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第二話「今日は朝まで宴会だっつの!」①

 冒険者ギルドへ赴き、討伐の証にもなるワイバーンの素材カードを提示すると、報酬として20000ゴールドもの大金を手渡される。


 ダンジョンについても、あの後ド・ムーの旦那がきっちりその中枢……コアを破壊してきたそうで、今頃は崩れて跡形も無くなってるだろう。

 

 その分の追加報酬金も10000ゴールド……ワイバーンがドロップした分も合わせると、全部で40000ゴールド!


 うちのクランは総勢30人もの大所帯なんだが、これなら一人頭500ゴールドくらいの臨時報酬くらいは分配できそうだった。

 

 ちなみに、10ゴールドあれば、そこそこいい宿屋でうまい飯と酒付きで、一泊できる。

 一万円相当だと、昔誰かと言ってたような気もするんだけど、円って何処の国の単位だっけ?

 

「オッサムの兄貴! お疲れ! いやぁ……最後まで戦えなくなくて、悪かった。ホント、すまねぇっ!」


 金髪ツンツン頭の若造……トウシロウが拝むような仕草と共に、俺の席にやってきた。


「おぅ、トウシロウ……お前も頑張ったよ。無事、生き延びてくれててよかったよ。ケイブワイバーンのテイルハンマーなんぞ、カウンターでもらった挙げ句に壁にめり込んだ時は、さすがにこいつ死んだって思ったんだがな。ちゃっかり生きてたときは流石に笑ったぜ! 俺の流した涙を返せ! この野郎!」


 トウシロウにヘッドロックをカマして、思いっきり揺さぶる!


「うぉっ! 兄貴……かんべんしてくれよっ! ギブギブっ!」


 トウシロウが俺の腕をタップして、ギブアップ宣言。


「ったく、これくらいで勘弁してやるぜ! つか、お前……足の関節が三つくらいになってたが、大丈夫だったのか?」


「へへへ……あんときゃ、流石に参った! 実は、HPもあと100切っててさ。HPじりじり減ってくし、追い打ちやられたら、確実に死んでたな。おまけに、あの時点で残機もゼロ! 手足バキボキで身体も動かねぇし……流れ弾飛んできませんようにって、祈ってたんだぜ」


「おいおい、残機なしで死んだら、リスポーンも出来ずにそのまま消えちまって終わりって話なんだぜ。命あっての物種だ……残機無くなったら、加護もねぇから、戦闘力も激下がりなんだから、緊急脱出で地上へ逃げちまっても恥じゃねぇんだ。そう言う時は迷わず逃げろっての! グレイブ……お前もだ! 気絶しながらも盾になるって、お前はどこの弁慶様よ!」


 隣で、無言でジョッキを傾けるモアイ像のような顔の大男の肩を乱暴に叩く。

 弁慶様は……うん、確かそんな英雄がいたんだよ。


 橋の上で無双して、矢でハリネズミみたいになって立ったまま死んだって……立往生って言葉の語源……だったかな? 


「……そうだな。気をつけよう……」


 相変わらずの無表情……でも、反省はしてる様子。

 こいつの表情は読みづらいけど、付き合いも長いから、何となく解る。


 でも、膝を屈することなくとか……まったく、こいつも大概、男前だよな。


「でも、兄貴に言われたくはねぇよな……。まさか、あの局面で命知らずの特攻カマすなんて……痺れたねっ! さすが、勇者と名高き、黒き鋼の騎士オッサム!」


「バァカ……おだてんなっての、俺はぜってぇ死なねぇって確信があったからな……。俺は冷徹な判断の末の決断、お前のはただの命知らずの無謀ってんだ! と言うか、俺もいい加減年なんだぜ? お前も実力だけなら、俺に次ぐナンバーツーなんだから、もっと広い視点での立ち回りとか、慎重さってのも覚えてくれよ。俺もいつまでもこんな一軍アタックパーティーで最前線……とかしんどいったらありゃしねぇ。少しはおっさんを楽させてやりたいとか思わねーの?」


 言いながら、眼鏡をクイッと流す。

 まぁ、伊達なんだがな……むしろ、視力は抜群。

 

 普段はちょっと知的な雰囲気を出すために、この黒縁メガネをかけてるのさ。


 シャレオツって奴? ……まぁ、メガネかけてる方が、落ち着くってのもあるんだがね。


「あらん、オッサムちゃんが最前線から退いちゃったら、アタシも引退考えちゃうわ……」


 ……重砲機兵ド・ムー先生。


 身体を機械化し銃砲火器を自在に使いこなす元「流星」の兵士。

 

 要は……星の世界からの侵略者だったのだけど。

 ド・ムー先生を代表とする一部の兵士達は、そんな侵略戦争の片棒を担ぐのを潔しとせずに、自分達の同胞との戦いを選ぶことにしたのだと言う。


 そんな彼らの心意気に感銘を受けた女神アイリスは、彼らにも加護を与え……俺達同様の冒険者と呼ばれる存在となったのだ。

 

 まぁ、俺達から見るとちょっと変わった武器を使う頼もしい仲間以外の何者でもない。

 

 なお、ド・ムー先生……言葉使いは女性風なのだけど、その風貌はイカツいの一言。


 髪型はモヒカン、筋骨隆々のマッスルボディ。

 半分機械化したその両腕は、武器なんかなくたって、ゴブリン程度なら片手で粉砕する。

 

 夕方頃になると、髭が伸びてくるらしく、青ひげ面になる……とても、とても暑苦しいお仁だ。

 

 もっとも、本人曰く、見た目はごつい筋肉だけど、その心は純真ピュアな女の子……なんだとか。

 女の子で、ムキムキって……何処がどう純真って思うのだけど、筋肉をこよなく愛しているから、今の姿はまさに理想なんだとか。

 

 強面の風貌に反して、面倒見もよくクランでもトップクラスの実力者。

 老若男女別け隔てなく接するその人柄の良さで、皆から慕われている。


 博愛主義者という意味では、あのリザ先生の同類とも言える。

 まぁ、尊敬に値するのは間違いないので、俺は二人に心からの敬意を込めて、先生と呼んでいる。


 たまに、「オッサムちゃん愛してるわっ!」とか言われるけど、酒の席のジョークのひとつも小粋に流せないようじゃクランマスターなんて務まらない。

 

 もっとも、リザ先生やアレキサンドラ嬢あたりは、そんな俺達のやり取りを生温かい目で見守るのが常だ。


 嬉しそうに、二人で色々、どっちがタチでどっちがウケとか言い合ってたりもするのだけど……。

 ハンサムな俺は、聞かなかったことにしている。

 

 つか、タチとかウケってなんだ? きっと知ってはいけない世界なんだと思う。

 

 だから、聞かない俺はきっと賢い。

 ハンサムな俺は(以下略)

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