部活動 5-4.1
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
鉄臣君、理性は保てたのでしょうか?
ではでは~
楠木さんは何事もなく朝を迎えた。
もそもそと身支度をするとリビングを覗きに行った。
ソファに目をやると誰もいない。
「あれ?寝息が聞こえるんだけど、どこ?」
毛布に包まり床で寝る鉄臣君を見た。
(せめてソファで寝てたらよかったのに)
「さて、だめだめクンのために朝食を作りましょうか」
= = = = =
鉄臣君、味噌汁の匂いで目を覚ました。
「あれ、ここどこだっけ?」
寝ぼけて思考がついてこない。
「あーー、楠木さんに家だった」
立ち上がろうとした瞬間、生理現象に気が付いた。
「これはマズイ」
「鉄臣クン起きたんだね」
「お、おはようです」
「朝ごはん、できてるから、ダイニングに来て」
「あ、はい。ごめん、その前に顔洗って、トイレ」
鉄臣君、不自然にならないように股間に毛布をあてがう。
「うん、じゃあ、待ってるね」
楠木さんは、ダイニングに入っていった。
(よかったぁ。たぶん、バレてない)
楠木さんの部屋着は、夜とは違ってゆったり目のロングTシャツに下はスパッツっぽかった。
「昨日もああいう恰好だったら、目のやり場に困らなかったのに」
鉄臣君、顔を洗う頃には、生理現象は治まっていた。
= = = = =
「「ごちそうさまでした」」
スマホの着信音とインターホンが同時に鳴る
≪ピンポーン≫
「たぶん、ほのかちゃんだ」
「じゃあ、後片付けは俺がします」
「ありがと」
楠木さんはインターホンの画面を覗き込んだ。
「ありがとう。こんなに朝早く。上がってきて」
「桃園さんが来てくれたんですね。じゃあ、ボクはできるだけ早くお暇するね」
「え、もう少しゆっくり・・・」
「バイトの準備もしたいから」
「あ、ごめん。・・・ありがとう」
「どういたしまして。・・・それとボクは今、来たところだから」
「あ、うん」
= = = = =
「おはよう」
「大丈夫?」
「うん、来てくれてありがとう。さ、入って」
「うん。・・・クリスさん、確認してから入って」
「承知いたしました」
「えっと、誰か来てるの?」
「え?あ、ああ。さっき、鉄臣クンが心配して、来てくれたんだよ」
玄関で鉄臣君の靴を見つけた桃園さんが一瞥して気が付いた。
打ち合わせ通り答える楠木さん。
「ふーん。・・・で、かなみ君は、どこ?」
「うん、朝ごはんの後片付けをしてくれてるんだと思う」
「さっき来たのに、朝ごはんの食べたの? すごいね」
「え?あ、うん。たまたま・・・お昼、そう、お昼の分まで用意してたから」
「ふーん」
目を見ようとしない楠木さんに疑いの目を向ける桃園さん。
「楠木さん、ボク、帰ります」
キッチンで洗い物の終わった鉄臣君の声にふたりが顔を向ける。
『かなみ君』
「洗い物、手伝えなくて、ごめーん」
パタパタとキッチンに足早に入っていく楠木さん。
「お嬢様、マンション周辺含めて異常なしです」
「ありがとう」
「あの、お嬢様、差し出がましいとは重々承知しておりますが、絶好の機会と存じます」
「うん、謝る」
= = = = =
鉄臣君、支度を終えた。
「じゃあ、帰りますか」
鉄臣君、リビングで楠木さんに挨拶をする。
「じゃあ、ボク帰りますね」
「うん、ありがとうね」
「何も起きないといいんだけど」
「うん。・・・まだちょっと、怖い」
「桃園さんたちがいるから大丈夫」
「鉄臣クンはどうするの?」
「バイトが終わったら、マンションの周りに張り込んでみるから」
「あの、その、・・・また泊まってくれてもいいんだよ」
「アハハ、そんなことしたら、楠木さんが落ち着かないでしょ」
「そ、そうでもないかも知れないよ」
「ああ、彼氏さんで慣れてるか」
「だから、彼氏なんていないよ」
「あ、そうだったね。うっかりしてた、ごめんなさい」
『もう、鉄臣クンのイジワル』
= = = = =
桃園さんは玄関で待っていた。
「おはようございます」
「かなみ君、おはよう」
「楠木さんの話しだとかなり怖そうなので、ボクからもお願いします」
「あ、うん。あおいちゃんのことは大丈夫。紫苑さんたちにも連絡したし」
「ありがとうございます。じゃあ、ボクはバイトに行きますね。桃園さんも気を付けて」
「あ、ありがとう。かなみ君。それでね・」
「すみません、バイトの準備があるので、失礼します」
鉄臣君、桃園さんと居づらくなって、会話も切り上げ靴を履くと玄関から出ていった。
「あ、かなみ君、ちょっと」
バタンと玄関のドアが閉まる。
閉まったドアを見て立ち尽くす桃園さん。
「お嬢様。まだ、機会はございます」
「・・・、うん」
歪んだ顔の瞳から、大粒の雫が零れる。
= = = = =
「あ、このTシャツ、楠木さんの借りたままだ」
いかがでしたか?
鉄臣君と桃園さんの関係は、修復できるのでしょうか?
次話をお待ちください。




