部活動 5-6.8
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
さあ、亀のようなスピード感で飛ばしますよ。
ではでは~
鉄臣君、少し遅めの朝食を満喫していた。
アヤメさんと薫子さんの周りには、ひっきりなしに挨拶する人が集まっていた。
「お祖母ちゃん、ここでも忙しいなぁ」
「竹腰さん、竹腰さんはいいの?」
「わたしは、まだ先。まあ、婚約とか、あっ」
「そうだね、ハハッ」
「ご、ごめんなさい。そういうつもりじゃないのよ。ほ、ほら、相手次第ってことよ。嫁ぐわけだし」
「うん、ごめん」
「もう、結婚頑張ってくれるって言ったじゃない!」
「「「「「「「結婚!!」」」」」」」
意外と竹腰さんの声が通ったため、周りの人に聞こえたらしい。
= = = = =
竹腰の大奥様の周りはどよめき立つ。
「大奥様、おめでとうございます」
「婚約が白紙と聞いておりましたが、ほかにお嬢様を心を射止めた方がいらしたんですね」
「もしかして、ここで発表なさるとか」
「奥様もお見えなので、何かあると思っておりました」
「真綾さん、ずいぶんとはつらつとなさっていたと思いました」
「大奥様のお眼鏡にかなうほどとなりますと将来が楽しみでしょう?」
竹腰さんの<結婚>発言に、大きな(?)勘違いでアヤメさんと薫子さんの周りの人はお祝い言葉を贈る。
= = = = =
「竹腰さん、ちゃんと言ってくれないと、知らない人が勘違いするかもしれないから」
「・・・あ、ごめん」
納得いかないかの返事をする竹腰さん。
「あー、誤解しないでください。俺は、竹腰さんに好きな人ができたときに結ばれるように頑張るって言ってますから。たしか、桃園さんには、言ったことありましたよね」
「あ、うん。そんな感じのこと言ってたぁ」
「ほらね」
鉄臣君、周りの目が珍獣を見るような目で見ていることに気がつかない。
何より当の竹腰さんが睨んでいた。
(あ、竹腰さん、好きな人のことを知られたくなかったかも。うわっ、失敗だ)
= = = = =
堀田さんのスマホに着信音を奏でる。
「はい、堀田です。今どこだい?・・・どうしようか、そろそろ出港時刻なんだけど・・・わかった。じゃあ、気を付けて」
「正輝君、もしかして、ユートライヒさん?」
「ああ、ユート君、飛行機が遅れて、間に合わないって。今、チャーターしているから、こっちは予定通りでいいって」
「堀田さん、ユート君って、どなたなんですか?」
「あれ?三石君には紹介していなかったかな?ユートライヒ君、この秋から留学してくるよ。花見会に来ていたんだけど」
「外国の人っていましたっけ?」
「あの時、変装してたなあ」
「堀田さん、変装って、コスプレ?」
「いや、普通に変装だよ」
「変な人なんじゃ」
「詳しいことは、本人に聞くといいさ」
= = = = =
出港時間を迎え、クルーズ船が離岸する。
≪喪部、オージーオービー会のみなさま、本日は、プリンツドライシュタインにご乗船いただきありがとうごさいます。改装のため、ご不自由とは存じますが、船旅をお楽しみください≫
船内放送が流れる。
≪お客様、最上階下、ホールにて夏イベントのオープニングセレモニーのご用意ができました。ホールにお集まりください≫
「さ、オープニングだ。みんな、行こうか」
堀田さんの言葉に曳かれ、喪部部員はまとまってホールに向かう。
船内案内図を見ながら先導する堀田さん。
すぐ後ろを弥刀さんが歩く。
鉄臣君、お似合いのカップルだなと納得する。
ちょっと心配して竹腰さんの方に目を向ける。
意外に機嫌よく 薫子さんと楽しそうに話をしていた。
ホールに参加者が入ってくる。
鉄臣君、眺めているとやはりオーラが違うと思った。
どこかで見たことのある人たちや明らかに大物と形容がピッタリな人とか。
スタッフが、入ってくる人が途切れると扉の外を見回し仮設の演壇の方に合図を送る。
「喪部夏イベントの開催に際しまして、ご挨拶賜たくOGOB会会長の~」
「堀田さん、これもOGOB会ですよね」
「あー、実は、最初喪部合宿で計画したんだけど、先輩たちが面白がって」
「失礼ですけど、面白がるレベルを超えてますよ」
「~留学を機にわたくし同様、良い友に恵まれることを期待しています。伯爵マーリンベルグ様」
「いいじゃないか。みんなイベントが好きなんだよ。今度はお泊り会だしね」
「ちょ「では、最後に現役部員代表に開会のご挨拶をいただきたいと思います」
「堀田さん呼んで「三石様、三石鉄臣様、壇上にお越しください」・・・もう、止めてくださいよ」
鉄臣君、納得いかないので、一歩が踏み出せない。
アヤメさんが鉄臣君のそばに来た。
「ちょいと待っとくれ。ほら、かな坊、挨拶行っといで。悪いね、道を開けとくれ」
鉄臣君から演壇まで道が開いた。
「ほら、行っといで」
鉄臣君の背中をアヤメさんがバシバシ叩いて促す。
鉄臣君、トボトボと演壇の方に歩き出す。
衆目の中、晒し者になっているような気がする。
みぞおちあたりがシクシクと疼いて吐きそうだ。
鉄臣君、のそのそと演壇に上る。
(うわー、見られてる。当然か)
「えー、みなさん。ご紹介いただきました【みついし】です。本日は、天候に恵まれ、夏イベントで充実した時間を過ごせるものと信じております」
≪パチパチパチパチパチ≫
(言わなきゃ)
「すみません。この場をお借りして、みなさんに申し上げたいことがあります。聞いてください」
≪ザワザワザワザワ≫
「ボクは、嘘を吐くのが嫌いなんです。喪部の代表で挨拶させていただきましたが、何かの間違いです。イベント成功の功労者は、堀田さんやご協力いただいた皆様です。ボクは何もしていません。これほど立派なイベントは想像さえ及びません。ボクがなぜか部員で、みなさんの後輩で、ここにいるのは間違いだと思います。花見会の時は思考力が追いつかず、失礼をしてしまいましたが、今は判ります。身の程はわきまえていますので、どうか、みなさんのお顔に泥を塗るようなことになる前に除名してください。今まで、ありがとうございました。良い経験ができたと感謝しております。ううっ」
鉄臣君、演壇で泣きながら土下座する。
ホールは静まり、鉄臣君の押し殺した嗚咽だけが聞こえる。
「あー、ほったー。ちょっと来い」
堀田さんが先輩に呼ばれたようだ。
『なんだぁ、先輩がたの前で、この失態は』
『すみません。三石君は、自分を知らないもので』
『ったく、OGから突き上げは、半端じゃないんだぜ』
堀田さんが先輩たちに囲まれて何か話していた。
初老の男性が、壇上で蹲っている鉄臣君の背中に手を置く。
「三石、君の今が喪部そのものだ。君は普通に過ごしたいのだろうけど、もう、それは叶わない。ある意味、手遅れだ。ここにいるみんなが君をきちっと後輩だと認めているから、きみはここにいる」
「先輩、ぐすっ」
すすっとアヤメさんがやってきた。
「かな坊、しっかりしな。そんなじゃ、真綾が幸せにたどり着けないじゃないさね」
「お姐さん」
≪今、大奥様におねえさんって≫
≪大奥様が、お嬢さんの幸せとか≫
≪ご婚約の話は≫
≪やっぱり、おめでたいのでは≫
その場をウヤムヤにするように脈絡なく船内放送が流れる。
≪皆様にご連絡いたします。後部ヘリポートにヘリが参ります。みなさまにおかれましては、お召し物、お帽子など飛ばされなきようお気を付けください≫
いかがでしたか?
鉄臣君、また泣きが入りました。
ダメダメですね。
次話をお待ちください。




