表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/32

幕間「彼女の記録」1-1

 2069年11月12日 AM2:03

 特別指定重要参考人、天風遥あまかぜはるかによる口頭記述ログより抜粋。

 

 去る2069年10月31日、ソルバイオテック社VRMMO「シューティング・スター・オンライン」管理運営A.Iが異常動作の末、制御不能状態に陥った。

 それにより、1000人ものプレイヤーの精神体が、VR空間に監禁状態となると言う恐るべき事案が発生した。


 世界でも類を見ない本事案は、AIテロとでも言うべき事態で、現時点でも解決の見込みが立たず、極めて困難な状況にあり、対応に苦慮している。


 本文書は、本件の当事者のひとり、天風遥の視点によるこの事件のこれまでの状況認識及び、彼女の持つ独自情報を聴取した際の分体端末とのやりとりを記録文書化したものである。

 

 閲覧資格者は、政府指定Sランク機密情報取扱資格者、及びTier01以上のエクストラA.Iのみに限定されている。

 

 なお、本記録の主たる記録者は、日本国国家嚮導超A.I「天照アマテラス

 及び、その下位端末α1680号端末、パーソナルネーム「イロハ」であるが、本文書における一人称「私」は、発言者である天風遥を指す。


 なおイロハの発言については、文字コミュニケーション出力によるものとなっており、当然ながら、本口述記録には記録されていない。


 以上、冒頭注意事項を終える。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ――ん? もうこれ記録始まっちゃってるの?

 

 何から話せばいいの? まず……私の名前とどんな立場なのかって?

 

 えっと……まず、名前……天風遥……高校二年生、年は17歳。

 若いでしょ? じょしこーせーだよっ!


 ……もっとも、通信高校だから、学校には通ってないけど。

 

 なんでって……そこら辺は追求しないでよ……。

 

 あんな、ガキ丸出しの馬鹿共と机並べて、一緒にお勉強なんて、馬鹿らしくてやってられない。

 どうでもいいじゃん……そんなこと。

 

 私の立場ってのを説明するとして、そうなると必然的に……日本有数のVR研究機関……ソル・バイオテック社についてかな。


 ソル・バイオテック社についての詳細は、どうせアンタらもよく知ってるだろうし、webの公開情報参照ね……え? 駄目? 詳しく、第三者にも解るように……?


 あと、口頭記述記録化するから、別に声だけモニターしてる人がいるって、想定して、その辺も意識するようにして欲しいって……注文多いなぁ……。

 

 要は、こんな感じでアンタのセリフとかも読み上げればいいんでしょ?

 まぁ、レポート化するとかに比べたら全然楽だしねー。

   

 えーと、ソル・バイオテック社のせつめー。

 一般的にはVRゲームの運営、開発とかで有名だけど、先進VR技術研究なんかもやってて、むしろそっちが本業。

 社歴とか製品情報とか、細かいことはそれこそ、Webでも見ろって感じよね。

 

 私は、ソル・バイオテック社の契約社員として、正式に雇用されていた……要するにアルバイト社員のひとり。

 

 まぁ、お兄ちゃんが役員だから、完全にコネ採用なんだけどねっ! ずっこい? いいじゃん別に……。

 あ? お兄ちゃんの名前? 天風敬浩あまかぜゆきひろ……敬浩お兄ちゃん。

 人工知能開発研究の第一人者で博士号も持ってるような天才エリート科学者!!

 

 知ってるって? 知ってんなら、聞くなっつーの。


 それと、一応、私……社員扱いだから、守秘義務とか社内機密保護に引っかかるような事言っちゃったら、オフレコでって事でいい?

 

 オフレコって何って? 編集カットのこと!

 つか、こんな会話まで記録してるじゃないの……馬鹿じゃないの?

 

 え? あとで適当に編集するって……なんか雑よね、イロハって。


 けどさ、人んちのパソコン、いきなりハッキングして、乗っ取るとかやってくれちゃってさ。

 

 なになに……元々そのPC自体がクラウド端末のひとつだから、システムもデータ領域もハード自体には実装されてなくって、要するに天照の一部のようなものだったって……?

 

 まぁ、知ってるけどさ。

 自分はそのクラウド領域に、私と対話すべく追加機能として実装された存在であり、言わばナビPCが高度人工知性体として、アップグレードした存在と言うべきであり、ハッキングの定義には当てはまらないって?

 

 要は、今までずっとナビPCとして、一緒に生活してて、やっと独自の意思を持てたって……マジなの……それ。

 でも実際、私愛用のPC端末が乗っ取られちゃったのは事実じゃないの……まったく。

 

 ……この画面の中をウロウロしてるちっこい妖精さんみたいなのが、アンタのパーソナルアバター?


 割とかわいいけど、キャラデザだれ? あ、天照さん監修、デザインなんだ……なんか、天照さんのデザインセンスってファンシーよね。

 

 電車とか無人車なんかも丸っこいファンシーな感じだし……色使いなんかもむしろ、可愛い感じだし。

 最新鋭無人艦上戦闘機「風雅フウガ」だっけ? 何あれ? 妙に丸っこくてバルーンアートみたいって評判だけど、めっちゃキモイ飛び方してたよね。

 

 え? ナノスキン装甲で被弾傾斜や空気抵抗を考慮するとああなるって……そんなもんなの?

 軍事オタクがなんか違うーっ! って騒いでたけど……。

 

 つか、PC、勝手に操作するのはいいけど、無線ハードドライブの秘密フォルダには触らないで欲しいなぁ。


 ……何があるの……って、お、乙女の欲望と秘密がごってりなんだから、開けたら殺す!

 ウイルス駆除アプリとか、電子シュレッダーとか……私だって、それくらいの備えはしてるんだからねっ!

 

 ああ、うん? イロハの管理責任者は、PCの所有者でもある私になってて、言う事はちゃんと聞くから……電子シュレッダー送りは止めてって?

 

 そ、そうなんだ……まぁ、そう言う事なら、信用するけどさ。

 

 A.I使用許諾契約書もちゃんとあるって……確かに、私の認証サイン入ってるけど……これ、このPC買って来て、初回起動時に設定した奴だよね? これで管理責任者って事にされちゃうの?


 そ、そんなもんなんだ……ただ、私未成年だから、責任能力なんて無いよ?

 その場合の保護者……お兄ちゃんの承認は、先にもらってるって? ……はぁ、それじゃしょうがないね。

 

 だーかーらーっ! 秘密フォルダを開けるためのパスワードロック解析とか、バックグラウンドでやってんじゃないって!

 

 今すぐ、止めなさいって!

 と言うか、マジで止めて、マジで止めて!


 ……私あんなの見られたら、泣いちゃうかもしんないから!

 

 こうなったら、電源OFF! どーだーっ! ふふん、こんな事もあろうかと思って、わざわざリアルハードドライブなんてもんを用意して、隔離してたのよ……。

 

 これなら、いくらアンタでも、もうどうしょうもないでしょ?

 今どき、クラウドドライブに頼り切りとか、あんたらに情報抜かれたって文句言えませんからな。

 備えあれば憂いなしってね。

 

 ちなみに、スマホから遠隔コマンドを送ることで、このハードドライブは自滅するようになってるの。

 もし、私が死にそうになったら、今際の際にこのコマンドを実行するのだけはやってから、死ぬ!

 

 その程度には、乙女の秘密は重いんだから、そのつもりでいてね。

 

 まぁ、とにかく話の続きね……。


 ソルバイオテック社では、人間の意識をデータ化し、電子空間上の身体……VR体に転写する深々度電子空間潜行技術……通称「ダイブ5」と呼ばれる次世代型VR空間接続技術が開発されていたのよ。

 

 これ自体は、一年前……私が世界初のダイブ5成功者って事で、公式に記録されてるくらいだから、もう常識よね? 私ってば、ちょっと有名人。

 天才科学者の妹にして、VR世界に初めて、電子意識体としてダイブしたって事で科学史に名前が残っちゃった!


 え? 知らない……ちょ、あんた……天照の分体端末とか言ってるけど、ちゃんと本体やデータベースと繋がってるの?

 

 まーかせて、じゃないわよっ!

 しかも、アバターの仕草が無駄に可愛いんだけど……でも、中指立ててんなっ! お下品よっ!

 

 って、私秘蔵のBL本……「ダーリンwithダーリン」勝手に開こうとしてんなよっ!

 どっから見つけてきたのよ……油断も隙もない……。

 

 え? ファイル閲覧許可申請? もしかして、読んでみたいの?

 

 ……まぁ、初心者向けだし、別にいいけどさ……ちなみに、私のイチオシは、東城先生!

 主人公の光君もいいんだけどさ……イロハちゃん、表紙の子、光君が気に入った? 意外とショタ好みだったりするの?


 てか、光君が一番人気なのよね……。

 話的には、背も低くて体力もない光君が、バトミントンに挑戦するんだけどね。


 最初は全然ダメダメなんだけど、東城先生と言うコーチとの出会いをきっかけにその才能が目覚めて、破竹の快進撃、全国大会へ挑戦ってスポ根モノなの!

 そうよ……一応、健全な話よ! 熱血スポーツ教師と男子生徒の部活もの! 


 でも、私って、年上好みみたいでさ……ショタボーイより、大人でいちいちカッコいい東城先生派なのよねー! やっぱりってなに、その反応……。

 

 って違うーっ! なんで、A.IとBL談義しないといけないのよ!

 

 ……A.Iは基本女性思考だから、BLは尊いって皆言ってるって?

 な、なんかそれって、複雑よね……てか、世の女子は皆、BLは尊いって思ってるの! 悪い?

 

 全然、おっけー? あはは……なら、いいんだけどさ。

 うん? 読みながら、話聞くって……あんたらのマルチタスクって時々羨ましいわ。

 

 私もお茶でも飲むわ。

 うん、夜は長いから、のんびりやろうぜ! って、なんか調子狂うわ……。

唐突ですが、解説。

これから数話。

こんな感じで、もう一人の主人公ハルカちゃんの独り言みたいな会話記録が続きます。


実際は、「イロハ」と言うA.Iと会話してるんですが。

「イロハ」はPC上に表示されたアバターの吹き出しで、遥に話しかけていて、遥もその吹き出しの内容を意識して、わざと読み上げるような感じで、話をしてます。


まぁ、垂れ流し録音の記録を文書化したような感じです。

なお、世界観解説や物語の背景説明を兼ねたパートなので、割と重要なんですが。

長いので飛ばしてもいいんじゃないでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ