部活動 5-6.29
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
いきなりアクション映画並みの展開でしたが、ちょっと息抜きです。
ではでは~
「何があったんだい?」
堀田さんが、慌てて降りてきた。
「簡単に言うと爆弾テロかしら」
簡単に答えた久遠寺さんだったが、直後は真っ青になっていた。
今顔色は、幾分、血の気が戻ってきている。
「さすがにそこまでしないと思ったんだけど」
「おそらくは、ユートさんではなく、わたしです」
堀田さんの疑問に落ち着いて話す桃園さんだった。
「そうか。三石君は大丈夫なのかい?姿が見えないけど」
「あの子、漏らしたんで着替え中さね。まったく無茶する」
ヤレヤレと言わんばかりに話すアヤメさん。
「彼、どうしたんです?」
「迷わず手榴弾に被さり、わたしたちを救っていただきました」
「もし爆発したら?」
「その時は、すべての破片を身体に受けた三石さんだけが亡くなられます」
堀田さんとの会話の最中も周りに注意を払うクリスさんは、言葉は最小限ですでに戦闘態勢だった。
「クリスさんたちなら、海に投げられたんじゃないですか?」
「堀田様、持ち上げた瞬間に破裂したら、上の階まで大変でございました」
皮肉をたっぷり含んだ微笑みのクリスさん。
「じゃあ、クリスさんたちでも」
「はい。あの状況では最良の対処でございます。咄嗟にあの行動ができる方をわたしは尊敬いたします」
「なぜ、すぐに爆発しなかったのですか?」
「密輸時に信管が劣化したものと思われます。不幸中の幸いでございました」
「ふーーー。そうですか」
クリスさんの説明に大きくため息をつく堀田さんだった。
= = = = =
「あ、あの。サフラさん。ちょ、ちょっと」
「どうされました?」
小首をかしげ、シャワー室の出口をふさぐサフラさん。
「いえ、そのままだと濡れますよ」
「歳の近いメイドを濡らす」
「変な言い方しないでください」
「皆様がお待ちですので、急ぎましょう」
「だから、シャワーを浴びますから」
「汚れたところを洗います」
「だから、それは自分でしますから」
「遠慮は無用。感謝の気持ちを込めます」
「ちょ、ちょ、素手の必要ないでしょ」
サフラさんが、ボディーソープで泡立った手をワキワキとさせ近づいてくる。
「クフフ」
「ひょーーーーーーー」
鉄臣君、大人の階段で踏み台昇降。
= = = = =
「うう、恥ずかしい」
「大丈夫ですか?」
精神的にダメージを受けた鉄臣君が、私服に着替えている横で、サフラさんが白々しく心配してみせる。
「ボクにだって、いろいろあるんですから」
「お嬢様の許可がございましたら、すっきりしましたのに」
「桃園さん」
「いかがなさいました?」
鉄臣君、いろいろな意味で恥ずかしくなってきた。
鉄臣君の着替えが終わるとサフラさんは着物を持っていくといい、部屋を出て行った。
「あーあ、汚しちゃったなあ」
こぼしながら、廊下に出るとふわっと香るいい匂いに気が付いた。
「ちょっといいかしら?」
「久遠寺さん」
鉄臣君、先ほどの醜態で自分が情けなくなる。
「もう、そんな顔しないの。命の恩人は胸を張っていてね」
「恩人なんて大袈裟ですよ」
「・・・」
「だって、ほら・・・」
「クリスさんが説明してくれたわよ」
「! でも、結局、爆発しなかったし」
鉄臣君、意図を悟られないように言い訳を考えている間、久遠寺さんに睨まれる。
「あの爆弾って、爆発するまでの時間が調整できるタイプなんですってね」
「え、そ、そうでしたかぁ。気付かなかったです」
「だから、身体で覆うくらいしか時間がないんですってね」
「た、たまたま腰を抜かして倒れこんだだけで、だ、だから、も、漏らしもしたし」
「そうね、わたしも少しチビッちゃたわよ」
言い訳に目が泳ぐ鉄臣君を睨み続ける久遠寺さんだった。
「もう、いいわ。少し風に当たりに行きましょう。さ、こっちよ」
「あ、はい」
カラコロと歩き出す久遠寺さんについていく鉄臣君だった。
= = = = =
「先輩、大丈夫かな」
「橘、メイドさんだけ帰って来てるよ」
階下のバルコニーを見下ろすふたり。
ユートさんの部屋は、厳重に警備が施され、人の出入りもできなくなっていた。
堀田さんが下りて行ったきり帰ってこない。
「正輝君が確認しているから、待ちましょう」
弥刀さんが静かに言った。
上の階のバルコニーから、下の様子を眺めるしかなかった後輩のふたり。
騒ぎが大きくなると<桃園>が動きにくくなるということで、現場に立ち会った以外の人間には説明されていない。
ふたりを含めてバルコニーの喪部部員は、手榴弾のことはまだ知らなかった。
= = = = =
鉄臣君、久遠寺さんに誘われ、最上階のプールサイドに来ていた。
日も沈みマストに設置された照明が唯一の灯りだった。
「いい風ね」
「はい」
「鉄臣くん、あなたは無茶をするから、きらいよ」
「すみません」
「きらいだから、わたしの嫌なところを教えてあげる」
「はぁ」
鉄臣君、久遠寺さんの意図がわからない。
「あのね・・・聞いたら、きらいになると思うのだけど、その・・・生徒会は、ずっと手伝って欲しいの」
「はぁ、ええ、お手伝いはすると思いますけど」
「それでね・・・」
鉄臣君、久遠寺さんの表情が光の加減でよく見えなかったが、声が泣きそうだと思えた。
「それでね・・・」
「久遠寺さん、俺がきらいってだけでいいんじゃないですか? 目障りにならないように心がけるようにしますし」
「違うのよ。そうじゃなくて。あなたは、命がけで人を助けることを躊躇わない人だから、その」
「うーん。すみません。やっぱり、目障りなんですよね」
「ちがうの。ちがうの」
「もういいじゃありませんか?なんか難しいことみたいだし」
「あなたに知っていてほしいの。わたしが隠し事をせずにあなたに向き合うために」
「はぁ。なんでしょうか?」
「わ・・・わたし、わたしね。しょ、処女じゃないのよ」
いかがでしたか?
久遠寺さん衝撃の告白です。
彼女にとって不幸というか不本意な過去ですが、別の機会に書きます。
次話をお待ちください。




