表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンサーブラッド-果てなき魔術大戦-  作者: 朱天キリ
第三章 運命の灯火-アリアステラ-
47/243

045.5 ただ勝利を求め



「フハハハハッ!」


 甲高い笑いが耳を痛ませる。ヴィクトル・ザドンスキーはガーディアンズの基地の裏取りをしていた。


「私ともなればこの程度の事造作もないわ!」


 一体なぜニルヴァーナがこの任務を自分に負わせたか、その意味こそ分からないがその任務が滞りなく順調に進んでいることは確からしい。

 ただひたすらにこちら側に注意を集める。それがニルヴァーナからヴィクトルに託された任務である。天才で秀才で非凡な才能を持つと自負するヴィクトルは他者よりも圧倒的な指揮力があると熱弁し、自ら陣頭指揮を買って出た。


 それほどまでに自分に才能があると思い込んでいるヴィクトル。実力は確かなものだった。


 ガーディアンズ時代の訓練校では魔術師を抜けばニルヴァーナに次ぐ二番手。実力を身につければつけるほど彼は天狗になっていった。自分に無いものなんてあるのだろうか、自ら疑問に思うほどだ。

 彼は負けることを知らない。敗北は彼の辞書に存在しない。どう足掻いても負けを認めない。


 だが、勝つ以外の選択肢を持たないヴィクトルが勝てないものの中、彼が唯一負けを認めざるを得ないものがある。


 魔術師だ。自分にはない超常現象を操る力。自分にはない別の角度からの他者からの信頼。自分にはない確実な勝利。

 ヴィクトル・ザドンスキーはそれが許せなかった。憎くて憎くて憎たらしくて仕方がなかった。自分に無いものを持つ人間が赦せなかった。

 だからこそ殺す、だからこそ消す、だからこそ滅ぼす。表面的に高笑いこそしているが、彼の心には静かな嫉妬と憎悪が確かにあった。


「む、あれは……?」


 基地の中から出てきた男。その姿は未だ遠かったが、頭の奥底に眠っている何かが危険を察知させている。

 そのうる覚えの脅威に足は震えていなかった。

 彼は負けないと確信している。いつだってそうだった。そう自己暗示すれば次は勝てるということを知っているからだ。


 そしてヴィクトルは男に向けてこう言い放つ。



「フハ、フハハハハハハハッ!! 随分と久しいじゃないか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ