部活動 5-1.2
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
さて、怒涛の夏休みが始まります。
ではでは~
「謝るわ。噂に踊らされるなんて」
「みついし君、ごめんなさい」
「今度、部屋のお掃除手伝ってほしいな。バイト代も出すよ」
「「あおいちゃん!!」」
「先輩!、楠木先輩のバイト終わったらお願いします」
「ちょ、橘。あんただけずるい!」
「ボク、前から先輩と約束してたもん」
「わたしだって、お願いするのが遅くなっただけだもん」
いつも仲のいい後輩たちがギャーギャーとうるさい。
「じゃあ、ふたりの都合のいいときで引き受けようか? てか、俺でいいの?」
「「先輩がいいんです」」
鉄臣君、なぜか同意見なのが不思議だった。
「「「ジーーー」」」
(あれ?睨まれてる?)
「「「ジーーーーーーー」」」
(え?なに?ボク、何か、間違ったこと言った?)
「あのー、何でしょうか?」
鉄臣君、恐る恐るお伺いを立てる。
「ふん!後輩をたらしこんで何をするつもりよ」
「えろいし君、えろいし君、エロエロいし君!」
「部屋の掃除、家庭教師の後でいいから。一緒にお夕飯食べてくれると嬉しいな」
「その時は一緒に作ろうか」
「「「「「!!!」」」」」
他意のない一言に室温が1℃下がった。
生徒会室の戸が勢いよく開かれ、竹腰さんが肩で息をしていた。
「三石さん、後輩に初めてを頼まれたのってほんとですか! お曾祖母様に言いつけるから!」
「えーー。お姐さんにぃ! って、またその話ぃ? でも竹腰さんは関係ないんじゃぁ?」
「!、 そ、それは、あの、ほ、ほら、あれよ、公序良俗に反するからよ。お曾祖母様そういうの嫌いだから」
「えーーーー。ボクだって、彼女ができたら、キスくらいしてみたいよー」
「「「「「「キィーーーーーーーースゥーーーーーー」」」」」」
「ヒィーーーーーー」
多勢に無勢。
鉄臣君、キスへの憧れは、全否定されることとなった。
= = = = =
「なんだ。ふたりの家庭教師の話だったのねー。びっくりしちゃったー」
鉄臣君、なぜか竹腰さんにバシバシと背中を叩かれる。
「竹腰さん、俺の話なんかより、大事なことがあるんじゃないの?」
「え、何?」
「だって、ほら、この部屋に堀田さんと弥刀さんがいないよ。気にならない?」
「あ、あれ?ほんとだ。・・・ま、まあ、い、いいじゃない。み、!・・・堀田さんに惚れさせるのが目標なんだし」
「?」
「でさ、どうして家庭教師の話が出てきたの?」
「俺、自活するのが条件で水平学園に来てるから、稼がないとね」
鉄臣君、竹腰さんの疑問に答える。
「先輩は、漢らしいです。ボク尊敬してます!」
「橘さん、恥ずかしから、勘弁して」
「ええー。すごいのにー」
ちょっと残念そうにする橘ひより。
「あ、ありがとう」
鉄臣君、照れながらお礼をする。
「三石くん。デートなら他所でしてくれないかしら?」
「えーろーいーしー君ー」
「音奈ちゃん、負けてられないわ」
「あおい先輩、わたしは別に・・・」
『要さんが楽しそうだったのは、このことかぁ。他人事じゃないと厳しいなぁ』
「えー、バイトの話ですよね?変なこと言ってませんよね?」
鉄臣君、みんなの反応に戸惑う。最近は、当たり前のように責められるようになったな、耐えろ。
= = = = =
鉄臣君の携帯がメールの着信を知らせる。
「なんだろ、お姐さんからだ」
鉄臣君、メールを読む。
メールを読み終わるとアイスティーを飲む竹腰さんに目を向ける。
「竹腰さん、お姐さんにバイト捜しを教えましたね?」
「そうよ、それが何か?」
「そんなのどんなに悪条件でも断れないじゃないですか!」
「お曾祖母様がそんなことするわけないじゃない。信用無いなぁ」
「ボクは、何にもできないんですよ。お姐さんのところの仕事って、難しそうじゃないですか」
「そんなことないよ。手料理とか手料理だったり手料理くらいでいいんだから」
「・・・、わかりました。ご飯を作りに行けばいいんですね。で、何人分ですか?」
「そうねぇ、とりあえず3人分かな?」
「材料費や光熱費はどうなります?」
「細かいなあ。それくらいウチで持つわよ」
「ふー、よかった。じゃあ、いつからですか?」
「それは、お曾祖母様に聞いて。わたしは、ぁ・・・・・・ぃぃ・・』
「竹腰さんは、なんて?」
竹腰さんの言葉の最後の方は、ごにょごにょとしか聞こえなかった。
「いいの!細かいこと聞かなくて。鉄臣さんは、わたしの未来のためにフォローしないといけないんだからね!」
= = = = =
「なんとか、夏は凌げそうでよかった」
鉄臣君、スケジュール表を埋めていく。
竹腰家には昼食を作るに行くことで落ち着いた。
最初は<一ヶ月半住み込みで>という条件だった。
それは、さすがにきつ過ぎる。
「お姐さん、いい人なんだけど。やっぱり、怒ってるのかなぁ。嫌がらせとは思いたくないんだけど」
鉄臣君、調理道具をまとめて出かける準備を始めた。
これには理由がある。
バイトに備えて、下見に竹腰家を訪れた。
竹腰さんが案内してくれた竹腰家の厨房には調理人がいた。
竹腰さんが、用事で席を外した時のことだった。
「おいおい、お前がここを使った後に誰に面倒みさせるつもりだよ?おぇい!」
調理人のいうことはもっともだった。
厨房は調理実習室とは違う。
ほぼ毎日使って、そのうえで衛生管理も大事だ。
そこによそ者が好き勝手に使っていいわけじゃない。
堀田家の山荘とは勝手が違うことを改めて思い知らされた。
「だよなぁ、お姐さんの気まぐれなんだし。ボクみたいなパンピーが昼食を作りに行くこと自体、間違いなんだよ」
大型リュックにカセットコンロを1個、キャンプ用コンロ1個、キャンプ用の鍋、玉子焼き器、ガスボンベ、水10L.etc
トートバッグにフライパン、折り畳みバケツ、実家から送ってもらった炊飯釜
クーラーボックスに下ごしらえした食材、ありったけの保冷材
鉄臣君、バイト初日、竹腰家に昼食作りに出発する。
いかがでしたか?
鉄臣君、竹腰家でのバイトは早くも前途多難の様相を呈してきました。
次話をお待ちください。




