第七話「オッサム、正気帰る」①
それは唐突も唐突。
いつもどおり、寝床で惰眠を貪っていると前触れもなく、壁と天井が吹っ飛んだ……らしかった。
らしいと言うのは、何が起きたか理解できなかったから。
訳も解らず、瓦礫に埋まりながらも、かろうじて顔だけを出したところで、頭上から天井のコンクリの塊が降ってきて、ゴシャアッ! なんて音と共に俺は光の粒子になった。
回避も防御もなにもない……まさに、はめ殺し。
デッドオアデッドとはまさにこれ。
けれど……建物のがれきの山の上で、リスポーン。
そう俺は復活した……と言うか、寝てたらいきなり死んだ。
まさに寝耳に水ならぬ、瓦礫! ……交通事故死よりひでぇよ。
「訳も解らず、残機が一機減った……何事だよっ!」
とりあえず、装備チェンジ……俺の戦装束を呼び出す。
……って、洗濯して干しっぱだったからカード化してないし!
たぶん間違いなく、瓦礫の下。
くっ……ネームドアイテムにまで進化していたのにっ!
装備は……寝巻代わりの黒ジャージ、OnlyOne! With 腹巻きっ!
あ、「Die 木殺」発見!
瓦礫の隙間から柄の部分が顔出してる……瓦礫をどかすと愛用のまさかりがその姿を見せる。
ジャキーンッ! すかさず装備っ!
……「Die 木殺」を握りしめると、不思議と落ち着きを取り戻す。
そして、シーツを引き裂いて、頭にギュッと巻き付ける……「士魂2」とでも名付けよう!
ついでに、余った布でタスキを作って、Xの字にして巻きつける。
うん! 気合入ってきたぁアアアアッ!
これでもはやウッドバスターとしては、完璧だろう。
「……くっ、どうやらウッド共……本格的に人類抹殺に動き出したな……おのれっ!」
まぁ、思い当たる可能性はただ一つだった。
ウッド共の逆襲……そうに違いない。
奴ら、とうとう殺られる前に殺る……そんなシンプルな結論に達したらしい。
実際、奴らは俺の命と言える残機を一機、文字通りすり潰しやがった!
くそっ! 俺の敵……絶対とってやるからなっ!
すっかり風通しが良くなった俺の宿舎。
ここは一階だったのだが、どうもデカい岩が飛んできて二階に当たったらしい。
壁の向こうでなんだか、やたらデカい見慣れない岩が転がってる。
その余波で、二階が崩落して、俺も巻き込まれたって訳だ。
直撃しなかっただけ、マシかもしれないが、軽く一回即死しているから、全然マシじゃない。
……寝込みを襲うとは卑怯千万!
けれど、闇雲に動き回っても仕方がない。
怒りに駆られて、突撃なんて論外だ……落ち着け、落ち着いて、行動するのだ!
素数だ……こう言うときは、素数を数えるのだ!
「1、3、5,7、9……」
いきなり、ダウト! 9は素数じゃありませんからーっ!
「って、い、いかん! ひよこちゃん達がっ!」
ここで一番か弱い存在達のことを忘れていた。
慌てて、ひよこちゃんルームの存在する建物を見ると、なんだか燃え上がってた。
くっ! やけにチキンの焼けるイイ匂いがすると思ったら!
「まってろよ! ひよこちゃん達!」
……ひよこちゃんルームの前へ駆けつける。
バタムさんやロジャーの旦那の事は二の次である……。
あのバグり気味の人達には、別に愛着なんて無い。
常に暖房が入ってるひよこちゃんルーム。
どうやら、暖房の燃料に引火したらしく盛大に燃え盛っていた。
周辺には逃げようとして、力尽きたと思わしきひよこちゃん達が、丸焼き状態で大量に転がっていると言う無残な光景が展開されていた。
「ノォオオオオオオッ!」
絶叫とともに、ひよこちゃんの亡骸を抱きしめつつ、滝の涙を流す俺!
モノの見事にロースト状態……ひでぇ! 酷すぎるっ!
だが、炎の向こう側からは、まだまだ大量のひよこちゃん達の鳴き声が……。
た、助けを求めているのか! ならば、男、オッサム……ここは行かねばならぬ。
「たとえ、炎の中とても……当たって砕けろぉおおおおいっ!」
クラウチングスタートの姿勢で溜めを作って、全力疾走で炎の中へ突撃しようとする俺!
だが、不意に足に硬いものがぶつかり、もんどりうってすっころぶ!
「ソィイイイイイイッ?!」
ズシャーとシャーベット状態になりつつあった雪の上を盛大に滑る。
目の前には炎の壁……パチパチと髪の毛が焦げる匂いがして、慌てて立ち上がると泥まみれになりながら、その場から後退する。
地面を見ると、ヒノキの枯れ枝が地面に深々と突き刺さっていた!
だが、走り出した時はそこにそんなものは無かった……。
「くそっ! 誰だ! どこからっ!」
考え得るとすれば、それは何者かが意図的に俺を妨害した……そう言う事だ。
……まさか、ウッド共……自由に動ける人間型……ウッドマン的な兵隊を作り出したのだろうか?
実際、木の上に人影がいる。
姿を隠してるつもりなんだろうが、俺には見え見えなのだっ!
「唸れっ! Die木殺! 固有スキル発動っ! Dieスラーッシュッ!」
Die木殺を振りかざすと、斬撃がオーラとなって飛んでいく。
ネームド装備の特殊スキル、要するに必殺技のようなもんだ。
まぁ、あまりスピードは早くはないから、対人用だと、回避余裕で使い物になりそうもないんだけど……。
……ウッドは動けねぇからな。
Die木殺は、ウッド特攻武器……ヒノキやスギ程度なら、余裕オーバーキル!
まさに、座して死を待つだけ!
……俺の狙いは始めから、ソイツが足場にしているヒノキの樹なのだ!
斬撃が大木をあっけなく切り倒す!
斬撃は止まらず、更にどんどんウッド共を薙ぎ払っていく! 殺れっ! どこまでもっ!
「ふははははっ! このウッドの手先が! 本体はすでに殺ったぞ! ついでだ、貴様も死ねっ!」
一気に倒れゆくヒノキめがけて、ダーッシュ!
木の上に居たやつは悲鳴を上げながら、一緒に倒れていく……。
「ちょっ! なにそれっ! って、っきゃあああああっ!」
……なんだ? 若い女の声?
こんな人里離れたところにどう言うことだ?
だが、俺が知る限り、ここには一般人なんか居やしない。
陰気臭くて、無愛想な所長とバグったおっさんと、おばちゃん。
それ以外の奴なんて、見たこともない。
解った……人間に擬態したウッドメン、ならぬウッドウーメンで、こちらの戦意を削ぐつもりなのだろう。
小賢しい! まさに、小賢しい!
しかしながら、我が鋼の心意気は、そんな擬態なんぞでは騙されない!
「くらえ! 必殺、薪割りダイナミィイイイックー! 一刀両断! 死ぬがよいっ!」
……この技の効果は、実にシンプルだ。
ウッドである限り、真っ二つになって死ぬ。
以上。
けれど、相手はまさかの真剣白刃取り……ならぬ、まさかり白刃取りで両手でがっつりと防いでやがる!
こいつ……出来るっ!
「ちょっと、タンマッ! アンタ、何いきなり殺しにかかってるのよ!」
……うん? 思った通り、若い女……子供の姿を象ったウッドウーメンらしかった。
「黙れ! このウッドウーメン! 子供の姿をしていれば、俺がひるむと思ったのか? まぁいい……そこでじっとしてろ。すぐに済む……このDie木殺……切ったウッドの数知れず。貴様も木クズになるといい」
「ならないよっ! って言うか、ウッドウーメンって私のこと?」
「貴様以外の誰がいる! いいか? ここは流刑地のようなもんでな……貴様のような小娘が簡単に来れるような場所ではない! である以上、貴様はウッドの手先に相違ない……よって死ねっ!」
こんなところまで、簡単に来れる時点でどう考えても人外だ。
流星の奴らの可能性も考えられるのだが、どっちみち流星は人類の敵。
見敵必殺……これ以外の何がある?
「たしかにそうなんだけどさ……。こんな事やってる場合じゃないでしょっ! オッサム、話聞いてよっ!」
……なんなんだ、こいつ。
俺の名を知ってるだと? だが、俺はこんな奴は知らん。
知ってるような気もするのだけど、思い出そうとすると、唐突に激しい頭痛に襲われるのだった!




