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第二話「今日は朝まで宴会だっつの!」②

「けどさぁ……ド・ムー先生。……そろそろ、俺達一軍アタックパーティーも、後続の育成とかも考えないといけないと思わないか? うちのメンツでも、腕利きのガンナーとかいるだろ……モノになりそうな奴が居たら、お試しで一軍にでも引き上げてやってもいいんじゃねぇの? つか、次の依頼は俺、お休みしたいんだ。たまにゃ後ろで采配振るってとか、リーダーってのは本来、そんなもんじゃねぇかな」


「それも、そうよねぇ……二軍以下の子達でってなると……。うん! リゼッタちゃんとか、どうかしら? うちのガンナー勢でも割と見込みある方よ」


「えええっ! 私ですか! 私みたいな支援機兵……重砲機兵のド・ムー先生とか、狙撃砲兵キャノンボーラーのラポリフさんに比べたら、雑魚ですよ! 雑魚っ!」


 迷彩服を着た青いおかっぱ頭の小柄の少女が飲んでたものを吹き出しながら、大慌てで立ち上がる。


 その片目は機械化されていて、虹彩が不自然だし、その右手は機械の手そのものだ。

 ……彼女達、機械化兵と呼ばれる星の世界からやってきた者達は、戦闘の際は、パワードスーツと呼ばれる動力装甲服と接続する関係上、多かれ少なかれ身体を機械化しているのがほとんどなのだ。


「そう? アタシ、貴女と組むとすっごい楽なのよ。今の三軍での戦いぶり見てると毎回しぶとく生き残ってるし、ここらでひとつ腕試しってのもどうかしら? アタシが推薦するんだから、誰にも文句なんて言わせないわよー」


「む、む、無理ですってばぁっ!」


「確かに支援機兵なんて、弾持ち兼、応急治療役……程度に思われてるけど、実は結構強いんじゃないかって言われてるな。あのセブンスターズの赤い翼の天使……アイツも、元を正せば支援機兵だって話だ」


 ガンナー組の副長……ラポリフが感慨深げにつぶやく。

 顔に向こう傷のある長髪のイケメン狙撃手……二軍のサブリーダーとして、その渋い仕事振りには定評がある。

 

「ああ、その話は俺も知ってる。アイツ、次から次へと多彩な武器を持ち出すし、少しくらい撃たれても、自力で回復して、蘇ってくるしで、手に負えなかったよ……。確かに、あのアイテムカードの所持数キャパの多さとか、回復スキルとか、ありゃ、支援機兵特有のもんだよな……」


 まぁ、実際アレと出くわした時は、そんな調子だった。

 もっとも、意外と挑発に乗ってきたり、何かと詰めが甘いとか……敵ながら、ずいぶん甘ちゃんなところがあったんだけどな。

 

「実際、リゼッタとか、瀕死になってもいつの間にか自力で回復して、危ない奴をかばいながら、どんどん治癒してくれる。俺達ガンナーの泣き所、弾切れの心配がほとんどなくなるってのも、本当に助かるんだ……。支援機兵がいると、それだけで俺達ガンナーの継戦能力が格段に向上するのは事実だ。何より、単独行動や偵察も安心して任せられるし、パーティメンバーにお前がいると頼もしい。いっそ、二軍に来るか?」


「そ、そんな事ないですよ……私なんて、いつも足手まといで……それに、他の人を差し置いてとか……」


「謙遜するな。お前の実力は俺達、ガンナー勢は誰もが高く評価してる……お前が一軍入りするって話なら、俺も全面的に支持する。なにせ、支援機兵自体が希少で成り手も少ないからな……。俺達としては、リザ先生やお前みたいな支援役こそ、戦いの要というべき存在で、むしろ上に行くべきだって考えてるぜ。下の方でくすぶってる奴らも、いっそ支援職に転職クラスチェンジってのも良いかもしれんぞ」

 

 ラポリフの言葉にうちの下位メンバー三軍、四軍と、五軍のお子様パーティの連中がザワ付き出す。

 三軍や四軍の連中はともかく、五軍のお子様達は、実際子供だから、直接的な戦闘力は俺達大人には敵わない。


 だからこそ、主な任務も事前偵察とか、素材集めや制圧済みのダンジョンのアイテムカード回収と言った支援任務が中心。

 冒険者達の間でも、彼ら身体の小さい子供達は戦力外と見られていて、軽く扱われがちだった。

 

 もっとも、俺はそういった支援任務にあてがうような連中を軽くなんて見ていない。

 そう言った一見地味な仕事こそ、俺達最前線パーティーを支える重要な仕事なんだから。

 

 情報、物資、輸送……どれも地味だけど、これらを軽視して待っているのは、全滅と言う残念な結果あるのみ。

 

 リゼッタは年少組でも出世頭とも言える……こいつらお子様共に、支援職をやらせて、上位パーティに入れれば柔軟性も高くなるから確かに悪くない。

 

 ここらで、各パーティメンバーの編成の見直しや、各員の適性を考慮した転職なんかも視野に入れるべきだろう。

 

 実際、今の一軍……アタックパーティは回復支援がリザ先生頼みってのが、弱点になってるからなぁ……。

 

 グレイブも本来は、アタッカーなんだが……温厚かつ無口と言う本人の気性もあって、後衛のガード役……タンクみたいになってしまっている。

 

 まぁ、重装戦士も攻防のバランスが取れた優秀なクラスではあるから、クラスチェンジまでは要らないと思うがね。

 もうちょと積極的に前に出て欲しいんだが……そこら辺は俺が上手く指示を出すべきなんだよな。

 

 けど、一軍にリゼッタを加えて、俺が退いて、トウシロウとグレイブをアタッカーに徹しさせる。

 それはそれで悪くない。

 

 ……それか、トウシロウを、二軍か三軍のリーダーに任じて、リーダー経験でも積んでもらうってのも良い。


 三軍は、戦力的には微妙でモンスター掃討や露払いだと荷が勝ちすぎることも多い。

 リゼッタが頑張ってるみたいで、パーティー自体の生存率は悪くないけれど、リゼッタが抜けるとなると、戦力的にはガタ落ちだろう。

 

 だからこそ、強いメンバーを入れて、戦力を向上させれば、二軍の負担も減る……。

 

 まぁ、俺が今前線を退いたら、士気がガタ落ちしそうだし、後者の案でトウシロウに話持ちかけてみるかな。


 あいつも強いんだけど、もうちょっと色々考えて欲しいからなぁ。

 二軍、三軍ともなると、俺達一軍の露払いや支援パーティの護衛とか、戦闘の機会も多いからな。


 むしろ、俺達一軍は最後の最後……対ボス戦で出番が回ってくるのがほとんど。

 

 それにしてもセブンスターズ……「赤い翼の天使」……か。

 俺もアレと間近で相対したことがあるけど、まぁ、ちょっとしたバケモノだった。

 

 つい先日……帝都常駐の4つのA級クラン合同、総勢100人以上の、もはや軍勢規模の人数を集めた上で、「ゾディアック」と呼ばれる大型機動兵器の降下侵攻に対し迎撃ミッションを行った事がある。

 

 その戦いはいつになく奇妙な戦いで、当初は魚座のパイシーズ……魚型の巨大空中戦艦みたいな奴を相手にしていたんだが。

 さすがに、セブンスターズと呼ばれる侵略者達の頂点。

 ……俺達、合同クラン連合軍は当初は善戦していたものの、大口径粒子砲の直撃で、半数以上が吹き飛ばされ、連合軍は瓦解……完全に追い詰められる事になった。

 

 けれど、そんな中……突如、パイシーズが同じゾディアックのひとつ、牡羊座のエアリーズによって撃墜され撤退。

 

 パイシーズの代わりに……俺達は、その撃墜した張本人と相対することになった。

 

「赤い翼の天使」


 ……ヤツはそんな二つ名を持つ。


 ヤツは何を思ったか、わざわざエアリーズから降りてきて……赤い羽根のようなものを広げると、疾風のように、パイシーズとの戦いを生き延びていた俺達に襲いかかると、軽く全滅させてしまった。

 

 厳密には、全員残機と加護を失って、本当の死を覚悟し、震え上がってる中……興味が失せたように、勝手に引き上げてしまったのだけど……。

 

 あれは、なんとも違和感のある戦いだった。

 

 と言うか、「赤い翼の天使」

 

 ……俺の記憶だと、もっとおしゃべりで人間的だったはずなんだけどな。

 まるで、別人のような機械のような冷徹な戦いぶり。

 

 けど、一言だけ……発せられた言葉を覚えている。


「久しぶり……元気?」


 その一言とぎこちない笑顔。

 それだけだったけど……それをきっかけに俺は色々思い出したんだ。

 

 名前も……そう……「アマカゼ・ハルカ」だっけかな? まだ十代の子供。


 一緒に腕を組んで写真なんか撮って……恋人同士みたいに手を握られて、街を歩いた記憶。

 つか、俺……子供は好きだけど、ロリコンとかちげぇしっ!

 

 ……と言うか、この記憶はなんなんだろう?

 いつ、何処の記憶なんだろう?

 

 最近、どうも……過去の記憶に違和感を感じることが多い。

 

 光となって消えていくモンスターの最後。

 軽々しく死んで生き返る俺達、冒険者。

 

 人間の死ってのは、そんな軽々しいものじゃないはずなんだが……。

 

 そして、パイシーズに追い詰められてた俺達を助けてくれたと思ったら、軽く蹴散らして……。

 けど、まるで出来レースのように、結果的に誰一人として死なせずに戦いを終わらせた「赤い翼の天使」。

 

 俺達は「流星」達と戦争をやってるんじゃないのか?

 なんで、あいつら同士討ちみたいな事をやってたんだ……敵同士のいがみ合い?


 何故? 何故? どうして……?

 

 何より、俺たちは何と何のために戦ってるのだろう?


 俺は……なにをやってるんだろう?

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