部活動 5-6.34
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
鉄臣君、ユートさんとふたりきりの夜になるのでしょうか?
ではでは~
「かなみ君のエッチ」
「ボ、ボクの提案じゃないよね。OKもしてないよね」
鉄臣君、スイートルームに残っていた桃園さんに罵声を浴びせられた。
メイドたちも冷ややかな視線を照射してくる。
「ホノカ。カナミに酷い言い方はしないで欲しいな。護衛は【桃園】に頼んだけど、カナミは僕のエスコートなんだから」
「う、わたしは、かなみ君の友達だもん。友達が間違えそうなときは、止めなきゃだめだもん」
「じゃあ、心配ないよ。カナミは【間違い】は、しないから。ね、カナミ」
ユートさんは、鉄臣君の右手と両手と繋ぐと胸元に引き寄せ、にっこりと微笑み小首をかしげてみせた。
「ダメー! えろいし君、えろいし君、えろえろいし君!」
桃園さんは、鉄臣君に顔を擦りつけるように抱き着いた。
「ホノカ、邪魔しないでくれるかな。これは、僕たちの個人的なことなんだから」
「ダメー、どうしてもダメー」
ふたりとも譲らない。
「あのー、ユートさん。桃園さんのいう通りだと思うのですが」
「な、何をいきなり」
「いきなりって。知り合ったばかりだし、一緒に朝までなんて不自然ですよ。変な噂になったらユートさんの汚点になりますよ」
「いいよ。むしろ、両親を安心させられる」
「え゛!」
鉄臣君、予想外の言葉に言葉が続かなかった。
「恥ずかしいなぁ。実はね、初体験の相手を発表することがあるんだよ」
「あのー、ボクは子供なので、そういうプレイは、ちょっと遠慮したいなと」
「もう、違うよ。宗教的というか、最初の男性が夫であることを宣言することで、貞淑な妻であると証明する習わしの名残なんだよ」
「はぁ。で、それで、ご両親がどうして安心するんですか?」
「僕が護衛をお願いしてるのは、初めてが見ず知らず相手だったら、それこそ家名に傷がつく」
「確かに世間体は良くないですね」
鉄臣君、ユートさんもなかなか大変なんだと同情した。
「僕や両親は笑いものだよ。僕はまだいい。ジークは、僕の弟はまだ幼いのに次期当主として、恥を背負うことになるのさ」
「ユートさん、彼氏とかいるんでしょう?その人に頼んでいなかったんですか?」
「カナミ、僕がそんなに浮ついた女だと思ってるんだね」
鉄臣君、殺気をはらんだ視線で睨まれる。
「ボクにとっては、ユートさんに彼氏がいない方が、びっくりですよ」
「居ないんだから仕方ないだろ。何なら、カナミが、か、彼氏になってくれる?」
モジモジしながら、とんでもないことを言い出すユートさん。
「ユートさん、ときどき日本語がおかしいですよ」
「ど、どこかおかしい?」
「彼氏と言うのは、交際相手、恋愛の相手のことですからね。異性の知り合いとかのことじゃないですからね」
「な!」
鉄臣君、得意顔で言い放つとユートさんは唖然とした。
= = = = =
ユートさんの部屋は、雑魚寝状態だった。
時間は少し遡る。
「僕がカナミと一晩過ごせば、安心だよ」
「どうしてそうなるんですか?」
「だって、男女が一晩一緒に寝たら、何かあったと思うじゃないか」
「ま、まあ、【一般論】は、そうかもしれませんね」
「だったら、僕は、その、カナミを初めての人にして、発表できるんだよ」
鉄臣君、それが全く納得できなかった。
嘘で済ませられるなら、ほかの喪部部員の方が相応しいと思った。
それを口にする。
「じゃあ、ほかの部員でもいいでしょ。堀田さんなら、弥刀さんも協力してくれますよ」
「うーーーー」
ユートさんが唸り始めた。
「先輩にかっこいい人がいるじゃないですか」
「うーーーー、うーーーー」
ユートさんの唸り声が一層強くなった。
「えーと。どうして唸ってるんですか?」
「僕は、尻軽じゃないんだよ!」
「一目ぼれとか、ときめいたとかでいいんじゃないですか?」
「カナミ!君は僕じゃ不満なんだね。僕の初めての人になるのが嫌なんだね」
「えーーー、そんなつもりじゃないのを判ってますよね」
「ふん!」
ユートさんが予想以上に拗ねた。
「ユートさんの方こそ、ボクに拘る理由がわかりませんよ」
「な、僕の危機を救ってくれたヘルト、英雄がす、す、す、す、す」
「ヘルト、エイユーガス、スス?」
「もういい!」
鉄臣君、ドイツ語かなっと思ったら、ユートさんに切れられた。
白い肌が赤くなったのか、ピンク色のユートさん。
桃園さんが、スマホを取り出し、メールを打ち始めたらしい。
しばらくするとドアを叩く音がする。
≪ドンドンドンドン≫
≪あ、あの困ります≫
≪いいのよ!わたしはユートライヒェンの友達よ。竹腰の人間よ≫
桃園さんがドアを開くと竹腰さん、久遠寺さん、楠木さんまで入ってきた。
「もーーー、ホノカ。みんなを呼んだね。」
「呼びましたぁー。ユートさんの純潔を守るために呼びましたぁー」
「うーーーー」
メイドさんが毛布やクッションを用意してきて、全員で寝ることになった。
鉄臣君、サフラさんが寝袋を持ってきてくれたので受け取った。
「だーかーらー、僕がいいって言っているんだし、みんなは心配しなくていいよ」
「わたしは心配なんかしていないわよ。鉄臣さんだったら、抱きついて眠っても何もないはずだもん」
「わ、わたしは、何かあっても仕方ないから、許しちゃう」
「あおいちゃん!えろいし君を甘やかしちゃダメだよ。そんなことしたら、みんなし、し、し、し」
「鉄臣くんのセクハラは、会長として生徒会の責任問題だし、し、仕方ないわね。わ、わたしが生贄になるしかないわね」
「「「「紫苑!」」」」
女子たちはギャーギャーとうるさかった。
鉄臣君、午前の水泳や手榴弾の心労が重なって、部屋の隅ですでに就寝していた。
「アレ、カナミは?」
「部屋からは出ていないはずですぅ」
「お嬢様、三石さんは、あちらで就寝なさいました」
クリスさんの指さす先、スイートルームの奥の部屋の隅でクークーと寝息を立てていた。
「もう、みんなを置いて、先に寝ちゃうなんて」
「仕方ないかな。今日は、大変だったもん」
少し不満の竹腰さんを宥める楠木さん。
「わたしたちも寝ましょう」
久遠寺さんは寝袋を抱えて、当然のように奥の部屋に入っていく。
「シオン、ずるい。僕の寝室なんだよ」
ユートさんの反応は、早かった。
結局、鉄臣君の周りで各々眠ることにした。
一緒に眠るというより、お互いを監視しているように見えなくもなかった。
鉄臣君、何も知らず眠っていたが、その寝顔を本人が起きるまで、メイドが休憩時間に眺めていた。
いかがでしたか?
鉄臣君だけ床に直に寝ています。
桃園さんは簡易ベッド、他は、マットやらを持ち込んでいます。
クルーズ船の空調は、快適温度設定なので、特に夏だからということはありません。
次話をお待ちください。




