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部活動 5-6.19

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


楽しい食事時も終わり午後の活動がどうなりますか?


ではでは~


鉄臣君、あまり自分の手で食事をせずに昼食が終わった。

自分の手は、専らユートさんといつの間にかアヤメさんと席を替わった竹腰さんに操られてしまったのだった。


「あのー、竹腰さん」

「うん?何」

鉄臣君、食後のお茶を飲む竹腰さんに話しかける。


「堀田さんのところに行かなくていいの?」

「!!お、お、お、お祖母ちゃんがいるんだから、いいのよ!」

「ごめん。気が利かなくて」

「べ、別に謝るほどのことじゃないわよ」

鉄臣君、気不味い。


「真綾ちゃん、かな坊さんが困るから、きつく言っちゃだめよ」

「はい」

薫子さまが竹腰さんを(たしな)める。


「かな坊さん、ごめんなさいね。この子、焦ると語気が強くなっちゃうものだから」

「薫子さま、ボクにはお気遣いいただかなくて大丈夫ですから」


「あらあら、わたしだけ他人行儀なのね。おばあちゃん、かなしいわ」

「い、いえ。失礼しました。常識が身についていませんので、どうかお許しください。あ、あの、どのようにお呼びすれば、よろしいでしょうか?」


「そうですね、お義母さまが【お姐さん】だから【お姐ちゃん】かしら」

「・・・はい」

「お義祖母(ばあ)ちゃんでもいいのよ」

「いえ、お姐ちゃんとお呼びします」

鉄臣君、なぜか【おばあちゃん】が、とんでもない言葉として聞こえた気がした。


「お祖母ちゃん、いいの?」

「いいわよ。お母さんも何も言わないのでしょ?」

「うん、そうなんだけど。やっぱり、大事なことだし」

「いいのよ、今はそこまで考えなくて。わかるから」

「お祖母ちゃんありがとう!」

竹腰さんが薫子さんに抱き着いた。

老婦人が孫の髪を撫でる微笑ましい姿があった。


 = = = = =


屋台村では、諸先輩方の食事が続いていた。

アヤメさんのところには、お酌をしに人が集まってくる。

それ澱むことなく捌いていた。

(お姐さん、飲み過ぎは良くないですからね)

鉄臣君、正直に心配していた。


現役部員は、あらかた食事を終えていた。


「さて、午後は何をしようか?」

鉄臣君、喪部部長に注目する。

ところが、部長の視線が自分に注がれているように感じる。

(気のせい、気のせい。きっと気のせいだと思いたい)


「さあ、せっかくだし、みんなに提案して欲しい」

鉄臣君、【みんなに】という言葉を聞いたので、黙って待っていた。

そう、いつも堀田さんと雑談しかしていない。

部活動の場では、モブ枠担当がどういうポジションなのか測りかねてもいる。

いつハブられてもおかしくないと思って、覚悟しながら参加している自覚があった。

午前のことも苦し紛れだった。

そもそも、ハイスペックなリア充たちの中にいるのは、居心地がかなり悪い。


最近、桃園さんや楠木さんに交際相手がいるのを確認したつもりだし、誤解が生じないように距離を置こうと思っている。

久遠寺さんも自分との接し方から、男子の扱い方に慣れているっぽく感じるので、本人の口から聞いたわけだはないが、普通に考えると相手が居ないわけがない。

堀田さんたちは、ますます気合が入ってきている。

後輩ふたりは、よく考えたら仲がいいのも頷ける。

竹腰さんについては、彼女は外見以上に性格がいいので、相手いないのも今だけだろう。


(喪部の部員って、モテないとなっちゃいけないんだろうな」

「三石君、何がいけないって?」

鉄臣君、また声に出ていた。

堀田さんがそれを見逃さなかった。


「え?」

「何がしたい?」

鉄臣君、一気に汗が噴き出す感じがした。

(何か言わないといきなりハブられる! 心の準備がまだです。考えろ、考えろ、夏、海、太陽・・・)


「スイカ割りなんかどうです?・・・。(あ!)」

「・・・うーん、ちょっと相談してみようか」

堀田さんが、そう言い残すと歩いて行った。


(バカだバカだバカだ。船の上でスイカ割りなんか。あ゛ーーー、自分が嫌になる)

鉄臣君、テンパった自分が嫌になっていた。

ハイスペックな部員たちが、そんな安直な提案で納得するわけがない。

ましてや場所が船の上、割ったスイカの汁で汚れたら、水で洗わないといけない。

それ以前にスイカが無い。

鉄臣君、文字通り頭を抱えしゃがみこんだ。

(視線が怖い。堀田さんの手間を増やす提案なんかしたらダメだろ)


「じゃあ、上でスイカ割りしよう」

爽やかな笑顔でイケメンが帰ってきた。


 = = = = =


最上階のプールに行くと、すでにぷかぷかとスイカが浮いていた。


プールサイドには、女性が待っていた。

「お嬢様、スイカの準備ができました」

ラッシュガードとスパッツの組み合わせに着替えたクリスさんが、テーブルに置かれたスイカの脇でお辞儀していた。


メイド服の中身は、女性的な曲線は間違いないが、鍛え抜かれたアスリートのそれだった。

背中まである長い髪を無造作に束ねている姿は、さながらウォリアー。


「クリスさん、スイカ割り大丈夫?」

「はい、このくらいの揺れでしたら、お嬢様にご迷惑をおかけせずに済ませられます」

「じゃあ、見せてくださいね」

「はい。・・では」


クリスさんは、スイカの座りを確認するとテーブルから少し離れた。

なぜか傍らに置かれていた傘スタンドに長い布の棒状のモノが置かれていた。

それを手に取る。

長い布に巻かれた紐をくるくる解いていく。

実は袋になっていた布から一振りの日本刀を取り出した。


(え、え、え?日本刀?真剣・・・ていうのは、いくら何でも)

鉄臣君の疑問は、一瞬で氷解する。


すらりと抜かれた刀身は、陽に照らされているというのに本能的に危険物だとわかるような妖しく反射をして視せる。


クリスさんは、ごく普通に大上段に構えると静かに呼吸を整えた。


ただのスイカ割りが、洋上の風さえ凪させる緊張を生んでいた。

いかがでしたか?


ちょっと意外だと思ってもらえると甲斐があります。


次話をお待ちください。

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