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部活動 5-3.1

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


鉄臣君の気分に関係なく時間は過ぎていきます。


ではでは~


最悪の朝だった。


≪帰ってください。ご迷惑をおかけしました≫


その言葉が頭から離れない。


何が悪かったのかわからない。


クルマで送ってもらうのを遠慮しただけで、帰れと言われた。

いいなりにならないと拒絶されるほどの存在でしかなかったのだろう。


自分を夕食に誘った彼女。

少しは好意的に考えもした。


結局、都合のいい何か程度に思われていたのだとわかった。


思いもしなかった。

自分に向けられていた彼女の目線が、想定以上に見下していたものだったことに気づけなかった自分の愚かさが悔しかった。

もう彼女とは話をすることはないだろう。

苦学生なりに精一杯抵抗していこう。


もしかしたら、休み明けには、学園に学籍がなくなっているかもしれない。

「どうしてあの場で土下座しなかったのかな。驕りがあったかな。ああ、調子に乗って後悔するなんてなぁ」

軽い吐き気を感じていた。


 = = = = =


携帯が鳴る。

「・・・。楠木さんか。 もしもし三石です」

≪鉄臣クン、おはよう。お願していたバイトのことだけど予定通りでいい?≫

「はい、いいですよ。ただ、橘さんの勉強のあとだから、20時過ぎちゃうけど?」

≪20時?8時ね、そうかぁ、じゃあ、お夕飯だけでもいいよ≫


「え、それでいいの?」

≪その代わり、バイト代は出ませんことよ≫

「それでいいよ。今日は、夕飯作りということで」

『やった』


「え?何?」

≪ううん。何でもない。じゃあ、材料買っておくね≫

「うん、お願いします」

≪はい、お願いされました。じゃあね≫

「じゃあ、今夜」


 = = = = =


「おはようございます」

「・・・」

「どうしたの?なんか変?」

鉄臣君、竹腰さんの怪訝な顔を見て身なりを確認する。


「鉄臣さん、夏バテか何か?」

「どうして?」

「いつもより顔色悪いよ」

女性の観察力には鋭いものがある。


「うん、夏バテかもね。昨日、寝つきが悪かったし、寝苦しかったから」

鉄臣君、桃園さんとの亀裂のことは伏せてしまった。

「バイト休まないでよ。お曾祖母様もがっかりするから」

「はい、頑張ります」


鉄臣君、昼食の準備に取り掛かる。

今日は4人分、量の問題より、出来上がり時間が上手く揃えられるか気になっていた。


バイトに集中する。

その方が気が楽になった。


 = = = = =


(もう、お別れなのかな。こんな終わり方はイヤだよ)


 = = = = =


まだ昼食には早い時間。

自室を汗を流しながらせっせと掃除する生徒がひとり。

「むっふー、今日は先輩とふたりで勉強だぁ」

橘ひよりは朝6時に目が覚めた。

掃除をしながら、あんなことやこんなことを考える。

先輩、お覚悟です。


 = = = = =


ゾクッ

(あー、体調悪いな)

鉄臣君、温めの悪寒を感じてしまった。


ステーキ皿4枚をオーブンで温め始めた。


玉ねぎをみじん切りにする。

フライパンをから焼きし、オリーブオイルを注ぎ、一片の薄切りしたニンニクを香りづけに炒める。

油がはねるのは、蓋をして防ぐ。


芳醇な香り立ち始めたところで、玉ねぎを入れる。

火を弱火にして焦がさないのが鉄臣流。

ひき肉も入れて蓋をする。

蒸し焼きにして、ゆっくり熱を通す。



具に熱が通り、玉ねぎが透明になり始める。

「ぼちぼちだな」

具をステーキ皿に分けてよそう。

≪ジューーーっ≫

焼けたステーキ皿から、いい音と香ばしい香りが立ち上る。

乗せる玉子の調理の間に冷めないようにオーブンの余熱を有効利用するため、中に入れておく。


玉子を2個とバターを少し、混ぜて溶く。

フライパンを熱し、油をひく。

油がなじんだところで溶き玉子を流しいれる。

熱で固まり始めた端を内に寄せる。

空気を含んで盛り上がるところを菜箸で破る。

フライパンを傾け、まだ熱の通らない溶き玉子をフライパンに行き渡るように流す。


ステーキ皿を取り出し、熱が通りきる前の玉子を乗せる。

鉄臣流鉄板トロトロオムレツの出来上がり。


一気に続けて三皿仕上げる。


ご飯はサフランライスにした。

コンソメを小さじを一さじ加えて少し風味を持たせた。


汁物は、トムヤム風仕立てにした。

「うーん、やっぱり味噌汁の方が良かったかな」


竹腰家の昼食が出来上がった。


 = = = = =


「ほほー。半熟オムレツだね」

「すみません。お好みかどうか。お吸い物は、タイ風です」

「あれ?かな坊にタイの友達の話をしたことあったかねぇ?」

「それは初めてお聞きししました」

「パクチーが苦手さね」

「ガランガの代わりに生姜、エシャロットの代わりにらっきょを使ったので、少し和風になっていると思います」

「そりゃ、面白いね。じゃあ、冷めるまえにいただこうか」

「お姐さん、どうぞ」

鉄臣君、よそったご飯をアヤメさんに渡す。


配膳が整った。


「じゃあ」

「「「「いただきます」」」」

いかがでしたか?


竹腰家のバイトは通常運転でした。


次話をお待ちください。

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