部活動 5-6.23
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
弥刀さんの意図は何でしょうか?
ではでは?
「そこそこ」
「めいっぱい叩いてください」
「もう少し前」
「ちょっと左」
藤原先輩は、声援に応えて、叩き棒を振り下ろした。
見事スイカを叩き割るために。
≪ゴガッスッ≫
力み過ぎて、手前浅くを叩いてしまい、スイカを弾いただけだった。
「あー、惜しい」
「残念だね」
「もうちょっとでした」
「難しそう」
黄色い声はトーンダウンし、哀れみの色が混ぜられていた。
「先輩。リベンジ、リベンジ」
弥刀さんが笑顔で励ますように再挑戦に誘う。
「いいよ。今日は調子が良くないみたいだし」
「そうですかぁ。まだ、やってますし、気が向いたら、お願いします」
「おおぉ」
すっかり勢いのなくなった藤原先輩は、弥刀さんのお願いに力なく答え、いたたまれないのかすごすごと離れ去った。
「正輝君、手、繋いで」
「要、みんなが見てるから」
「いいの」
リア充カップルは、手を繋いで立ち去る先輩を見送った。
= = = = =
プールサイドにビーチパラソルが幾張りも広げられていた。
レンタル部門を傘下に置くOBが提供してくれたものだった。
その下には、軽いデザートやかき氷が用意され、スイカ割りに参加していない部員やギャラリーは、冷たい物で涼を取っている。
洋上で夏の日差しは、ギラギラと照りつけ、日差しからパラソルの下に避難しても、夏らしい夏そのままだった。
スイカ割りのスイカは、メイドさんの技で切り分けられ、他のフルーツと併せて盛りつけられたり、かき氷のトッピングになっていた。
鉄臣君、先輩ズと割れたスイカと弾かれ欠けたスイカをメイドさんの控えているテーブルに持ってきた。
「へぇー。きれいに割れるもんだな」
「三石君だっけ、キミ、もしかしてこういうのが得意なのかい?それで喪部に」
先輩ズは、鉄臣君の割ったスイカの断面を見て感心していた。
「これは偶然です。たまたまです。最初にヒビも入ってましたし」
鉄臣君、特に何も感じないので、思ったことを答えた。
「ヒビって、こっちだろ。違うところを割ってるぜ」
「よくわからんが、なんか凄いんじゃないか?」
「なおのこと、不思議な偶然です。俺、次はできないと思います」
「・・・まあ、言えないならいいよ。無理に聞くようなことじゃないし」
「次は、できないか。言わなきゃよかったな」
モテモテ先輩ズは、鉄臣君がごまかしてると思い、やんわりと話を収めてくれた。
「いえいえ、本当に偶然です。あ、でも、次にできなかったら喪部を除名になるとかだったら、成功するかもしれませんねぇ」
鉄臣君、勘違いしている先輩たちの力をちょっと借りようと考えた。
ここで言い放っておいて、失敗した時には、退部の方向に話を進めてくれる可能性が生まれる。
(もう少し、生意気に言っておこうかな。生意気なだけなら、社会的に抹殺されるほどは嫌われないと思うし)
しかし、その目論見は打ち砕かれた。
「そんなこと言ったら、言った時点で俺たちが除名されちまう」
「そうそう、キミは堀田の影響力を本当に知らないんだな。これからもあいつのいい後輩でいてくれ。おっ、次が始まったぞ」
鉄臣君、企みは提案時点で失敗していた。
堀田さんの一面を知ったかもしれない。
= = = = =
「さあ、次は誰かなぁ?」
弥刀さんは、<堀田さんエナジー>を吸収し、上機嫌で場を仕切っていた。
一方、堀田さんは、気疲れでパラソルの下に引っ込んだ。
「要さん、ウキウキですぅ」
「それは、そうでしょうね」
「未来の旦那さまをないがしろにされたんだし」
「いやー、カナメが敵に回ると勝てる気がしないよ」
4人は思ったこと口々にお互い納得していた。
弥刀さん、先輩ズの後から戻ってくる鉄臣君を見つけた。
「あおいちゃん、どう? 先輩と三石君が、スイカを置いて戻ってきたし」
「えっ、そ、そうですね。まだ、スイカがありますし。ちょうどやってみたかったところです」
弥刀さんのご指名を受け入れる楠木さん。
「ふふー。いいとこ見せるチャンスだよー」
「な、何のことですか?べべべつに見せるようなコトハアリマセン」
「ふーん、スイカとどっちが大きいかなって、じっくり見られたりするかもねぇ」
「そ、そんなことは・・・その、別に」
「クフフ。いいのぉ」
「そんなことより、今日は暑いですね。日焼け止め塗りましたし、いいかな」
楠木さんは、パーカーを脱ぐとデッキチェアの背もたれに掛けた。
「弥刀さん、ボクもぉ、いいですか?」
元気に、はいはーいと手を振り自分を指さす橘きゅん。
「はい、ひよりちゃん、さんせーん」
準備を始めるふたりだった。
= = = = =
((((これは!))))
(好みが)
(わかるかも)
(でも)
(判るのは)
(怖い)
(でも知っておきたい)
(特に)
(お胸よね)
= = = = =
ぞくっ
鉄臣君、突然、悪寒に見舞われ、眩暈がした。
(あー、親父が言ってたみたいに、血の気がひいてきてるのかな。食事にも気を付けてたつもりなんだけど)
「先輩、俺ちょっとトイレに行ってきます」
「おー」
「ほいほーい」
鉄臣君、タンタンタンと下のデッキに降りて行った。
= = = = =
なぜか割り手がゾンビのように徘徊するスイカ割りが始まった。
「橘、そっちじゃないって言ってるでしょ」
「あおいちゃん、聞いてないでしょ」
「あらあら」
(うーん、父上に聞いていた通り、日本人には計り知れないことがあるな)
どう見てもやる気のないゾンビの徘徊を眺めるだけで10分になろうかとしていた。
割り手も炎天下で消耗していった。
= = = = =
「堀田、みー、三石君だっけ? これって彼のせいか?」
「どうでしょうね」
堀田さんは、ぼかすように回答する。
「堀田ぁ、お前、本当は俺たちより年上なんじゃないか?」
「ひどいなぁ。僕は、まだ世間を知らない18歳ですよ」
堀田さんは、問いに答えただけだった。
いかがでしたか?
人間模様を楽しんでいただけているでしょうか?
次話をお待ちください。




