明日から頑張る
「世界ハ、残リ一ヶ月デ終焉ヲ迎エル!」
魔王がそう言ったのは、僕がトイレで用を足している間だった。
紙が無かったので仕方なく、そのままトイレを出ると
「ハジメ!魔物が攻めてきてるわ!早く逃げるのよ!」
それよりも紙はどこかと訪ねると僕の腕を掴んで外へと連れ出した。
外は空が薄紫色に染まっていた。
いかにも魔王降臨な空をしていた。
おいおい、ケツを拭かせてくれ。
パンツも履いてないんだぞ。
そんなことを言っていたら僕は足を木の根っこに躓いた。
スルッ
母さんは僕の腕を離した。
が、
転んだ僕に「サヨナラ」だけ言い残して、振り返りもせず、逃げる村人たちと一緒に走り去っていった。
たくっ、何て親だ。親の顔が見てみたいものだ。きっと、かなりのお婆ちゃんだろうけど。
「ブヒヒヒヒッ!逃げ惑え!人間共!」
やべっ。
死んだふりでもするか。
オークの群れが自分の横を歩き、通りすぎるのを待つ。
呼吸を止める。俺はただの死体ですよー。何ってね。
「見てみろよ!ケツ出して死んでやがるぜ!ぶひひひひっ!」
なんて屈辱だ。お尻を披露している事を忘れていた。
このオーク共はいつか必ず殺して...、
「おーい。」
ザクッ ザクッ。
「やめろよ剣が汚れちまうだろっ。」
ブッフォェ。
「うわ!血ぃ吐いた!生きてたんじゃねぇのか!?」
「マジかよ悪い事したなぁ。」
「てゆーか、う○こくっせぇー!俺こいつ要らねー!」
「ケツ拭いて無いんじゃねーのか?」
...
し...しぬ...。
呼吸が出来ない。
オークの群れが去って行った。
今から医者に行けば間に合うか...。
...そっか...。もう医者なんていないか...。
せめて、フツーの格好で死にたかったなー。
こうやって、僕の人生は幕を閉じた。
...
享年28歳 ハジメ 死亡