部活動 5-7.17
ユートさんと竹腰さんが席を外したところから
話は続きます。
ではでは~
「堀田さん、俺どうしたらいいんですか?」
「別に変ったことはしなくていいと思うけど?」
「でも、歓迎会でこの場所に座る必要はないと思うんですけど」
「エスコートのバイトは、まだ続いてるよ」
鉄臣君、ユートさんと竹腰さんが席を離れている間に疑問をぶつけてこの場から抜け出したかった。
すると<帰るまでが遠足>のようなことで返されてしまった。
「みんなの考えは、違うみたいです」
鉄臣君、居心地が悪いので感じたこと正直に言った。
「どうしてだい?」
不思議そうに聞き返す堀田さん。
「みんな、ソッポ向くんです。怒ってるみたいなんですよ。ボクの席おかしいと思うんです」
「それは気のせいじゃない?」
鉄臣君、大きな座卓の反対側に座る生徒会女子の面々の様子を説明すると、サラッと流すのは弥刀さん。
なぜか顔を逸らし肩が小刻みに震える堀田さんには気付かなかった。
鉄臣君、会話が途切れ、正面を見る。
女子たちの視線を外される。
やはり久遠寺さん、楠木さんはソッポを向いたような気がする。
その時、桃園さんは少し違った。
鉄臣君、桃園さんの視線の先にクリスさんが立っていて、何かの合図をしたのが見えた。
「ほのかちゃーん」
ほのかママの登場。
「マ、ママ、みんな見てるから」
ほのかママは大広間に入ってくるなり、桃園さんを抱きしめ彼女の頬にキスの雨を降らせた。
母親の行為はうれしいやら恥ずかしいやらで、桃園さんは真っ赤になっていた。
いや、吸われた跡が充血しているのも含まれているに違いない。
愛娘の無事を歓び、判りやすく表現した母は、はあはあと呼吸を整えていた。
桃園のメイドたちは、揃って涙を拭っていた。
「ほのかちゃん、一緒に」
ほのかママ、桃園さんを連れて下座の方に移動して、畳の上に正座した。
桃園さんも並んで正座した。
「皆さん、当家の事情でご迷惑をおかけしましたこと、「当主に代わり深くお詫び申し上げます」」
ふたりは、土下座で謝った。
メイドたちもそれに倣って、深くお辞儀をする。
重苦しい空気になった。
確かに暗殺未遂の巻き添えで危険に晒された。
それは実行犯の手口が無差別だったということを憎むべき。
しかし、標的にされた桃園家が原因なので全く関係がない訳ではなかった。
気まずい雰囲気に誰も何も言えなかった。
「あのー」
鉄臣君、控えめに手を挙げた。
ほのかママが身を起こし、手はついたまま鉄臣君を見る。
「何でしょう?」
「誰も気にしていないんじゃないかと思うので、そろそろ歓迎会を再開とか」
鉄臣君、周りの目を気にしながら、提案する。
「けじめというものがあります」
鉄臣君、ほのかママの威圧に気圧される。
「クリスさんとサフラさんのおかげで誰も危なくなかったですし」
「ブッ!」
鉄臣君、凌げた2度の局面を思い出して、言った。
その言葉のすぐ後に変な音が続く。
= = = = =
「サフラ、三石さんに謝罪しなさい」
「ごめんなさい」
「いえいえ、そんなの全然いいですから、気にしませんから」
鉄臣君、クリスさんに首を掴まれネコのようにぶら下がったサフラさんから謝罪されたが、恐縮していた。
鉄臣君の予想外の言葉がサフラさんのツボに入ってしまい、思わず吹き出したのだった。
馬鹿にしたわけではなく、一番の被害者が自覚していないことがストライク。
クリスさんにしてみても、言葉の直後は開いた口がふさがらない状態に陥った。
彼は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こしかねない状況を経験した。
咄嗟のこととはいえ、直後に恐怖で泣き出しているから、その危険度は理解していたはず。
それなのに毛の先ほども気にせず歓迎会再開の提案。
(サフラが吹き出したのも無理はない)
場の雰囲気の方が、ストレスとして感じていると思われる。
「奥様、差し出がましいと心得て申し上げます。三石さんのマーリンベルク様へのお気遣いをお汲みなさいますのがよろしいかと存じます」
「クリスさん」
クリスさんの言葉にほのかママが一考する。
「あ、あの、そんなおおげなことは、考えていませんから」
鉄臣君、誇張されているようで、誤解を解いておこうと焦った。
「そうですね。マーリンベルク様の歓迎会ですものね。・・・・皆さん、お詫びについては、後日改めてお聞き収めください」
言い終わると軽く頭を下げ立ち上がるほのかママ。
「さあさあ、ママさんもこっちおいで」
アヤメさんがほのかママに声を掛けたので歓迎会再開。
桃園さんも元の席次に戻ってきた。
戻りのバスでは、鉄臣君の隣にユートさんが座ったため、彼がどう思っているか確かめられなかったために不安を募らせていた。
今のやり取りで心が軽くなった気がしていた。
こうなると侍女隊の報告を確かめたくなってきた。
この2日間で一番衝撃のもたらした報告。
「カナミ君、わたしぃ確認したいことがあるんだけどぉ」
座卓にずいっと乗り出してくる桃園さん。
「なんでしょう?」
鉄臣君、頭の中で警報が鳴っている気がした。
「あのねぇ、・・・・ユートさんとキスしたの?」
「あ、ああ、アレですか」
鉄臣君、悪手だった。
すぐに答えてしまった。
桃園さん、楠木さん、久遠寺さんの視線が刺さる。
めった刺しである。
「べ、別に変な気を起こしたとかじゃないんですよ。ユートさんにしてみれば、ただの挨拶ですよ。映画とかで見かけるし、外国人だし」
鉄臣君、自分のたどり着いた結論を説明する。
目の前の3人の顔から表情が消えた。
消えたというより、彼の中でどう表現したらいいかわからない顔だった。
瞳のハイライトは休業してしまった。
「マサキ、どうしたんだい?」
「今、三石君が君とキスをしたかって話題になっていて」
「三石君が外国人のただの挨拶だって説明したところよ」
戻ってきたユートさんに状況を説明するリア充カップル。
「ちょ、ちょっとユーちゃん。それホントなの!?」
「え! い、いや。カナミぃ、内緒だって言ったのにぃ」
狼狽える竹腰さんにしどろもどろで答えるユートさん。
鉄臣君、抗議されてしまった。
「そうでした、すみません。うっかりしていました」
鉄臣君、ことの重大さに気付いていなかった。
目の前のコーラを一口飲んだ。
「仕方ないなあ」
なぜか自慢げに見えなくもないユートさんだった。
いかがでしたか?
ユートさんも仲間入り?したみたいです。
次話をお待ちください。




