部活動 5-7.20
喪部男子部の夜は更けていきます。
ではでは~
「先輩、銃を突き付けられたとき、怖かったんですよね?」
「咄嗟によく動けたな」
「うーん、正直、よく覚えていない。気が付いたらって感じかな」
橘きゅんと渋沢君が年相応の反応をすると鉄臣君は正直に答える。
「三石君たる所以だね」
堀田さんはどこか的外れなんじゃないかと思われる言葉を残した。
鉄臣君、堀田さんの誘われトランプに加わっていた。
堀田さんは何人か集まるとトランプで遊ぶのがお気に入りだった。
= = = = =
小さいときから大人に混じって遊ぶのはトランプくらいしか選択肢がなかった。
周りに同年代の子供がいないまま幼少時代を過ごした分、普通の遊びは経験できなかった。
初等部から喪部部員だったため、一般児童たちとは本人たちでは埋めようのない見えない溝があった。
堀田児童は聡明で心優しかった。
親友と呼べる友がいたら、金髪の小僧のように宇宙を手に入れたかもしれないレベルでもあった。
中等部から部員が増えてようやく孤立感だけは和らいだ。
和らいだだけで、友人と呼べる相手はいなかった。
許嫁の話が出始めたのはそのころからだった。
そんな時、弥刀要と出会った。
彼女は中等部を受験して入学してきた。
この時、初めて出会った二人。
クラスが同じになった以外接点はなかった。
正確に言うと入学と同時に弥刀要が喪部に入部することになった。
堀田少年は新入部員の眼鏡少女に興味を持った。
異性としてではなく、喪部部員たる少女に対してだった。
ただ土足で踏み込むような詮索はしなかった。
やがて自分は許嫁と結婚することになる。
女性との噂は無いに越したことはない。
相手に迷惑がかかるかもしれないし、迷惑はかけたくなかった。
そして、女子を遠ざける態度が原因で同性を好むという風評被害を被る。
堀田少年には、耐えがたかった。
ふたりの間に何も起きなかった。
堀田少年はそのまま18歳の誕生日を迎えるのだと漠然と考えていた。
しかしその漠然とした考えは突如覆される。
勝負の中学3年生新学期、眼鏡少女は告白する。
「正輝君、好きです。付き合ってください」
= = = = =
「堀田、お風呂お先ぃ」
桧山従兄弟が大広間に戻ってきた。
さっぱりしてして戻ってきた。
「お帰りぃ。・・・・髪切った?」
堀田さんはわずかな違いに気が付いた。
「おう、メイドさんたち散髪してくれてさ、さっぱりした」
桧山従兄の髪は整えられイケメン度がアップしていた。
桧山従弟のほうはもともと短髪だったので本人以外は違いが判らなかった。
「じゃあ、次は僕たちで行ってくるよ」
「俺も髪切ってもらおうかなっと」
堀田さんと渋沢君がお風呂へと大広間から出て行った。
= = = = =
堀田さんと同期の渋沢君が居なくなると鉄臣君はやることが無くなった。
桧山従兄弟をほとんど知らないので共通の話題があるかどうかわからなかった。
それ以前に一緒に居て良いのかさえ不安に思えた。
(うーん、イケメンふたりに話しかける勇気は・・・・うん、ナイナイ)
鉄臣君以外はスマホをチェックし始める。
鉄臣君も特にやることがないのでデイバッグから文庫本を取り出し読み始めた。
数ページ読み進んだところで空気の揺れのようなもの感じたのでそちらを見た。
「ぅわっ!」
間近に橘きゅんが居たのに気づいていなかったので驚きで声が出してしまった。
「せんぱい、何読んでいるんですか?」
橘きゅんは鉄臣君の腕に任せるように顔を置いて文庫本を覗き込んだ。
橘きゅんの後頭部は小さく見えてサラサラの髪が似合っていた。
鉄臣君、お風呂に入る前にもかかわらずいい匂いがしてくるので同性が間違いじゃないかと考える。
「トム・クランシーだよ。何作かが映画化されてる中の一つ」
「面白いんですか?」
鉄臣君の答えに振り返って小首をかしげる上目遣いの橘きゅん。
鉄臣君、思わず抱きしめたくなるのを我慢する。それは正しいぞ、間違っちゃだめだぞ。
「今そこにある危機って、CIAの主人公が麻薬組織に全滅させられそうになってる兵士を助けに行くって感じかな」
「面白そう、ふーん」
身を起こして鉄臣君に並びなおす橘きゅん。
鉄臣君、その横顔に見とれてしまう。
スベスベの頬、しゅっとした鼻筋、付けまつ毛のようなまつ毛。
『おとこの娘』
鉄臣君、うっかりつぶやいてしまった。
「せんぱーい。ひどいですぅ」
橘きゅん、鉄臣君に怒りをぶつける。
ポカポカと絶対痛くないパンチ、まるで子猫の猫パンチ。
傍から見たらカップルに見えたかかもしれない。
= = = = =
桧山従弟は鉄臣君に話しかけようか迷っていた。
水平学園の生徒会庶務で現役喪部部員の代表であり、やはり堀田さんの信任もかなりのものだと想像に難くない。
(桧山従兄も平部員だから、同学年の堀田さんたちとしか話したことがないって言ってたもんな)
そんな人が他校の平部員が話かけたところで相手にするだろうか?
合宿前と比べて距離が全く近づいていない。
全く相手にされないとき、どんな顔をしたらいいのかさえ思いつかず不安になっていた。
大広間に男で4人しかいない今が会話できる絶好のチャンスなのだ。
幸い橘君とは次期生徒会役員と決まる前から交流がある。
桧山従弟にとって鉄臣君との橋渡し役になってくれるかもしれない。
「三石さん交際相手を教えてくれませんか?」
「はいぃ?」
桧山従弟、いきなり脱線した。
= = = = =
「俺はリア充じゃないから、相手なんかいないよぉ」
鉄臣君、またも事実を告げてうなだれる。
「別に生徒会だからって部員じゃないと付き合えないって規則はないんだろ?」
桧山従兄が重ねてくる。
「それは、聞いたことないですけど、スタートから厳しいですよ。はっきり言えば俺貧乏だし」
鉄臣君、置かれた環境に負けそうになっている自分に気がついていた。
夏休みに入ってから、太陽の下に出ると揺れるような感覚になる頻度が増えてきていた。
「そうか、疑っているわけじゃないんだけど、生徒会の誰とも付き合っていないんだな」
「はい。そもそもみんな彼氏さんいるんじゃないですか?」
「そ、そうなのか」
桧山従兄が質問を繰り返してくる。
鉄臣君、つい思っていたことを口にしてしまった。
それを聞いた桧山従兄の反応は何か知っているようだった。
(桧山先輩、会長以外とも・・・・これって三又!マジリア充なんや!!)
鉄臣君、また根拠のない妄想に取りつかれた。
いかがでしたか?
橘きゅんが甘えん坊になってきました。




