表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/270

73.プロローグ

今話は第二部のプロローグになりますので、短めになっております(

 空を移動できると移動時間がものすごく短くなる。

 途中で鳥っぽい魔物と数回遭遇したけれど、シエルも飛行に慣れてきたのか、飛びながら魔法陣や詠唱魔術もそれなりに使えるようになったので、無問題。

 と言うか、わたしの結界を突破できないので、無視して飛んでいけばいい。


 突っ込んできたと思ったら、結界に阻まれて勝手に落ちていく。


 空中を移動中は、わたしは歌いっぱなしだし、シエルは踊りっぱなしだし、精霊たちもくるくるとシエルの周りをまわる。

 おかげで、移動が楽しくて仕方がない。


 眼下に見える景色も少しずつその様相を変えていくので、見ていて飽きない。

 風景が良い高速道路を周囲の車を気にせずに走っている感覚、と言ったところだろうか。

 飛行機とかのほうが近いかもしれないけれど、飛行機だと歌って踊れない。

 車でも踊れないけれど。


 とにかく、王都であった面倒な出来事を忘れるには、ちょうどよかった。

 途中町や村に寄る気もなかったので、数日で国境に辿り着いた。


 このまま空を飛んで国境を越えられなくもないけれど、後でバレると拙いだろうし、堂々と越えられるようになったので、ほどほどで降りて徒歩で向かう。


「国境ってここで別の国ってことなのよね?」

『そうですね』

「でも町の壁を大きくしただけで、別って感じがしないのね」

『んー、国というのが、人が勝手に決めたものだからですかね?

 わたしも国をまたぐって言うのは初めてですから、実感がわきませんね』

「エインもそうなのね、それはなんだか素敵ね」

『そうですか?』

「だって、エインと初めてを共有できるもの。エインは私よりもたくさんのことを経験しているでしょう?」


 まっすぐシエルがわたしに告げる。

 確かにわたしはシエルよりも多くのことを経験している。

 だけれど、この世界で経験していることは、どれもこれも初めての事ばかりだ。


 でも確かに、シエルと共有できているかといわれると、そうでもないのかもしれない。

 シエルを守ることに集中していたから、そんな余裕がなかった。


――いや、余裕を作ろうとしていなかったのか。

――なぜなら、わたしはシエルの中に間借りしているだけの存在。




――……だから、わたしはエインセルと名乗っているのだから。


 でも、わたしは覚えている。わたしがシエルと共感した初めてを。

 シエルには内緒だけれど、2つの月が浮かぶこの世界の夜空を見た時。


 それから。


『わたしの歌で踊ってくれるのは、シエルが初めてでしたよ』

「ん? うふふ。そうなの。そうなのね。本当なのね?」

『本当ですよ』

「それは素晴らしいことね! 素敵なことね!

 嬉しいわ。嬉しいのよ!」

『ええ、わたしも。シエルにそう思ってもらえてうれしいです』


 本当に。本当に。

 でも落ち着いて、シエルにすべてを話した時、わたし達は今までと同じ関係でいられるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


作者別作品「クラスメイトに殺された時、僕の復讐は大体達成された」が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
2020/5/29から第一巻が配信中です。
64ve58j7jw8oahxwcj9n63d9g2f8_mhi_b4_2s_1


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ