部活動 5-6.21
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
普通のスイカ割りに変わります。
ではでは~
「カナミ、紙でスイカが割れるのかい?」
「振ってみます?結構しっかりしてますよ」
「ああ、お、思ったより頑丈なんだね。これならいけそうだ」
ユートさんが軽く素振りをする。
何を思ったかグイグイ握り込んで思案する。
「コレくらいは、きっと痛いだろうな?」
「ビニールテープをきつめに巻いてますから、突いても痛いと思います」
「・・・深く突かれたら・・・」
「? 何かに使えそうですか?」
「い、いや。使われたら、嫌だなって思って」
「はあ」
鉄臣君、ユートさんの言葉の意味が汲みきれなかった。
= = = = =
(よーし、ちょっといいとこ見せて、会話のきっかけにしよう)
桧山先輩は張り切っていた。
3年生で受験勉強の真っ最中で、意中の人と話す機会がない。
もうひとり増えて、目移りしている。
このイベントに参加した動機の一つでもある。
「じゃあ、最初は誰がする」
堀田さんがプレイヤーを募る。
「「俺が」」
桧山先輩と渋沢君が同時に名乗りを上げた。
少し気まずい雰囲気になる。
「スイカはありますし、同時でもできますよ」
鉄臣君が今できた2本目の叩き棒を見せた。
「真ん中にスイカを置いて左右から始めたら、危なくなくて面白いんじゃないかしら?」
弥刀さんが面白い提案をしてくれる。
目隠しをしてスイカを割りに行くわけだが、誘導する声がスイカの方から区別なく聞こえてくれば、向かい合った二人は方向が混乱するはず。
「先に割った方が勝ちでいいかな?」
「ああ」
「了解です」
堀田さんの確認に返事をする二人。
勝負になった。
「名前は呼んだ方がいいのかしら?」
久遠寺さんが確認する。
「呼ばないほうが面白いんじゃない?」
笠木さんが思ったことを口にする。
「名前、呼ぼうや」
「面白いこと始めたな」
「先輩方、割りますか?」
大学生のOBが声をかけてきて、堀田さんが聞いてみた。
「堀田、このレベルの後輩たちの前で無様だったら結構きついぞ」
「俺らは平部員だったんだぞ。お前みたいにサラブレッドじゃないから勘弁しろよ、アハハ」
「アハハ、先輩たちがモテ過ぎで生徒会に投書があったのを聞いてますよ」
さらっと断る先輩たちの現役当時の逸話を話す堀田さん。
先輩たちは堀田さんのいう通りモテそうだった。
はきはきと話し、少し低めの声が落ち着きを感じさせる。
鉄臣君、声に自信がなかったので、あんな風になりたいと思った。
「じゃあ、第一回戦。二人ともタオルで目隠しして、・・・と何回廻る?」
「床が硬いから、目が廻るとケガしませんか?」
鉄臣君、痛いのが嫌なので、ケガの心配をする。
「一回でいいだろ、それでも充分面白そうだしな」
先輩の一声で一回になった。
ただし、追加ルールで3歩まで周りは黙っていることにした。
割り手の二人が一回廻る。
そして3歩。
桧山先輩がプールサイドの段差に足の小指をぶつけ、プールに落ちそうになるの片足立ちで踏みとどまった。
痛たそうだった。
渋沢君は、廻り足りずに方向がズレていた。
「桧山さん少し左です」
久遠寺さんが早速声をかける。
桧山先輩が向きを変える。
「渋沢君、左だよぉ。あ、行き過ぎぃ」
「渋沢、もっと右だ」
桃園さんの声に重ねて、先輩が指示を出す。
重なった指示で混乱する。
結局、右に向き過ぎて、ブレが大きくなった。
二人は蛇行していたが、先にスイカにたどり着いたのは渋沢君だった。
残念、勢いよく空振りする。
桧山先輩は、時間をかけて慎重にたどり着いたおかげで、見事に割ってみせたが、時間がかかり過ぎた。
二人ともあまりいいところはなく、一回目のスイカ割りが終わった。
「二回戦は、女子でどう?」
「ハイ、ハーイ、わたしやりたーい」
丸美さんが手を挙げた。
「僕もいいかな?」
ユートさんで決まった。
「二人とも目隠しして、一回廻る」
二人がスタート場所で一回廻って3歩。
二人とも正確にスイカの方に向かって歩いた。
(すごいな。見えてるみたい)
「音奈ちゃん、まっすぐだよ」
「ユートさん、まっすぐ」
楠木さんと弥刀さんが誘導する。
(見られてる。変じゃないかな)
(きっと見てるんだ)
((視線を感じる。せっかくだから水着の方がよかったかな))
(ウエスト引き締めてよかった、って、パーカーの上からじゃ見えないよぉ)
(チラチラ見てたけど、何も言わないなぁ)
二人の集中力がすごいのか邪念が導いたのか、スイカまで、ほぼ一直線でたどり着いた。
「丸美、そこ、ばっちりだよ。先輩、丸美がバシッって割りますからね!」
「ユートライヒェン、そこ、そこ。鉄臣さん、彼女、剣さばきが上手いから粉々だよ」
振りかぶった二人がぴくっと一瞬止まってから、振り下ろした。
ほぼ同時に叩いたが、力が足りなかったためにヒビが入っただけだった。
「なかなか、おもしろいね。見えないまま叩くのは結構難しいな」
「ユートさん、上手でした。見えないと手加減しちゃいますよね」
「あーん、叩くの慣れてないから、失敗しちゃった」
「丸美さんもまっすぐ当てたんだから、うまいよ。橘さんの言った通りだよ」
鉄臣君、スイカを置きなおす間にふたりのフォローをする。
メイドは見た。
スイカを割らずに何かをアピールする乙女心を。
メイドは見た。
わざと慣れない風に見せた乙女心を。
いかがでしたか?
しばらく、スイカ割りのお話が続きます。
次話をお待ちください。




