帰り道で
思いつきで書いてみたので、変な感じなところなどありましたらご報告お願い致します。
部活動の帰り道。全国大会が近いため、夜遅くまで練習をした俺の体はボロボロだった。
高校三年生。最後の大会で掴んだ、念願だった全国行きの切符だ。夜遅くまでの練習も苦ではなかった。
さそり座の赤い輝きが美しい静かな夜だった。
へとへとの体を引きずりながら、家路を急いでいたその時、ふと視界に人影が写る。
俺が住んでいる所は、ド田舎というほどではないが、そこそこの地方だ。
夜になれば駅前のメインストリートでもめったに人通りはなく、そのちょっと先の、今、俺が歩いている田園地帯へ続く道は言うまでもない。
そんな夜道に人影があると、びっくりして立ち止まって一瞥することも自然なことだと思う。
こちらは当然誰もいないと思って歩いていたのだから、そこの急な人影は俺の肝を冷やした。
よくよく目を凝らしてみると、それは同じ高校の制服を着た女子だった。
ちょうど道が農道になるところで、電柱の列が途切れて街路灯が最後になっているところに一人突っ立ている。
同じ高校の白いセーラーを着ていて、ロングヘアーの女子。うつむいているから、顔がちょうど髪の毛で隠れている。手元にはスマートホンらしき画面がぼんやりと光っている。
隣の電柱からして、身長180センチあるかないかの、かなりの高身長だ。
俺は、そっと歩き出す。彼女がだれか判断するにはもうすこし距離を縮めなければならないし、第一、家路はこの道一本なのだから前に進まなければ帰宅できない。
二、三歩歩くと彼女がこちらの気配に気が付いたようで、手元の端末の画面が暗くなり、おもむろに顔を上げた。
俺は彼女の顔を視認したとたん、乱れていた鼓動がさらに大きく、激しくドクドクとなるのを感じた。
いや、先ほどの鼓動の乱れから本当は気が付いていたのかもしれない。あえて、意識の外に追いやっていたのだろう。
しかし、冷静になれば分かったことである。身長が180センチでロングヘアーの女子なんて、ここらでは彼女くらいではないか。
俺は、無意識に彼女であるという、一番の可能性を排除していた。
そう、人影の正体が同じクラスで、俺がひそかに想いを寄せている、北住洋子であるということを。
時刻は夜9時30分。こんな時間に 、こんな人気のないところで何をしているのだろうか。
俺は、木の陰に隠れてじっと様子を覗う。まるで、ストーカーのようだが,別にそんなつもりは無い。
すると彼女は、空を見ながらなにかをボソボソ言っている。
よく聞こえないので、少し近づこうと思ったその時、
「バキッ」
しまった!
誤って、気の枝を踏んでしまった。
彼女はハッとしてこちらを振り向く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目があって、一瞬の静寂がその場を支配する。
「あ、ストーカーとかじゃなくて、その、ね、ほら、こんな時間に女の子が一人こんなところにいたら、あぶな・・・」
「見たのか」
俺の弁解の言葉を遮るようにして、「見たのか」なんて言われて、俺は完全に呆気に取られてしまう。
否、それだけではない。冷たく突き刺さるような彼女の声は、学校の時とは全く違い、俺は動揺が隠せなかった。
「見てしまったのか・・・仕方がない」
え・・・何、何が「仕方がない」なの?色々意味深過ぎて、良く分からないけど!
しかも俺そんなに重要な事は見てないと思うぞ?確かにちょっと不思議ちゃんだとは思ったけれども。
俺がそんなことを考えているうちに、彼女が近づいてくる。3m程になった距離でお互い対面する。
遠くだったからわからなかったが、彼女は全く笑っていない。まるで虫を見るような冷酷な目をしていた。しかも、驚くべきことに彼女の目は蒼色に光っていた。透明で、どこまでも透き通る様な蒼に。
俺は、いよいよヤバイと感じて、逃げようとした。
しかし、逃げられなかった。
体が動かないのだ。あの瞳に見つめられると、まるで金縛りにあったかのように体がただの棒になってしまった。
彼女がまた近づく。今度は、吐息がかかるほどの距離になった。
俺は全く動かない体で、ただ恐怖を感じていた。全身から汗が止まらない。
彼女は一言も喋らず、ほんの一瞬はにかんだ。そして、俺の額に人差し指と中指を当てた。
冷たかった。彼女の指は氷のように冷たかった。
!!!!
とたんに、俺の体は熱くなる。体の芯から燃えるように熱くなった。
体の骨が形を変えて、動いていく。尋常じゃない痛さと、物理的にも立っていられなくなってその場に倒れ込んでしまった。
「う゛う゛・・・あァァ」声にならない悲鳴に応える者は、いない。
体がどんどん小さくなって、手足が短くなる。更に手足は細くなり後ろ足は足から脚になってしまう。既に骨格は四足歩行のそれだった。
白、否、銀色の毛が体を覆い、尾てい骨からは長く太い銀の尻尾ができる。
そして、顔がやや逆三角形になったと思うと一気に口と鼻が一緒に持ち上がり細長いマズルになる。いつの間にか耳は、小さくなった頭の上にピンッと立った三角形でのっている。
全身からぶわっと銀色のつやのある毛が生えそろう。
最後に瞳が黄金に染まり、縦長に伸びたところで変化は終わった。
どこからどう見ても銀色の狐である。とてもとても美しく神秘的な狐だった。
「私の秘密は私の眷属しか知ってはいけないのよ。 ウフフフ....」
もうそこには、全身銀色の狐とその主人であろう人物しかいなかった。
その人物も、足元の狐同様頭には三角形の耳と、尻尾があった。ただ、尻尾は一本ではなく九本も生えていて、ゆらゆらと揺れている。
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