部活動 5-4.2
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
すれ違いが続きます。
ではでは~
「言葉遣いは失礼じゃなかったよな」
鉄臣君、下りのエレベーターで独り言で確認してした。
「やっぱり、桃園さんは、かわいいよなぁ。あの顔を見ちゃうと勘違いしちゃうよ」
「・・・、夏休み明けに学籍あるかなぁ」
鉄臣君、見当はずれの心配で途方に暮れかけていた。
= = = = =
「おはよう」
「おはようございます」
「ちっちっちっ、おはようだけにしてよ」
「それはちょっと。雇い主ですから」
「それだったら、雇い主はお曾祖母様だよ。・・・でね、ちょっとお願いなんだけど、いいかな?」
竹腰さんはいつも通りだった。ちょっとホッとする鉄臣君。
「なんですか?」
「今日ね、お母さんもお昼が一緒なんだけど」
「はい、いいですよ」
「そう、よかった」
= = = = =
「うーーーー」
唸る竹腰さん。
いつもの4人の食卓に女性が4人座っている。
鉄臣君が用意したのは、いつも通り4人分。
「かな坊、これは?」
「え、何かお気に召しませんでしか?」
「なぜ、お前さんの分が無いんだい?」
「・・・、あのー、食材が足りなかったんで」
その言葉にこめかみを押さえるアヤメさん。
「あの、おばあさま、わたしの分は真綾と」
竹腰ママさんがアヤメさんに提案するが考え込むアヤメさん。
「真綾、お前の分をかな坊と分けて食べるんだよ」
「え!・あ、はい、もう、仕方ないなあ。お曾祖母様のお言いつけどおりで丸く収まるしね」
なぜかドヤ顔のアヤメさんにニコニコ答える竹腰さん。
「いや、ボクは食事が終わるまで待ってますから」
「かな坊、自分の仕事を見届けないとダメだろ。かな坊、真綾の隣に座りな」
鉄臣君、強制的に竹腰さんの隣に座らされる。
「鉄臣さん、ごめんなさいね。仕事に時間が空いたので、お昼をみんなと一緒にと思ったのよ」
「い、いえ。ボクがご要望にお応えできなかったせいですので」
申し訳なさそうな竹腰ママさんに申し訳ない鉄臣君が応える。
「ほらほら、料理が冷める前に食べるよ。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
「鉄臣さん、はい、あーーん」
「ちょ、ちょっと、竹腰さん」
「もう、真綾でしょ」
「昨日、無しって言ってましたよね」
「慣れたって言ったでしょ」
「いじわるとか言ってたし」
鉄臣君、竹腰さんの猛攻にたじたじだった。
「関係ないよーだ。ほらほらー、あーん」
「ち、近いって」
「もう、わたしのあーんが食べられないっていうの?」
「だ、だって、ボクはただのバイトだよ。みんなの前に晒すのは・・・ごめんなさい。竹腰さんと堀田さんはお似合いだったかもしれないのに」
「え、あの、そんな、べ、別にわたし・・・」
「あー、かな坊、竹腰の女は、そんな了見の狭い女じゃないさね」
竹腰攻撃にできた一瞬の隙。
開いた穴を塞いでアヤメさん攻撃が覆う。
「鉄臣さん、心配しないでくださいね。真綾ちゃんったら、あの日以来、毎日同じ話をするんですよ」
「お、お母さん、ま、毎日じゃないよー」
「お嬢さま、毎日ですよ」
「御堂さんまでー。いやー、恥ずかしーーー」
「・・・」
御堂さんの言葉に恥ずかしがる竹腰さん。
鉄臣君は、何のことやら、わからず座って眺めていた。
竹腰家では、何か一つの流れができつつあった。
= = = = =
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
「今日もおいしかったさね」
「ありがとうございます」
色々と満足そうなアヤメさん。
「あーあ、わたしの花嫁修業のハードルが上がっちゃうな」
鉄臣君、背伸びした竹腰さんが自分に向けた流し目に見惚れてしまう。
(あーあ、竹腰さんの婚約を潰した俺って最低だよな。でも、堀田さんと弥刀さんもお似合いだったから、仕方ないよ)
鉄臣君、思わず俯いてしまう。
「え?どうしたの。気分悪いの?大丈夫?」
心配して鉄臣君を気遣う竹腰さん。
(あれ?やっぱり、いつもと違う香り)
= = = = =
「えーと、明日は何人分でしょうか?」
「うーんとね」
鉄臣君、考え込む竹腰さんを注視する。
「こ、こっち見ないで」
「す、すみません!」
鉄臣君、竹腰家でも失敗したと思った。
(あー、ボクってダメだなー。格差社会なんだぞ。言葉遣い、態度は気を付けないと)
「鉄臣さん、今日は香りが違うね」
「え?・・・すいません。臭いですか?」
「そ、そうじゃなくて。シャンプーとか・・・昨日、誰かの家に泊まったりとか?」
「な、なんで?・・いやいや、そ、その、・・・あ、ああ、お試しのシャンプーじゃないかな。・・・風呂は入ってるから」
「ふーん、ふーん、ふーん、ふーん、ふーん、ふーん」
何となく納得いかない竹腰さん。
「な、何人分でいいのかな?」
「ふぇ、よ、4人分」
思わず4人分と言ってしまった竹腰さん。
「はい、じゃあ4人分ね。でも、人数が増えるときはメールか電話をくれたら頑張るから」
「あ、うん。頑張ってね。ま、まあ、今日みたいなお昼でもいいけどね』
「え、何? 竹腰さんは和風がいいの?」
『アホ』
アヤメさんは関西出身なので、竹腰さんも時々関西弁になるのだが、鉄臣君には聞こえていなかった。
いかがでしたか?
それぞれの時間が流れています。
次話をお待ちください。




