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部活動 5-3.3

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


竹腰家のバイトは順調です。

橘家のバイトが始まります。


ではでは~


「ちゃんと言えるまで、わたし降りないから」

「うー」

「うーじゃないの。真綾と呼んでよ」


「真綾さん」

「イマイチ、いえイマサンくらいだよねぇ」


「かな坊、【さん】なんて堅苦しいよ」

「さすが、お曾祖母様。鉄臣さん、名前だけでお願い」

「さすがにそれは」

「おばーーさまーー。この男がわたしにイジワルをしますー」

「かわいそうな、真綾。このことは、ウチの者、全員に言って、周知させないとねぇ」

鉄臣君、両側でとんでもない会話が交わされる。


「えーーー。お姐さんまで。もう、いいんですか?婚約を白紙にしたのがボクなのに」

「いいから、いいから。ねえねえ、早く、早く」

「うー、コホン。 まや」

「・・・」

竹腰さんが無表情になり、頬がどんどん染まっていく。

「まや?」


「うーーー、ダメー。照ーれーくーさーいー」

「まや」

鉄臣君、ちょっといたずら心が顔を出す。調子に乗るとヤバいぞ。


「うーーー。鉄臣さん、やっぱり今まで通り」

「ホッ」

「あー、今ホッとした。なんか悔しー」


「じゃあ、まやって呼びますか?」

「べ、別にいいよ。も、もう慣れちゃったもん」

「俺は、まやがいいなら、そうするさ」

鉄臣君、普通に話しかけてみた。

「イジワル」

竹腰さんは俯いて動かない。


「まや、どうした?気を悪くしたのか?」

追い打ちをかけるように男子っぽさを強調してみた。

竹腰さん、鉄臣君の袖をつかむと真っ赤な顔を上げて鉄臣君を睨む。


アヤメさんから見えた竹腰さんの表情は、イジワルされている割に楽しんでいるように見えた。

「婚約を白紙にして、恋をさせようなんて、反則よ』

そう言いながら、おでこを鉄臣君の肩に乗せた。


 = = = = =


鉄臣君、ようやく竹腰家の拘束から解放され、予定通り橘さんちに向かっていた。

大通りから一区画入ると住宅街だった。


「ああ、普通の家だ」

鉄臣君、ちょっとホッとした。

竹腰さんちや桃園さんちがお屋敷だったので、住居のイメージに結びつかなかった。


ネットで住所を調べればわかると言ったのに橘さんが手書きの地図を準備してくれた。

地図は可愛らしい封筒に入れられていて、いい匂いつき。

女の子なんだなぁと思った。


目的地、橘ひよりの家に到着。


呼び鈴を押そうとしたとき、橘ひよりが家の中から飛び出してきた。

「先輩!いらっしゃいませ!」

輝くような笑顔だった。


 = = = = =


「橘さん、俺が着いたのよくわかったね」

「た、たまたまです。先輩は、時間に正確だと思ってましたから」


鉄臣君、橘ひよりに手を引かれ、リビングまで連れてこられた。


「時間がもったいないから、始めようか?」

「・・・はい。そ、その前に麦茶飲みませんか?暑かったでしょ」

「あ、ああ。お気遣いな・・・もらおうかな」

鉄臣君、遠慮の言葉のあとから、橘ひよりの顔色が土色になっていくように見えたので折れた。

「はい、取ってきますね」

トテトテと麦茶を取りに行く橘ひより。


 = = = = =


楠木さんはスーパーで買い物中。


「何にしーよーおーかーなー」


ネットで特売情報はチェックしていた。


「和風、洋風?肉、魚?何が食べたいかな?」

(ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・、にゃー! 恥ずかしー)

通路で身をよじって、期待を表現する美少女がいた。


(やっぱり、裸エプロン? ダメダメ、高校生だし、まだ恥ずかしいよー。で、でも、水着なら大丈夫かも。変な子だと思われるかな)


メニューは、あまり凝ったものにせず、ロールキャベツ、シーザーサラダ、野菜スープ、バゲットをチョイスした。

ふたりで準備しながら、どんな話題で会話しようか?


ふたり分の食材と特売品をカゴに入れてレジに並ぶ。


「?」

楠木さんは変な視線を感じた気がした。

周りを見回しても、それらしい視線の送り主は見当たらなかった。


 = = = = =


「ありがとうございます。わかったような気がします」

「じゃあ、忘れないうちに、次の問題を解いた後、もう一度解いてみようか?」

「え! 先輩・・・、おやつがあるので休憩しませんか?」

「そんなにのんびりでいいの? 効率的じゃないとお金がもったいないよ」


「このままだと、ボクの効率が下がっちゃいます」

「うーん、じゃあ、気分転換に別の教科にしようか?」

「せーんーぱーいー。おーやーつー。バイト代は、ボクが出すんですよー」

「うっ。それを言われるとちょっと困る」

「えへへー。じゃあ、おやつタイムです」

橘ひよりは、リビングを出ていった。


しばらくするとトレーを持って帰ってきた。

おやつはシュークリームで、少し形がいびつだった。

「橘さん、もしかして手作り?」

「はい。作ってみました」

「へー、すごいね。俺はお菓子作りはホットケーキくらいだから、尊敬するよ」

「しょ、しょんな、すごいことじゃないですよぉ。お茶入れますね」


橘ひよりは紅茶をカップに注ぎ、鉄臣君に差し出す。

「ありがとう、橘さん」

「お、お安いごようです。先輩、召し上がってください」

「じゃあ、いただきます」

鉄臣君、一つ摘まんでかぶりつく。


カスタードクリームが、はみ出したその瞬間。

鉄臣君が残念な表情に変わった。


「橘さん、隠し味の塩が多すぎ」

いかがでしたか?


橘ひよりはドジっ子属性かも知れません。


次話をお待ちください。

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