部活動 5-6.24
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
本編再開です。
ではでは~
「お帰り、三石君。大丈夫?」
「は、はい。お気遣いありがとうございます」
鉄臣君、階下の屋台村があるデッキで野菜ジュースを飲んで帰った来た。
「もう、そんな言い方、わたしは好きじゃないな。そんなんじゃ。正輝君から乗り換えられないじゃない」
「要、三石君だと諦めそうになるから、やめて」
「じゃあ、今チューして」
「おいおい」
「うふふ、ウソよ」
リア充カップルは、夏のせいで大胆なバカップルになりつつあった。
(堀田さん、弥刀さん。俺を巻き込むのはやめてください。美男美女で爆発してくださるといいと思います。てか、お子様はいつですか?)
鉄臣君、心で叫んでいた。
「三石君、トマトジュース飲んだ?」
「はい。すみません、臭いますか」
「うんうん。わたしはモノによっては飲めないけど、嫌いじゃないよ。正輝君も飲んでるし」
鉄臣君、女性の目が気になる年ごろだった。
<トマトジュース>
今、新たなキーワードが生まれた瞬間だった。
= = = = =
なぜか場の空気が変わった。
「せんぱーい。スイカどっちですかぁー」
おとこの娘ゾンビが生き返った。
「ちょうど俺の声の方向。そう、今ちょうど正面。5歩くらい」
「はい。わかりました」
橘きゅん、全く迷いなくスタスタ歩く。
「鉄臣くん、あおいさんには何も言ってあげないのね」
「あおいちゃんが、がんばってるのにぃ」
「あおいちゃん、あの男ってば、あれが本性だよ」
鉄臣君、なぜか口々に罵られてしまった。
「えーと、楠木さーん。少し左を向いてください。あーっと、気持ち戻して。そのくらい、ちょ、行き過ぎ。ほんの少し左」
鉄臣君、楠木さんの要領を得ない動きに事細かに声をかける
「鉄臣くん、あおいさんを惑わすつもり」
「あおいちゃんばっかり構ってる」
「あおいちゃん、あの男の言葉なんて聞かなくていいよ」
鉄臣君、またも口々に罵られ少し落ち込みかけてきた。
「橘、鉄臣先輩は、立て込んでるみたいだから、もう割ったら?」
「むーーー」
スイカの前で先輩の声を待つ後輩は、不機嫌だった。
= = = = =
過酷な消耗戦を強いられた男は、デッキチェアに座りスイカジュースを飲んでいた。
「ごめんね。わたしが不器用だから、みんなに責められちゃったみたいで」
チェアの傍に立ち、申し訳なさそうにする楠木さん。
「あおいさんのせいじゃないですよ」
鉄臣君、視線は海に向けて、自然体で返事をする。見たいんだったら、真横の赤いビキニが見放題だぞ。
「・・・」
「? 楠木さん?」
「今、名前で呼んでくれたよね?」
「え!呼びました?」
「う、うん。確かに【あおいさん】って」
「すみません、みんなの呼び方が伝染たんだと思います。馴れ馴れしくしたいわけではないので。以後、気を付けます」
「うんうん。 【あおい】でいいよ。呼ばれ慣れてるから、そっちの方が自然かも・・・。【さん】付けもいらないかな?」
「そういうわけにはいかないですよ。彼氏さんに殺されちゃいますよ。アハハ」
鉄臣君、力なく笑った後にスイカジュースの残りを飲み干した。
楠木さんは、何か言葉を探しても見つからなかったようだ。
= = = = =
「次は誰がしたい?」
「ハイハイ。わたしやりたい。で、スイカの代わりにある男に制裁を加えたい」
鉄臣君、その言葉に返す気力がなくなっていた。
(これが、竹腰さんの本音なんだよ。いつも明るくて、さっぱりしている印象でも、ボクを許していないんだ)
トボトボと歩いてスイカの汁が滴った真ん中に正座する。
(撲殺されても仕方ないんだろうな。竹腰家の家名に泥を塗った男を放置していることだって、ボクの知らないところで責められてかもしれないし)
手を後ろで繋ぎ、頭を差し出すように体を傾けた。
(本当にごめん。堀田さんたちを見て、あのまま婚約するのは絶対よくないと思ったのは、今でも間違いじゃないと思ってるけどね)
罪人のように座った鉄臣君を見て、誰もが彼が真に受けていると見て取れた。
「え! そ、そんなの冗談だって。もう、本気にしないでよ。鉄臣さんが【えーーー】って、言ってくれると思ったから。す、き、嫌いじゃないよぉ。ホントに酷いことはしないから・・・」
竹腰さんが、今までになかったほど狼狽えた。
オロオロする竹腰さんを見た鉄臣君、ヨロヨロと立ち上がり、デッキ脇の設置されているシャワーのところに歩いていく。
鉄臣君、俯いてシャワーを浴びていた。
(竹腰さんは、やさしいなぁ。ボクが憎くて仕方ないのに、いざとなると優しさが邪魔して、あんな風に気遣ってまでしてくれる。それなのにボクのしたことは)
鉄臣君、目が熱くなり、何かが滴るのを止めることができなくなっていた。
「鉄臣さ・・ん、ごめん、わたし、調子に乗り過ぎてた。鉄臣さんて、優しいから、つい甘えちゃって」
鉄臣君の許に駆け寄り、震える声で話す竹腰さん。
「反省するから、その、好きな・・・人と交際できるまで、近くに居・・て」
何かにすがるように声を絞り出す。
「カナミ、【うん】って言っちゃだめだよ」
ユートさんが竹腰さんとの間に割り込んできた。
「え?ユ、ユートライヒェン」
「そんなことになったら、死ぬまでマヤの傍にいることになるかもしれないんだから」
「な、べ、別にユートライヒェンには関係ないじゃない」
「関係ないことないよ。マヤが甘えて、ずっと好きな人を作らなかったら、カナミが外国人を好きになったとき、日本を離れられずに終わるかも知れないじゃないか」
「そんなの、誰を好きになっても、鉄臣さん次第じゃない」
「カナミ、キミが望めば留学して来てもいいよ」
「ちょっと、留学って・・・」
鉄臣君、竹腰さんとユートさんのやりとりが、いまいち理解できなかった。
(留学先でバイトできるかな?イヤイヤ、ムリムリ。以前に外国人を好きになったとして、相手がボクを好きにならなかったら、ただのストーカーじゃん)
「ユートさん、鉄臣くんの意思は尊重してもらわないと困るんだけど」
「真綾ちゃん、かなみ君を縛るのはやめて」
「鉄臣クン、心配しないで。わたしは、どこに行っても近くの友達だからね」
「三石君、もし正輝君と真綾ちゃんが結婚したら、わたしを口説いてね。いつでもOKだから」
「先輩、ボク、条件は変わりませんから」
「鉄臣先輩、余りものには福がありますからね」
約2名、意味不明なことを口にする。
= = = = =
「もう、鉄臣さんが打たれ弱かったら、安心して好きな人を作れないじゃない」
「だって、堀田さんよりいい相手なんか、そうそう見つからないと思えるから、責任を感じているからでして」
鉄臣君、かろうじて復活し、竹腰さんとプチ和解できた。
「ふーん、じゃあ鉄臣さんで妥協するって言ったら、どうしてくれる?」
「だから、ありえないことを設問するのは、勘弁してよ。どこの世界にハズレをわざわざ選ぶお姫さまがいるの?」
「お、お姫さま。それって、わ、わたしのこと?」
「だって、竹腰家のお姫さまでしょ。王子さまと婚約してたのを道端の石みたいな男が台無しにしちゃったけど」
「ま、まあ、堕ちていくお姫さまなら、遠慮せずに自分色に染めるのも、お、面白いかもよ」
「そこまで下衆な性根はしていないので、許してください」
鉄臣君、自分の評価に垣間見る竹腰さんの恨みが、嫌味を言わせてると思った。
(僕もお姫さまなんだけど)
(お姫さまじゃないから、遠慮しなくていいよ)
(えーん、お姫さまに近いかもぉ)
(よしよし、好都合だよ)
(正輝君、あんなに焦って。大丈夫、三石君は誠実だから)
このとき、竹腰さんの部屋で着替えるふたりの少女がいた。
「これは、大胆ね」
「こっちもこんなに」
「うーん、買い物でこれを買ってたとは」
「しっかり見せておかないといけないんじゃないかと」
「真綾のためだしね」
「一肌脱ぎましょうか」
いかがでしたか?
なかなか、厳しい状況の鉄臣君でした。
新キャラではない新キャラの登場です。
次話をお待ちください。




