、違った。


プイっと顔を背けて、その子はサっと距離を空けて、去っていった。


やれやれなんて日だ。

僕は気を取り直そうと、襟を正して、深呼吸した。目を瞑って、大きく息を吸って……吐いて……




遠くから何かが聞こえた。


「人でなし!」



そんなさっきの子の声がした気がして、僕は頭がショートしてしまい、草っぱらまで戻って、地べたに飛び込んで、辺りの雑草を滅茶苦茶に抜き続けた。




続く? 

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