第五話「この狂った監獄へようこそ!」④
「むむっ……なんか、HPがいつの間にか減ってるな」
ダメージを受けた覚えなど無いのだけど、ステータス上ではHPが減っている状態だった。
ウッドの遠隔攻撃でも食らったか?
いや……そう言えば、ちょっとエキサイトしすぎて、派手に木っ端を散らしたり、ドロップキックで自爆したりだの……色々ダメージを受けるような思いあたりはいくつかある。
まったく、小癪な奴らだ……なかなか、どうして侮れんな。
数だけの可燃ごみの分際で……死に際位、大人しくできんのだろうか?
とは言え、これは戦いだからな……リゾートではないのだ。
命の危険だって、ゼロじゃない。
こないだなんて……こっちに向かって倒れてくると言う最期の反撃を仕掛けてきて、右腕を持っていかれたからな。
ここには、リザ先生のような腕利きの治癒術士なんて居ない……。
片腕では、ウッド共との殺し合いで不利になる……敢えて、一回死んでリフレッシュ……そんな風にも考えたのだが。
驚きなことに、一晩寝たら元通りになってた……さすが、俺! と言うか、この建物自体にリジェネレーションフィールドがかかっているらしい。
さすが、人類をウッド共から守る希望の砦と言ったところか。
さしずめ俺は、人知れず人々を守る知られざる防人。
まったく、そう言う事なら半年と言わず、一年、二年だって居てやってもいいくらいだ。
と言うか、ここで食い止めなければ……人類は滅亡するっ!
帝都に戻ったら、クランの仲間たちにも協力してもらって、この地まで改めて遠征すると言うのも、考えておいてもいいかも知れない。
その程度には、ここのウッド共は危険だ。
であるからこそ、排除する!
排除、排除、排除!
排除、排除、排除、排除、排除っ!
排除、排除、排除、排除、排除、排除、排除、排除、排除……。
うむ、なんだか思考がゲシュタルト崩壊気味だ。
とにかく、徹底排除の一心で、マッスィーンの如く、ウッドを狩るのに専念する!
「うぉっとぉっ!」
……ちょっとハッスルしすぎたらしい。
「Die 木殺」が滑って、手からスっぽ抜けてしまった。
危ない危ない……人が居たら、危なかった。
うん? どうも、さっきから身体のキレが悪いと思っていたけど。
少し疲れてきているようだった。
時間は……と、太陽をみると、もうすぐ頂点に達するところだった。
どうやら、ウッド共を殺すのに、少し夢中になりすぎたようだ。
ロジャーさんも夢中になりすぎて、切り株に引っかかったりするからな。
俺もあんまり、木を殺すことばかり考えているとああなるかもしれない。
戦場では、適度なオンオフが必要なのだ。
殺木マスィーンモードで、ずっといると、人間性と言うものを確実に失っていく。
ひとまず、弁当でも食って休憩にするか……腹も減ったしな!
……俺は、時間に正確なのだ。
ちょっとでもスケジュールが狂うとイラッとする。
何より、ここの生活は、誰もああしろ、こうしろとか何も言わないのだ。
黙って、無為に日々を過ごしていると、自堕落な日々に陥ってしまいかねない。
である以上、自分で自分を律する……そうでなくてはいけない。
あたりを見渡すと、それなりに広い空き地が出来上がっていた。
当たり一面、真っ白な雪原。
切株がいくつか残っているけど、それからも再生することがあるから、時間に余裕がある時は、それすらも根こそぎぶち壊す。
おかげで、この領域については確実にウッド共から奪還しつつあるのだった。
奴らの増殖スピードと俺が狩る速度の比較で、俺の狩るペースが上回っている証拠でもある。
なにせ、俺の場合、雪の下の新芽の段階ですでに潰しているからな。
くくっ……ウッド共を殺りまくってるうちに、雪の下の新芽の存在を察知できるようになったのだよ。
「樹木感知」ってスキルがそれだ。
生きてる木があると、そこが光って見えると言うまさに木を殺す狩人……ウッドバスターにとっては、必需スキルと言えよう。
奴らは、ある程度、大きくなると成長スピードが爆発的に加速するから、その前に潰す……それでなければ、奴らの侵食スピードには追いつかない。
しかし、この北の大地から、奴らを駆逐するのは困難を極めるだろう……この戦いの勝利の道は果てどもなく遠い。
見張り台に登って、この周辺を見て俺は恐ろしい現実を知ってしまったのだから。
見渡す限り一面雪とウッド、ウッド、ウッド! 地平線の彼方までウッド、ウッド、ウッド!
その数は膨大すぎて、もはや数え切れない程……そうとしか表現しようがなかった。
そう、もはやこの世界はウッドにその大地を覆い尽くされつつあるのだった。
ウッドヤベェ! ウッド、滅ぼすべきっ!
まったく、炎の魔剣でもあれば片っ端から焼き払うのだが……。
それか、塩でもばら撒けば……アレは効くぞー。
だが、ここでは塩は貴重品だと聞いている……無駄遣いは出来ない。
残念でならない。
とりあえず、冷えたおにぎりを食いながら、水筒のほうじ茶を飲む。
うめぇ……このひと時がたまらない。
野営の経験は、いくらでもあるけれど。
ソロキャンプってのも悪くない。
まぁ、ここでそんなテントと寝袋で……なんてやったら、朝には氷漬けになってると思うがな。
そして、一服……タバコに火を点けると深々と吸い込み、盛大に煙を燻らせる。
ああ、たまんねぇ……。
ナイスな事に、ここでもタバコくらいなら手に入るのだよ。
欲しいものがあれば、食堂の「欲しいものお願いポスト」に入れておくと、夜の間に枕元まで届けてくれるのだ。
なかなか、便利である。
この水筒も魔力を込めれば保温が出来る素敵マズィックアイテム。
「外で暖かいほうじ茶が飲みたい」って書いてポストに入れたら、ほうじ茶のティーバック共々届いた。
さらに「火の魔石」と呼ばれる魔力を込めれば、温かい空気のフィールドを形成する石を懐に入れている。
これもやっぱり「欲しいものポスト」にお願いしたら、届けてもらえた。
どこから誰が届けてくれるのかは、解らないけど。
俺が寝静まってないと、届かないみたいなので、要するに、サンタクロースみたいなものなのだろう。
おかげで、こんな雪原でもほとんど寒さを感じないでいる。
ありがとう、ありがとう。
ジャギルの話だと、真面目にやってる俺への女神様の贈り物……なんだとか。
アイリス様、ちゃんと見てるかー? 俺はこんなにも真面目に戦ってるんだぜ?
まったく、反逆罪とか言って……俺が正義の心の持ち主だと見抜いて、こんな辺境の人知れぬ最前線へと誘うとか……心憎い演出だな。
ちなみに、こないだは頼んでないのに、紅白まんじゅうが届いてた。
……美味かった。
つぶあんってところもまた気がきいてて最高だった。
なお、MPが減ってるのは魔石を使ってるせい。
俺は別に魔法とか使わないんだが、魔石のようなマジックアイテムはMPを消費して使うものも多いんだ。
ダンジョンなんかでもそうなんだが、MPが無くなったら、それが潮時だ。
……MPが切れると、各種バフもハゲるし、火の魔石の恩恵が失われると、寒さで凍える羽目になる。
だが、MPもまだ半分残っている……まだまだ殺れるって事だ。
「……腕が鳴るぜ! みなぎってきたァアアアアアっ!」
飯を食ったら、ウッド狩りを再開だ! ノルマは10本とか言ってたけど、最近は20本近く狩れる事もある。
若木や芽を含めたら、一日50本近くは狩っているはずだ……だが、奴らは一向に衰えない。
せめて、もっといい装備が欲しい……。
だが、ウッドバスターは装備制限が厳しい……武器は、まさかりオンリー!
炎魔人の剣があればなぁって思うんだけど……。
アイテム取り寄せとか出来ないもんかな?
……出来れば、デイリーで100は狩りたいんだ。
デカウッドは硬いから、狩るのにも、やはりそれなりの時間がかかってしまう……。
俺もまだまだ攻撃力が足りない……。
ウッドを一撃で刈り取る力っ! 俺に力をぉおおおおっ!
オッサム、順調に故障中。




