部活動 2-2.2
さあ、これからのお話は急展開です。
鉄臣君の勘違いだけでは済まなくなります。
彼の運命はどうなるのでしょうか?
このお話では、ひとりの性癖が判っちゃうかもしれません。
判った方は、ご連絡ください。感謝2倍差し上げます。
では、ここまでお読みいただきありがとうございます。
ではでは~
鉄臣君、部屋に入る。ちょっと違和感。
「スンスンスン、なんかいい匂いがするけど」
ベッドの上のシャツを拾い上げて匂いを確かめる。
「うーん、シャツじゃないかぁ。匂いの洗剤とかかと思ったけど」
周りを見渡すとシーツに目が留まる。
「シーツ、くしゃくしゃになってる?朝起きたとき、もうちょっとパリッとしてたような気がするけど」
「おっと、みんなを待たせたら顰蹙モノだな」
借りてるTシャツを脱いで自分のシャツに着替えて急いで部屋を出ていく。
鉄臣君、部屋のクローゼットが少し開いていたことには気づかなかった。少年探偵が居なくてよかったな。
リビングに行くと誰もいなかった。
「あれ?みんなはどこ。もしかして、おいて行かれた!!持ち上げて落とされたの?」
(うー、キツイなー。また少し眼が熱くなってきたよ。折れそうだから誰か居てよー)
「か、鉄臣」
「楠木さん、よかったー。おいて行かれたかと思ったよー」
「そ、そんなことは絶対しない、わよ」
やや上気気味と見えなくもない楠木さんが立っていた。まだ部屋着のままだった。
「ありがとう。それから、下の名前を呼び捨てしないでくださいよー。なんか変な誤解をされてたら、ご迷惑ですしー」
「変な誤解?」
「ほら、堀田さんが弥刀さんを下の名前で呼んでるでしょ?あれって親密感ありありでしょ。俺はただの雑用係だし、パンピーだから、俺なんかが親密だと誤解されちゃったら、みんなの汚点って、・・・あのう、楠木さん?どうしました?」
言葉の途中から楠木さんは俯いて動かなくなった。
「・・・・・・・・・・か・・・ら」
「?」
「呼ばれる・・の・が・・・・嫌・・だ・・か・ら?」
弱々しい絞り出すような声だった。
「え、え、え?楠木さん、どうしたの?な、泣いてるの?ちょ、どうして?」
彼女は言葉を返さず、部屋の方に駆けて行った。バンッと強く閉じられるドアの音がした。
「ボク、なんか悪いこと言ったかなぁ」
「鉄臣君、あおいちゃんにひどいこと言ったの?」
入れ替わりに桃園さんが入ってきた。
「あ、へっ?桃園さん、別にひどいことは言っていないけど」
「嘘、あおいちゃん泣いてたんだよ!」
「い、いや、だから、何も言ってないですって」
「嘘!じゃあ、なんて言ったの!」
(桃園さん、マジで怒ってる。えー、でもひどいことなんか言ってないもんなぁ)
「えーとっ、ボクとかが親密だって誤解されたら汚点になるから、下の名前で呼ばないでくださいって」
「!!!」
(えっ!何そのリアクション。両手を合わせて鼻と口を覆うって。信じられないって顔してる?どうして?どうして?ボクが思い上がり過ぎてて信じられない?・・・・あー、そうか。そうだよ、やっとわかった。奴隷や召使いを呼び捨てする感覚だぁ。ボク甘かったなぁ、みんなと、みなさんとの<繋がり>を同格だと勘違いしたのが間違いだったんだ。でも、いくら呆れたとか気持ち悪いからって泣かなくてもいいじゃんかよ、超エリート、ひどすぎるよ)
「すみませんでした。お好きにお呼びください。よろしくお願いいたします。楠木さんには今、謝ってまいります」
「鉄臣・・・」
「・・・はい、なんでしょう?」
(あー、みじめだ、調子に乗り過ぎたー。もっと慎重にすべきだったんだ。何とか取り戻さないと人生ダメになるー)
「なんでもない」
「では、楠木さんに謝ってきます。失礼します」
鉄臣君、廊下でほかの3人とすれ違う時固まった。嫌味にならないように振る舞わないと顰蹙モノだ。
別行動が取れない以上、最善の行動をしないと学園に居られなくなる。そう思うと動けなくなった。
やや俯き加減に視線を逸らして、差し障りの無い体勢をとった。
後ろから「うっ、うっ」と小さな嗚咽が聞こえてきた。
鉄臣君を置いて、3人は足早にリビングに向かう。
(とにかく楠木さんに謝っておかないとな、もう手遅れかな。もういいや。やっぱ異世界はムリ)
楠木さんの部屋の前、ノックする。
「楠木さん、楠木さん、さっきはすみませんでした。お好きに呼んでください。お気を悪くさせてしまい申し訳ございませんでした。反省しております。身をわきまえてまいりますので、どうか許してください」
(おー、ボク謝罪の言葉がスラスラ出てくるなぁ。なんか惨めなスキルは高いかも。反省しているのが伝わるといいな)
「鉄臣」
(この声は会長)
「あなたはひどいことを平気で言うのね」
(あー、やっぱり。でも、奴隷扱いは嫌だよ。自殺するまで逃げられないんだろうな。死んだあとは悪者扱いでさ)
「ううっ」
鉄臣君、無意識に泣いていた。
みじめで、どうにもならなくて、悔しくて。
「えっ、ちょっと。どうしてあなたが泣くの?」
「すみません、すみません。反省しています。見逃してください。お金とかはムリです。半殺しは我慢します。学校は卒業させてください。お願いします。お願いします」
鉄臣君、言葉の最後には土下座までしていた。
予想外のことでさすがの生徒会長も呆然と立っていた。
「鉄臣君」
部屋の扉が開いて楠木さんがいた。
泣きながら小さくなっている鉄臣君を見下ろす楠木さん。
小さなため息をもらすと、しゃがんで、泣き震えている背中に顔を擦りつけた。
「ごめんなさい。もう泣かないで。わたしの勘違いで悪者になっちゃっただけだから。時々、か、・・・な、みって呼んでいい?」
「はい、お好きにお呼びください。反省しています、ごめんなさい」
「もう、違う。友達とか仲間として呼んでいぃい?」
ゆっくりで静かで温かい感じの口調だった。
その言葉にピクリと反応があった。
「合宿、楽しいよ。みんなでトランプして鉄臣君が運悪くって、フフフ、いっぱい笑って、だし巻きが上手で・・・」
「鉄臣、あなた、ふたりに勘違いされたらって、汚点って言ったわね。水平学園の生徒会に所属して喪部部員って、ここに居る6人以外に居るの?どうなの?」
「さっきはごめんなさい。鉄臣君が嫌々わたしたちに合わせているだけなのかと考えたら、なんだか急に悲しくなっちゃって」
申し訳なさそうにする楠木さん。
「ごめんなさい。ボクはみんなと比べたらゴミみたいなもんだから。一緒にいるのは奇跡だし、今でも信じきれていないくらいだし」
何とか顔を上げて、みんなのほうを見る鉄臣君。
充血した眼が精神的に追い詰められていたことを語っていた。
「・・・鉄臣君、シャツわたしの涙で濡れちゃったね」
「鉄臣、あなたが慣れるまで呼び方を変えないわよ、いいわね」
「わたしも時々名前を呼んで、鉄臣君を鍛えてあげるぅ」
「・・・よろしくお願いします」
「さあ、三石君、顔を洗ってくるといい」
「誤解は解けたみたいだから、部活動再開しましょ」
戸締りをして、6人は歩き出した。
合宿2日目が始まったばかり。
いかがでしたか?
鉄臣君、まだまだ仲間入りしていませんでした。
なかなか人の心は難しいものです。特に鉄臣君、昔から素直に信じて後で裏切られたみたいなことを多く経験してたみたいですね。
どうか温かく見守っていただくとありがたいです。
お読みいただいてありがとうございます。




