部活動 5-6.31
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
落ち着きを取り戻しつつあります。
ではでは~
「チーフとサフラ、どうしたの?」
「さ、さあ。あのふたりが、あんなことするなんて」
「何かの作戦なの?」
侍女隊始まって以来の大珍事。
メイドたちの動揺は、小さいものではなかった。
黒服たちは、何事もないように警護の任に就いてはいたが、その心中は冷静ではなかった。
チーフの慈愛に籠った瞳、血を分けた弟に巡り合ったかのように温かく包み込む仕草。
今まで見ることのできなかった【桃園】メイド長を務める女性の母性ともいえる一面だった。
そればかりか、サフラの態度。
下手に近寄ろうものなら、もれなく痛めに合う羽目になる娘。
彼女が男嫌いなのだと知っているだけに今の姿には目を疑った。
= = = = =
「あらあら、みんなぁ、合宿を楽しまないとぉ」
「要、もしかして」
「ぅいーえ、酔ってませんよー」
「あー、やっぱりー。お、大奥様ですね」
弥刀さんが上機嫌で突撃してきた。
慌てる堀田さんはすぐに仕掛け人を見破った。
「オレンジジュースだよ。確か、ドライバーとかいう変わった名前だったかねぇ」
「もう、それって、カクテルじゃないんですか?」
「ありゃ、仕方ないねえ。じゃあ、今のうちに真綾を口説いて懇ろになったら、婚約さね」
「ふーーー。僕は、まだ馬に蹴られたくないですよ」
「ちょいとお待ち。真綾、真綾。まさ坊とちょっと子づくりしておいで」
アヤメさんは、見た目より酔っていたみたいだった。
「お姐さん、すごいこと言ったなぁ」
鉄臣君、麦茶を飲みながら、傍観していた。
「ほらぁ、真綾、チャンスだよぉ」
「大奥様! 酔ってますよね。ね。三石君がいるんですよ」
「ダメだよぉ。あの子はぁ、少し焦らせないとぉ」
アヤメさんの勢いは止まらない。
鉄臣君、堀田さんがなぜ自分を引き合いに出したが理解できなかった。
「ちょ、お曾祖母様! みんなの前でそんなこと言わないでよ」
「お、そうかい。じゃあ、ちゃんとできるんだね?」
「な、何のことですか?」
「そりゃ、こづ「きゃーーー、きゃーーー」・・うるさいねぇ。フフフ、真綾もまだまだ子供さね」
「いいもん、子供だもん」
竹腰さんはアヤメさんには敵わない。
基本的に甘えん坊なのだ。
「かな坊、かな坊」
「あー、はいはい」
「はいは、一回」
「はい」
鉄臣君、アヤメさんに突然呼ばれたが、なんとなく予想していた通り。最近、わかってきたな。
「お前さんによーーーく言っておく。真綾を悲しませたら、ただじゃ置かないからね」
「あ、はい。そりゃ、肝に銘じてます」
「それともう一つ。今、着物を大急ぎで洗ってもらってるから、明日、着るんだよ」
「えーーー。ボクが着るんですかぁ?」
「なんだい。ウチの人のが気に入らないのかい?ふぇーーーー、偉くなったもんだ」
「いえいえ、もったいないですよ」
「何言ってんだい。手前ぇの魂投げだして、人を助けるなんざ、見込んだ通りだよ。着物くらい安すぎて涙が出るよ」
「あれは、腰抜かしただけで、だから、漏らしましたし」
「かな坊の嘘は、すぐわかるさね、アハハハ」
アヤメさんが上機嫌なのは、どうやら鉄臣君のおかげで皆が無事だったからのようだ。
= = = = =
「ねぇー、ましゃきくーん。だっこー」
「要、みんな見てるから」
「だーめぇ。正輝君、浮気するつもりでしょー」
「もう、しょうがないなぁ。僕は要といるから、僕なんだよ」
人目を憚らず、ガチで抱き合いリア充全開だった。
鉄臣君、こんなリア充にはなりたくないとやせ我慢するのだった。
= = = = =
「く、久遠寺さん。浴衣、よく似合ってるよ」
「ありがとうございます。桧山先輩」
「俺も浴衣持って来ればよかった」
「残念ですね。船で浴衣って、面白い経験ですよ」
「うーん、残念だ」
「・・・」
「・・・どうかしました?先輩」
「明日も泳げるかなって思って」
「帰港は、夕方ですから、泳げますよ?」
「あ、ああ、そうだね」
桧山先輩と久遠寺さんの会話は、あっさりしていた。
= = = = =
「せんぱーい」
「橘さん、どこ行ってたの?」
鉄臣君、席の後ろに駆け寄ってきた橘きゅんに声をかけた。
「浴衣が着崩れちゃったんで直してました、戻ってきたら、身元確認やボディチェックで捕まったんですよ。もう」
「そりゃ、大変だったね。でも、まだ危ないから、仕方ないと思う」
鉄臣君、少し不機嫌な橘きゅんを宥めた。
「そうだ。先輩、爆弾を跳ね返したんですよね。さすがです。漢です。かっこいいです」
鉄臣君の肩に手を添えて、じゃれつくように話す橘きゅん。
「そうなってるの? 違うよ。爆弾にビビって、漏らしただけだから」
「えー、そうなんですかぁ」
「がっかりだろ。俺は、男らしくなんかないよ。すみません。先輩失格だから」
鉄臣君、誤解を解くついでに過度の尊敬を削ぎ落としておこうとした。
橘きゅんの尊敬は勿体ないくらいで、実際は負担の方が大きく感じていた。
「せんぱいは嘘が下手です。まっすぐだからですね」
「え、何のこと?」
「先輩が着替えている間に堀田さんから聞いてるんです」
「それ、嘘だよ。爆弾跳ね返してなんかないから」
「そうですよ。身体で破片を食い止めようとしたんですよね?」
橘きゅんは、状況を正しく聞いていた。
「違うって、腰を抜かしただけだから。たまたまだから」
「先輩、どうして、そんなに謙遜するんですか?すごいのに」
「えー、それは、漏らすくらいビビってるから、凄くとも偉くもないよ」
「ボクだったら、何が起きたのか、わからないまま立ってます。そのまま死んじゃいますよね」
鉄臣君、複雑な表情の橘きゅんを見てしまった。
「ヒヨリ、カナミは僕のエスコート中だから、邪魔しないでくれないか」
「ユートさん、そういう言い方は、控えていただけませんか。心配かけたボクが悪いので、すみません」
「う、カナミ、君は、僕が嫌いなのかい?」
「え! そんなこと言ってませんよ」
鉄臣君、少し不機嫌そうだったユートさんが一言で一転したのに少し驚いた。
「あ、あの、ユートさん、日本語がうまく伝わらなかったかもしれません。橘さんも喪部部員ですから、エスコートの範囲だと思います」
「だから、なんだよ」
鉄臣君、拗ねるユートさんに反発される。
「えーと、拗ねてます?」
「もう!いいよ。カナミはヒヨリと仲良くしてればいいじゃないか。男同士でさ!」
「ええーーー、どうしてそうなるんですかぁ」
鉄臣君、どうして今の状況になったのか、理解が追い付かなかった。
いかがでしたか?
なぜかユートさんが不機嫌になってしまいました。
次話をお待ちください。




