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部活動 閑話 桃園ほのかの場合 その2

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


桃園さんの記憶の中のおはなしの続きです。


ではでは~


勇気を出して、顔を上げると彼は、反対側の扉の方を向いていた。

うー、タイミングが悪い。


人ごみに慣れていないわたし。

何とかホームに出たときには、先に降りた彼の姿を見つけられなかった。



・・・仕方ないです。

乗り換えましょう。

手掛かりもないし、残念です。

乗り換え用の改札を通るとこっちのホームは空いていた。

反対側のホームには人がどんどん降りてくる。


空いたホームを適当に歩くと、嘘、運命?この人、同じ方向なんだ。

ほのか、獲物を逃すな。

顔を見るんだ。


いざとなるとだんだん恥ずかしくなってきた。

顔が赤くなっていくのがわかる。

俯いてしまった。

ほのかの意気地なし。


諦めない。

チャンスはあるはずよ。



電車に乗り込んだ。

さあ、彼さん、座って。

そうしたら、自然に顔を見てあげるから。


座らない?

空いてるよ、ほら、わたし座っちゃうよ。


反対側の扉の前で窓の方を向いている。

ダメよ、顔が見えないじゃない。

わたしを広い背中と細い腰で挑発しているわね。

何よ、後ろから見たら背中が逆三角形じゃない。


運動部系はまだ部活中だから、やっぱり学園の生徒じゃないのかな。


また出会うことは、たぶんないんでしょうね。


あ、動いた、え、え、こっちを向いたー。

じぃー、フムフム、整った顔立ちですね。

でも地味、顔色も悪い。

まあ、この人のいいところは、さりげなく優しいところだから、ピッタリかも。

力は強いんだ。

あの電車に乗ってる間、ずっと踏ん張っていたんだもんね。


堀田さんみたいイケメンよりは、癒してくれるかも。


あーん、このままは悔しい。

何か手掛かりはないの?


うん?携帯の着信音?

ワールキューレ?


お、この人の携帯だ。

へー、変わった形。

よ、よし、これは手掛かりになる。


てか、どうやって、探すのよ。

ほのか終了。


あ、降りちゃった。


 = = = = =


久しぶりにお祖父さまに会いました。

お祖母さまに甘えてしまいました。

わたしは、まだ子供ですね。


テレビで今日の事故のニュースが流れていました。

のべ2万人に影響ですか。

今日の電車の話をしたら、みんなびっくり。

ええー、わたしそこまで子ども扱いだったの?


いいですよー、彼が守ってくれましたから、平気でしたから。

でも、これは、言えない言えない。

絶対誤解される。

知らない人ですよーだ。

変わった携帯の人。

これがわたしが気になる男の人。


明日からクルマ通学です。

だから、今日はわーぐなーの鼻歌で眠るとしましょう。


 = = = = =


「おはよー」

「あおいちゃん、おはよー」

「ほのかちゃん、今日は遅いね」

「うん、混んでたからぁ。 あおいちゃん、いつもこれくらいだよねぇ」

「うん、家から歩いて来れるから、だいたい同じだよ」

「え、バスじゃないのぉ」

「歩ける距離だよ。脂肪を燃やさないとね」

「そのぼりゅーみーなお胸でそれを言いますかぁ」

「あー、また言ったー。じろじろ見られるのって、けっこうきついだからね」

「それ判るなー、わたしもリア充は爆発しろって思うもん」


「・・・なんか違うよ」

「違わないよぉ。あおいちゃんと一緒に歩いてて、時々落ち込んでるんだからねぇ」

「えーっと、ほのかちゃん。じろじろ見られるんだったら、ほのかちゃんの方が多いと思うけど」

「あおいさん、あなた、わたしを愚弄するのかしら」

「ぷっ、今日は朝から飛ばすのね。 ほのかちゃんは、かわいいから胸だけ見られるわたしとはちがうよ」

「またまたー。わたしがかわいいんだったら、あおいちゃんは絶世の美女じゃないぃ」


「あのねー、自覚がないのは、気を付けたほうがいいよ。(交際を)申し込まれたのって、何回断ってるの?」

「え? うーん。忘れちったぁ」

「ほらー。忘れるほどじゃない。それも、放課後の分を最初から断ってでしょ?わたしは、3回だけだから」

「えー。うそー。あおいちゃん、うそつきだー」


「うそじゃないから。たぶん、わたしの態度が良くないんだと思う」

「なんでぇ?」

「それは、その、男の子って、しぐさのかわいいほうが好みかなって」

「どうしてそう思うのぉ?」

「ちょっと前に気になる男の子と話したとき、無視じゃないんだけど、手ごたえがないというか、その・・・」

「ほほう、あおいさんにも春が来ましたな」

「そんなのじゃないって。励ましてもらったというか、目標ができたっていうか、そんな人」


「もしかして先生なのぉ?」

「違う違う。同じ学年だよ。めったに会うことは、ないけどね」

「ほー。そっけない態度に火が付いたんですねぇ」

「もう、言わない」

「ゴメン、ゴメン。で、その人のどこに惹かれたの?」

「わからないの。毎日、頑張ってる姿を見てたら、気になっちゃって」

「いいなあ。わたしもそういう人見つけないとぉ」


あおいちゃんの恋を応援するために詳細は聞いておかないとね。

でも、いつも凛としているあおいちゃんが、メロメロ(?)になっているように見えちゃう。

相手はきっとかっこいい人なんだろうな。

たぶん、あおいちゃんとお似合いなんだと思える。



あれ? 後ろから聞き覚えのある着信音が聞こえる。

ワルキューレだ。


振り向くと彼がいた。

神様、ありがとう。

もしかしたら、運命の人なのかも。


 = = = = =


「みついし君、去年電車で一緒だったの覚えてるぅ?」

「え、それはないよ。桃園さんくらい、かわいい子だったらなんとなく覚えてるけど」

「それって、事故で電車がすっごく混んでた時ぃ」

「あー、あったなぁ。あれに桃園さん乗ってたの?」

「乗ってましたぁ。みついし君がバンダナを手すりに乗せて、わたしがバンダナにおでこ乗せての居眠りしてたでしょ?」

「それ、別の人じゃない?」

「だって目の前だもん。見間違いなんてしないよぉ」


「あの時の女の子は確かに居眠りしてたけど、顔をぶつけてそうで危なかったから、俺がバンダナ巻いた手で手すり掴んでたら、腕の方に頭置いて起用にぐうぐう寝てたよ」

「え?」

「その子、目を覚ましたら、きょろきょろして、赤ちゃん見たり、手すり見たりしてたけど」

「手すりにバンダナ置いてなかった?」

「俺は手にバンダナ巻いてその手をクッション代わりにしたんだけど」


「その手を枕に」

「腕のほうで寝てたよ。腕まくってたから、俺の汗が顔に付いて、気持ち悪かったんじゃないかな」

「腕枕」

「そんないいもんじゃないよ。こんな腕なんだし」

鉄臣君、袖をまくって二の腕を桃園さんに見せた。

太くもなく細くもなく意外にガッチリとしている。

ただし、色が白く産毛しか生えていなかった。

見覚えがある。


その腕を見て、耳まで真っ赤になる桃園さんがいた。

鉄臣君、何が進んでいるのか、わからなかった。

いかがでしたか?


桃園さん、何を勘違いしたのでしょうか?

桃園さんの閑話は、一旦終わりです。


次話をお待ちください。

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