部活動 3-6.5
続けて投稿です。
鉄臣君、調子こいてトラブルです。
ではでは~
「じ、じゃあ、堀田さん以外は、掃除にまわってくださいよ。机と椅子は男がしますから」
「その言い方、何か引っかかるわね」
「ギクッ!」
「あー、今、女の子をバカにしたのね」
久遠寺さんが鋭い突っ込みを入れる。
「いっ」
「ジトー」
『はい』
「何?意外だわ」
「えっ、みついし君、女の子をバカにしたんですかぁ」
「そんな人とは思わなかった」
鉄臣君、会長、副会長から立て続けに口撃を受けてHPゼロだ。死ぬぞ。
「正輝君、三石君って、そういう人なの?」
「違うんだなぁ。彼には持論があって、よく誤解されるんだよ」
「ふーん。どんな持論なの?」
「単純な肉体労働は男の仕事」
「プッ、クフフ。三石君らしいかも」
「中学時代に<決めつけだ>とかで、ハブられたこともあるらしい」
「あらあら、そんなことになったの?」
リア充カップルの横で会話を聞いていた後輩ふたり。
(先輩、漢です。ボク、そういうの好きです)
(何よ、女だって、ちゃんと働けるわよ)
それぞれの思いで、精神的にボコボコにされている鉄臣君を見つめていた。
= = = = =
「とにかく、効率良く女子が掃除に回ってください。机を倉庫に収納したら、掃除に移りますから」
「三石くん、ほかのことはともかく、ちょっと気に入らないんだけど」
「早く片づけましょうよ」
「だから、手伝うって言っているんじゃない」
「だから、女子が掃除を始めてくれたら早いんですって」
「どういうことよ。みんなで作業したほうが、早いじゃない」
「違いますよ」
喪部部員と有志の生徒たちが遠巻きに生徒会メンバーのやり取りを見守っていた。
「わかりました。俺は、作業を始めます」
「じゃあ、僕達は、三石君の指示で動くよ」
「堀田さんが指示したほうがみんな動いてくれますよ」
「じゃあ、どんな指示をすればいいかな?」
「えー、そんなことできませんよ」
「いーのぉ?」
「弥刀さんまで。俺は下働きでいいですって」
「あら、このままだと紫苑さん三石君を誤解したままだけどいいの?」
「うっ。・・・いいですよ。こうしてても片付きませんし」
「じゃあ、僕らが三石君のやり方を実践してみよう。それで誤解が解けると思うよ」
「正輝君、いいアイデアね」
「先輩、ボクも先輩を手伝います」
「橘。わたしは、久遠寺先輩の方が早いと思うから」
「いいよ、じゃあ競争だね」
『鉄臣のばか』
「紫苑さん、頑張りましょう」
「みついし君の考え方をただしましょぅ」
「じゃあ、取り掛かるわよ」
「「はい!」」
= = = = =
「堀田さん、女子には掃除にかかってもらってください。男は、イスと机を片付けます」
「わかったよ」
堀田さんが集まってくれた生徒に何かを説明して作業が始まった。
「堀田さん」
「うん?何かな」
「もしかして、あっちのグループは<久遠寺さんチーム>みたいにしました?」
「ああ、よくわかったね。この方がいいと思ったからね」
「もう、そんなことして」
「三石君、頑張って。紫苑さんを見返してあげてね」
「別にいいですよ、そんなこと」
鉄臣君、口より身体を動かし始めた。
ふと気が付くと、橘ひよりがとてとてとイスを運ぶのが見えた。
「橘さん、掃除してくれるかな?」
「え?ボク、運びますよ」
「うーん、ありがたいんだけど、掃除の手が足りないみたいなんで、お願いできるかな?」
橘ひよりは背筋を伸ばし敬礼をすると元気よく言った。
「は、はい!橘ひよりは掃除に取り掛かります!」
「お、おう。よろしく頼みます」
= = = = =
体育館の撤収は、ケガもなくほぼ同時に終了した。
ただし、結果は、堀田・三石チームに軍配が上がっていた。
会長、副会長ふたり、後輩音奈は、くたくたになっていたが、会計長、後輩ひよりは、汗もかいていない。
「三石くん、負けを認めるわ」
「勝ち負けは無いですよ」
鉄臣君、久遠寺さんのフォローをする。
「でも、どうしてこの差になったの?」
「わたしも知りたいですぅ」
楠さんと桃園さんが疑問を口にした。
「それは、男女の差だよ」
「またそれ?」
「みついし君、感じ悪ぃ」
「ちょっと嫌な感じ」
「えー、だけど事実なんだけど」
鉄臣君の答えに納得いかない久遠寺さんと美少女ふたり。
「じゃあ、説明してよ」
「いいですよ。女の子って、やっぱり力が弱いんです。で、男と同じ作業をすると余裕が少ない分、急いだりとか作業量が多かったりすると負担になるんです」
「でも、それだけじゃ、こんなに差が出ないでしょ?」
「出ますよ。だって、俺の発言を誤解した女子がみんなそっちに行きましたから」
「むー」
「おかげで、俺たち側の掃除はとっかかりが遅くなった分、終わりが一緒になっちゃいましたけどね」
「おかしいじゃない。男子の数がそっちの方が多いから、掃除が遅くなっても挽回できるでしょ?」
「掃除道具に限りがあるから、掃除は短縮できないんです」
「三石君、もしかして、片付けを始める前に判ってのかい?」
「ええ、まあ。バイトでいろいろこなしてきましたから、何となくです」
いかがでしたか?
鉄臣君、労働スキルは、現場で鍛え上げられてるというエピでした。
次話をお待ちください。




