部活動 5-7.10
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
合宿ももうすぐ終わります。
ではでは~
「じゃあ、帰港するまで何をしようか?」
堀田さんが、だし巻きを齧って、提案を促す。
「ボクはノープランです」
鉄臣君、聞かれる前に逃げた。
昨日から、気が休まった気がしない。
空調の効いた客室で寝ていたいくらいだったが、女子やメイドさん、おねえさんの水着姿も見ないと損したような気がする。
デジカメで撮りたいくらいだが、さすがにそれは自殺行為だった。
「カナミ、君は僕のエスコルテなんだから、そのことを忘れて欲しくないな」
「エスコルテ?」
鉄臣君、固有名詞がピンと来なかった。
「あーと、エスコートだったね」
ユートさん、思い出して言い直す。
「はい。バイトが最優先です」
鉄臣君、迷いがなくなった。
バイトに専念するのが一番と思った。
ユートさん、少し赤くなる。
「じゃ、じゃあ。僕、コンピューターを選んだけど詳しくないから、教えてもらえるかな?」
「はい、いいですよ。電力を節約する設定とかなら、お安い御用です」
「う、うん。ありがとう」
鉄臣君の承諾に微笑み返すユートさん。
「それは、ちょっとダメかな」
ふたりの会話にダメ出しする楠木さん。
「そうね。それだと合宿の主旨から逸れるわね」
久遠寺さんが追い打ちをかける。
「せっかくだしぃ。みんな一緒じゃないとぉ」
桃園さんがさらっとフォローする。
「おねえちゃんたちもいるから、ヒエンも一緒よ」
竹腰さんがさりげなくユートさんの呼び方を変えていた。
「マヤ、【ヒエン】って呼んでいいのは、まだカナミだけさ」
ユートさんは見逃さなかった。
「チッ」
舌打ちする竹腰さん。
仲のいいふたりが険悪なムードになる。
他の喪部部員は、触らぬ神に祟りなし状態。
鉄臣君、動く。
「あ、あのユートライヒェンさん。」
「何?」
ユートさんは、敢えて名前を呼んだ鉄臣君を睨む。
「竹腰さんとは、ずっと前から仲がいいんですよね?」
「ま、まあね」
「どうして、竹腰さんは【ユートライヒェン】と呼ぶんですか?」
鉄臣君、竹腰さんと同じ呼び方と控えめに強調する。
「どうだったかなぁ」
ユートさんは思い出そうとする。
「ほらぁ、初めて会ったとき、わたしが【ユートライヒ】って呼んじゃったら、女の子だって泣き出したのが最初だったと思う」
竹腰さん、思い出して懐かしそうにする。
「あー、思い出したよ。僕も日本語が話せなくて、いじわるされたって思い込んでいたんだよな」
記憶が鮮明になったユートさん。
「ひどいよねぇ。初対面でいじわるなんかしないのに」
クツクツと笑う竹腰さん。
「だって、マヤの家系の話は、両親から聞いていたから、ちょっと怖かったんだよ」
「マーリンベルク様から、【ユートライヒェンだよ】って聞いて、そう呼ぶと笑ってくれたんだよね」
「その時、きっと子供心にホッとしたんだと思う」
「それからかな。もう他の呼び方をしようと思わなかったのよ」
子供のころを思い出し、すっかり元通りのふたり。
「マヤ、マヤも【ヒエン】って呼んでくれ」
ユートさん、照れくさそうにしている。
「いいよぉ。あー、でも違う呼び方かな」
遠慮をした後、ちょっと考える竹腰さん。
「「・・・、ユーちゃん!」」
ふたりの声が揃う。
手を合わせて、キャッキャとはしゃぐふたり。
鉄臣君、ホッと一安心。よかったな。手柄だぞ。
= = = = =
午後のプールは戦場だった。
遊び好きのメイドさん赤毛のケイティさんが、大量の水鉄砲を持ってきていた。
これには、クリスさんが呆れていたが、ケイティさん曰く【桃園メイドが5人もいれば大船に乗ったも同じ】とジョークを飛ばしていた。
身体能力を鑑みて、喪部部員vs桃園メイドズで勝負している。
ルールは背中に水を掛けられたら脱落。
要するに水を掛けあって遊ぶだけ。
背中を見せても飛距離が短いので近くに寄らないと届かない。
脱落第1号は桃園さん。
「もう、わざとですねぇ」
「作戦です、マム。こちらの戦力が落ちないうちにお嬢様には退場していただかねば危ういですから」
クリスさんにそういわせる桃園さんは、実は手ごわいらしかった。
メイド5人の動きにスキはなかった。
プールサイドや水の中を1つの生き物のように連携して敵の背後に回り込む。
次から次に狩られていく部員。
鉄臣君、プールに首まで浸かって逃げていた。姑息だぞ。
「あー、三石、ズルいぞぉ」
目ざとく桧山先輩に見つかった。
(先輩、わざわざ言わないでくださいよぉ)
桧山先輩は、いいところを見せようと果敢にも挑んだが、十字砲火に晒されあっけなく返り討ちとなっていた。
その声を聴いて、メイドたちはおもむろにプールに浸かってきた。
「鉄臣クン、逃げてー」
楠木さんの声も空しく、プールの中央に追い込まれる鉄臣君。
鉄臣君、いよいよ立てなくなった。
その場で立ち上がれば、確実に脱落する。
桃園メイドが手の届くところまで詰めてきた。
「さ、三石さん。潔くお立ちなさい」
クリスさんが優しく降伏勧告をする。
鉄臣君、その迫力にゾクリと背中に冷たいものではなかった。
背後から胸にしなやかな腕が絡みつき、背中には、勘違いではない温かい柔らかいものの感触があった。
「ひゃーーーーーーーー!!!」
鉄臣君、変な悲鳴で立ち上がった。
気配を消したサフラさん抱きついていた。
素早くサフラさんが離れる。
次の瞬間、複数の水流が背中に降り注いだ。
と思ったのは、早計だった。
少し遅れて四方八方から、水流が降り注ぐという集中攻撃を受けていた。
なぜか敵味方関係なく、桃園さんまで混ざって鉄臣君を撃っていた。
「ガボガボガボっ、げへっ、ごほっ、がはっ」
鉄臣君、悲鳴で開いた口に容赦なく降り注いだ水で咳込んだ。
いかがでしたか?
また一波乱起きます。
次話をお待ちください。




