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部活動 閑話 楠木あおいの場合 その1

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


本編から少しの間、離れます。


ではでは~


「今日は、ここまでにしておきましょう」

「ありがとうございました」

わたしは、師匠に座礼をする。


「ふー、あおいちゃん、お茶を淹れてくれる?」

「はい、お祖母ちゃん」

地方(じかた)(日舞などの演奏)の師匠はわたしの祖母。

楠木の家は、代々地方を生業(なりわい)としている。


わたしも物心ついたころから、鳴らしていた。

才能(?)があったみたい。

中学生になるころには、楽譜通り正確に演奏できていた。


中等部を卒業する頃に、上手くできなくなった。

正確に言うと立方(たちかた)(踊る人)と演奏が合わない。


それもそうだ。

立方は機械じゃない。

まくれる(踊りと演奏がズレる)ことがあるのは、当たり前。

わたしには、立方の機微が掴みきれていない。


未熟な自分が悔しくてもどかしい。



「どうぞ」

「ありがとね」

わたしは、お茶を出す。


「あおいちゃんは、どうしたらいいと思う?」

お祖母ちゃんは、芸事では、回りくどい言い方はしない。


「わかりません」

「・・・、じゃあ、教えることはないよ。あおいちゃんなら、きっとできる」

「・・・はい」

お祖母ちゃんはアドバイスをしてくれなかった。

(わたしは、ここまでなのかな?)


 = = = = =


高等部に入学した。

悩みを抱えながらでも勉強も頑張った。


どうにかほのかちゃんと同じクラスになれた。

わたしは、全体的にほのかちゃんより成績が低い。

音楽以外に得意科目がないといった方がいいのかも。


一人暮らしを始めて、ストレスが重なったせいか、ニキビがひどくなっていた。

入学時におでこを前髪で隠すようになってきて、4月の後半には、顔を隠すように前髪を下ろしていた。


「あおいちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。でも、最近ひどくなってるかも」

「あおいちゃんの美人さんが台無しになっちゃってるのは、人類の損失だよ」

「フフフ、ほのかちゃんに言われたら、嫌味に聞こえちゃうな」

「えーー、本心だよ。わたしは、あおいちゃんみたいな美人に憧れてるもん。ぼりゅーみーなお胸も素敵だよ」

「もう、胸は関係ないよぉ」

ほのかちゃんは、わたしの胸のことでことあるごとに揶揄(からか)ってくる。

もう、恥ずかしい。


 = = = = =


中学の時、お華のお稽古で一緒になったほのかちゃんとは、すんなり友達になれた。


ふわふわ癒し系のほのかちゃんは、わたしとは違って、モテまくる。

1週間に1回は告白されるそうで、お稽古のあとで寄り道するとき聞かされる。

メイドさんが1人私服で付き添ってくれて、喫茶店でのおしゃべりも同じ年頃の友達が少ない私にとって、貴重な時間。


ほのかちゃんの自慢話にわたし心の片隅にドス黒く嫉妬が滲み出し、心全体を蝕んでいく・・・ということはない。

ほのかちゃんはモテることから、逃げているみたい。

もったいないなぁ。

ほのかちゃんなら、素敵な相手がすぐに見つかりそうなのに。


 = = = = =


大型連休がもうすぐ始まる。

実家に帰えらなければいけないのに、もうニキビというか肌荒れがひどくなる一方だ。

体調が悪いと一人暮らしを続けさせてもらえなくなるかもしれない。

実家から通うと何をすればいいのか答えが出せないでいる今、甘える気持ちが強くなり考えることから逃げてしまいそうで地方の稽古を続ける自信がない。


気が付いたら、マンションを出て、夜道を歩いていた。


雨が降り出して、おろした前髪を濡らしていく。

(ふふ、もう幽霊みたいに見えるかも)


学園寮まで歩いてきていた。

ますます雨足が強くなり、体温を奪っていく。

何をするか思いつかなくなって、玄関の段に座り込んで雨に打たれていた。


なぜか涙が出てくる。

なぜか惨めだった。

わたしには、もともと向いていないのかも。

ちょっと器用だっただけで、人の気持ちのわからないいびつな女。

そう思えてくると抑えられなくなった。


「う・・・う・・ぐっ・・・え、え」


「あのー、大丈夫ですか?」

「え?」

「うわっ!くちびる、真っ青ですよ。ちょ、ちょっと、あ、あの、中に入った方がいいから。りょ、寮母さんを呼んでくるから」

わたしに声を掛けた男子は、わたしを寮の玄関に招き入れて、慌てて寮母さんを呼びに行った。


 = = = = =


お風呂の天井を眺めていた。

狭くはないお風呂場の天井の隅の方にカビの跡がある。


≪あ、あの、俺が廊下で見張ってるから、ゆっくり温まってね。じゃ、じゃあ、外に出てるから≫

扉の外から、声がした。


ちょっとドキドキする。

お風呂に入っている音が彼に聞こえてるかも。

そう思うとできるだけ音を立てずに身体を洗って、髪を洗う。

寮母さんが、タオルとボディソープとシャンプーを貸してくれた。

落ち込んだ気持ちを洗い流すような感じがした。


≪お嬢さん、大丈夫?病院に行く?≫

寮母さんが心配してきてくれたみたい。

「い、いえ。温まったので大丈夫です」

≪そうかい。もし、言いにくいことになってたら、泣き寝入りしちゃだめだよ。水平は全力で生徒を守るからね≫

「はい?」


≪さっきの生徒じゃないと思うけど、その、・・・無理やりされたとかで自暴自棄になっちゃだめだよ≫

「え? ・・・あ、心配していただきありがとうございます。そういうのじゃないので」

≪そう。よかったぁ。あの子が何かしたかと思ったら、パニックになってたわ≫

≪えー、それだったら、寮に入ってきませんよ≫

≪夜も遅いから、静かにしなさい≫

≪はい、すいません≫

扉の向こうで寮母さんと彼が心配してくれてるみたい。

いかがでしたか?


楠木さんは、どう立ち直っていくのでしょう。

見守ってください。


次話をお待ちください。

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