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閑話 ブラスと決闘と決別 ※ペルラ視点

時系列的には、37話と38話の間くらいでしょうか。

本当は39話の後の閑話の前にいれようかと思いましたが、書き方を思いっきり変えた事、佳境っぽいのに関係ない話で1話ってのはどうだと思ったので、ここに置いておきます。

次話以降書き方は戻ります。


つまり読まなくても大丈夫です。タイトル通り、ブラスが元パーティメンバーと決闘するところですので。

 あたしの名前はペルラと言います。下級水魔術師で今は出身の村で仲の良かったテレン君とイルダちゃんと3人でパーティを組んでハンターをしています。

 少し前まではもう1人いたのですが、余りの横暴さに3人で抜けて新たにパーティを組んでしまいました。

 昔はやんちゃながらも、嫌なことをすると謝ってくれていたけれど、上級職を授かってから少しずつ変わっていってしまいました。


 話は変わりますが、あたしには先生がいます。

 もうすぐD級ハンターになれるという私達に、D級依頼を体験させてくれるという名目で1度だけパーティを組んでくれた女の子です。名前はシエルメールさん。

 パッと見ただけだと、10歳にも満たない女の子で、白い髪と少し釣り気味の青い瞳。実年齢は10歳らしいけれど、それにしてはほっそりとしています。

 肌はシミ一つなくて、たぶん触ったらすべすべしているでしょう。白い髪もパサパサなんかじゃなくて、しっとりしているというか、綺麗に流れていて、綺麗で可愛くお人形のような人です。


 まるでお貴族様のようですが、詳しい話は聞いていません。ただでさえ10歳でハンターですから、並々ならぬ理由があるんだと思います。

 何もかも異質な先生ですが、魔術の技量もとびぬけています。たぶんあたしなど足元にも及ばないでしょう。

 そもそもあたしがパーティで役割を持てたのが、先生のおかげです。


 魔術といえば高い攻撃力で後ろから魔物を始末するのが当たり前ですが、下級の水魔術しか使えないあたしはそんなに強い魔術が使えません。

 だから足を引っ張っているなと思っていたのですが、先生にサポートに回るように言われて、実際に先生がやっているのを見て、あたしでも役に立てる実感を得ることができるようになりました。



 気が付いたら、先生とパーティを組んでからもう半月。

 いつものように、依頼を受けに行こうとハンター組合に立ち寄ったら、元パーティメンバーであるブラス君が、あたしたちの前に現れました。

 今更何の用があるのかと、3人で警戒をしてたら、以前と変わらない気安さでブラス君は話しかけてきます。


「お前らどうせ戦力足りてないんだろ? また俺がエース張ってやるよ」

「断る」


 テレン君が短く返しましたが、イルダちゃんもあたしも同意見です。

 まるで断られると思っていなかったのか、目を丸くしたブラス君でしたが、すぐに怒りだします。


「お前らに断る権利はないんだよ。さっさとパーティ組めよ」

「断る」

「こっちも、心配で言ってやってんのがわかんねえのかよ」

「心配なら戦ってみるか?」

「オーケー、オーケー。やるならお前ら全員で良いぜ? どうせE級程度のハンターなんだからな。

 だが俺が勝ったら、報酬の半分は俺のものにする。それでいいなら、決闘してやるよ」

「わかった」


 ハンター組合内で揉めていると、周りの目があるので仕方がないのですが、決闘することになってしまいました。

 職員さんに頼んで、練習場を借りました。決闘は初めてするけれど、場所を借りたり、職員さんに頼んだりする関係上お金がかかることもあり、お金がかかる場合、負けたほうがお金を支払うんだそうです。

 全財産をかけた場合には、次回以降の報酬から天引きなんだとか。


「せっかくE級でヒーヒー言っているお前らのパーティに、足手纏いを連れながらE級上位の依頼をバシバシこなしていた俺が入ってやろうってのに。お前らバカだろ?

 お前らと別れたことで、俺は本当の力を手に入れたんだよ。すぐに上級ハンターにだってなってやるさ」


 今ブラス君は何と言ったでしょうか。足手纏いって言いましたか?

 あたしが知る限り、ブラス君が組んだのはあたしたち以外だと、先生だけです。

 先生が足手纏いなら、今頃ブラス君はD級の依頼をソロで完ぺきにこなしていることでしょう。テレン君とイルダちゃんは、ブラス君の物言いに呆れてしまったのか、鼻で笑っていますが、あたしとしてはとても頭に来ました。

 ですが、わかりやすかったテレン君やイルダちゃんの方に、ブラス君は反応します。


「何だよお前ら。バカにしてんのか?」

「そんな優秀なら、オレ達以外のパーティに入れてもらえばいいだろ?」


 売り言葉に買い言葉とばかりに、テレン君が返しますが、このままだと埒が明かないと感じたのか職員さんが「内容を確認する」と割り込んできました。

 テレン君は「はい」と引き下がりますが、テレン君に言い返せなかったブラス君は忌々しそうに、職員さんをにらみつけます。


「ブラス君が勝った場合には、彼をパーティに加えたうえで、パーティで受けた依頼報酬の半額を貰う権利を得る。これは、パーティが解散するまで続き、解散した場合再びこの4人の間でパーティを組むことを禁止する」


 少し内容が変わっていますが、これは仕方がないことかもしれません。

 パーティを組んですぐに解散、ブラス君以外で再結成をしたら、決闘の意味がありませんから。

 次に職員さんは、テレン君を見て「そちらのパーティが勝ったら場合はどうする?」と尋ねてきました。そういえば、決めていませんでした。ですが、ブラス君からもらえるもので、欲しいものなんてありません。

 こちらを見たテレン君にあたしは首を振って返します。


「明日以降オレたちに関わらせないでください」

「ブラス君はこれで良いか?」

「構わねえよ」

「決闘はわたしの合図で始め、パーティ全員が戦闘不能になるか、降参するか、わたしが止めた時点で決着とする。殺しは認めない」


 説明が終わり、あたしたちは向かい合いました。

 それから「はじめ」の合図で、テレン君とブラス君が走り出します。

 以前のテレン君なら、ブラス君の攻撃を待っていましたが、今は積極的に攻めるようになりました。


 同時に走り出した2人ですが、ブラス君の方が振りが早いです。

 大振りで切りかかっているように見えるのですが、それでも上級職なだけあって、大振りながらも無駄の見えない重たい一撃になります。

 テレン君は避けるのを諦めて、盾で受けようとしますが、弾き飛ばされてしまいました。そこに追撃をするべく、ブラス君が踏み込もうとします。


 ですが、そんなにわかりやすいのであれば、あたしでも簡単に対応が可能です。

 用意していた魔術で、ブラス君の足元だけを水浸しにしましょう。急に足元がぬかるんだブラス君は、踏み込みの力強さも相まって転んでしまいます。


 転んだブラス君がすぐに立ち上がり、あたしを睨んできます。

 復帰の速さは、やはりその辺の魔物とは比べ物になりません。

 ですが、そんなにあたしを見ていて良いのでしょうか。たぶん、その間にニルダちゃんかテレン君が攻撃したら、終わりじゃないかな。


 はい。ここまででわかったけれど、ブラス君は強くないです。

 身体能力は高く、後衛のあたし達だと一撃で意識を持っていかれるでしょう。

 でも何をしようとしているのかが、顔を見ればわかります。行動を見ればわかります。こちらを騙そうとする気が全くありません。

 テレン君も冷静に対処していれば、最初の一撃を避けることは難しくなかったでしょう。というか、あたしが対処するべき場面でした。


 ここでテレン君から合図がありました。その内容はいたって簡単。「この敵を使って、連携の練習をしよう」です。

 先生の言葉に従って、戦い方を変えてまだそんなに時間がたっていないので。

 ゴブリンリーダーを相手にしたときは、とても勉強になりました。


 こちらに走ってこようとするブラス君を再度転ばせて、あたしは了解の合図を出しました。



「くそッ」


 ブラス君が悪態をついて、剣を地面にたたきつけました。

 何度も水で足を取られて転んだブラス君は、見た目にはドロドロだし、体中に小さな傷があるでしょう。

 先生を馬鹿にされたことで、やりすぎてしまったけれど、とってもいい練習になりました。

 動きが速いので、魔術を使うタイミングは難しく、単純なのでほかの2人もフォローをしやすい。


「それまで」


 剣を投げたことで、負けを認めたと思ったのか、職員さんが終了の合図を出します。

 ブラス君もそれに文句はないのか、不機嫌な顔をしても、職員さんにかみつくことはありません。

 代わりに言い捨てるように「この薄情の裏切り者どもめ」とあたし達に悪態をつきます。


「何処がだ?」

「お前らは、俺の妹が病気なのも気にしないんだろう? 同じ村の出身で、今までやってきたのに。

 なんで俺がそんな奴らに負けんだよ」

「何でって、お前に殺されかけたからだが」

「は?」

「分からないならいい。

 そういえば、オレなお前と別れたとき、金貨1枚持ってたんだ」

「それ寄越せよ」

「そのつもりだった。オレが金貨1枚持っているってことは、お前は金貨2枚持っているはずだったからな。

 それで金貨3枚になって、薬が買えた。でもお前は持ってなかったからな」

「安心させるために手紙送って何が悪いんだよ」


 本当は皆の貯金が金貨1枚になったら、3人で出し合って金貨1枚をブラス君に上げようって話していました。そう話していた時に、ブラス君が1人で手紙を送っていたことを知ったのです。

 同じ町や村の中で手紙のやり取りをするならまだしも、そこを越えるとかなりのお金がかかります。

 なにせD級ハンターに依頼することになるからです。町間の移動ができるのがD級以上だから。

 よくハンターが集まる町の間であれば小遣い稼ぎにと、銅貨で請け負ってくれることもあるけれど、あたし達の村となれば話は別で、銀貨2~3枚が必要になるはずです。


「手紙を送ることは悪くないわ。自分の自由に使えるお金でやるんだったら、文句はない。

 でもあんたは違うでしょう? ただ格好つけたかっただけ。本当に病気を治してやりたいんだったら、手紙を送るお金を貯めて少しでも早く薬を買ってあげるべきじゃない?」

「全く連絡しないのは心配かけるから、皆でお金出して年に1回は手紙を出そうって約束してたよね。

 どうして、普段から手紙送っていたって、黙ってたの?」


 イルダちゃんとあたしもブラス君に声をかけるけれど、返ってきたのは「ッチ」という舌打ちだけ。

 しかも空気に耐えかねたのか「あー、もう」と地面を叩いて、出て行ってしまいました。

 これであたし達とブラス君はもう無関係です。すっきりしないけれど、たぶんこれはいつまで付き合っていても変わらない事なんだと割り切ります。

 でも、先生のことを侮辱したのは許せないので、もう少しこけさせればよかったかもしれません。

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