部活動 2-1.2
鉄臣君、踏みとどまりました。
しかし、自分のポジションが判っていません。
超エリートの中で浮いた存在としか思えないので、仕方がないことです。
では、続きをお読みいただければ、幸いです。
結局リア充ふたりは無理やり作られたカップル席で食事をさせられた。
いつも和気あいあいなのが、意識させられると照れまくり顔が真っ赤だった。
鉄臣君、カップルが気になって仕方なかった。いいのか?カップルばっかり気にしてるけど、ガン見されてるぞ!
夕飯は会長の提案でカレースープパスタ。
鉄臣君、フォークでパスタをくるくると巻いてパクっと食べる。
美味しいのだけど微妙。
スパイスをもっと効かせた方が好みだったが、カップルが気になってそれどころではなかった。
(<あーん>ってリアルで見られるかな?いや、さすがにそれはないか。いやいや、ここには生徒会しかいないんだし、やりかねない。でも、見たからって誰得だよな)
ふと目の前にパスタがあったので、何気なくパクっと咥えた。
気が付いた。
自分のフォークじゃなく、桃園さんがフォークを持っていた。
鉄臣君、全身から汗が噴き出す感覚に襲われ、ぎぎぎと音が聞こえてきそうな動きで周りを見回した。
フォークからパスタを引き抜くとむぐむぐと噛んで飲み込む。
「あ、あの、間違えました。すみません」
生徒会役員たちの視線に答えるようにつぶやいた。
無言で会長がパスタを突き出す。
少し遅れて楠木さん。
桃園さんは2回目。
面白がって堀田さん。
ただし、堀田さんのは弥刀さんが奪取してしまった。
「あの、その、もう間違えませんから。えーと、ごめんなさい、許してください」
どうしていいか判らず謝るのが精いっぱい雑用係。
歯の折れた窮鼠、心が折れそう。
途中から試練の夕食は終わった。食事中はよそ見をしないということで収拾した。
消耗した鉄臣君、がんばれ。
女性陣が夕飯の後片付けをして、堀田さんがお風呂を沸かす。
ダイニングの片付けはすぐに終わったので、風呂が沸くまでやることがない。
自分だけやることが無いと妙に落ち着かない。
鉄臣君は暇になった。
リビングのソファに身を任せボーっとしていた。
しばらくするとリビングいた人の呼吸が寝息に変わっていた。
鉄臣君、眠りが浅くなった時に人の気配を感じた。
目が開かない、体が動かない。
ふと頭を撫でられていたのが判った。
その心地よい感触でまた眠った。
= = = = =
「ここ、どこだっけ?」
「起こしちゃったかな?」
声を追い、頭側でクッションに座る少女を認めた。
ソファで眠ってしまったのに気が付いた。
「大丈夫です、楠木さん。お風呂に入ってさっぱりしたいし」
鉄臣君、気遣ってくれた楠木さんに答える。
(頭撫でてくれたのって誰?そもそも夢?勘違い?)
リビングにみんな揃っていた。
「男子はどっちのお風呂を使う?」
「僕たちは上の方を使うよ、暗くて足元が危ないから」
「お二人で入らないの?」
「な! ほのかちゃん! そんなことできません!」
「えー、嫌なんですかぁ?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいわ。みんないるし」
「みんながいないと一緒に入るのですね」
「あおいちゃんまでー!」
「あまり、からかってはダメよ。お風呂に入りましょうか」
「「「ハーイ」」」
女子がキャッキャッとお風呂に向かった。
久遠寺さんが振り向いて
「覗いてもいいけど、ばれないようにしなさい」
「なんでボクを見て言うんですか!!!」
「フフフ」
「僕たちもひとっぷろ浴びようか」
「そうですね、さっぱりしたいです」
= = = = =
「あ゛ー、生き返るー」
「お疲れさん」
「まだまだ陽が落ちると肌寒いですねー」
「この辺は平地より1、2度低いよ」
「夏も過ごしやすいんですか?」
「避暑とまではいかないけど、夜は過ごしやすいよ」
「いいところですねー」
上の風呂場は、解放された屋根裏のデッキに有った。
そこからは、真っ暗で吸い込まれそうな夜が見えていた。
「嫌な思いをさせてすまなかったね」
「もう気にしていませんから」
「君はどう思っているかわからないけど、僕たちはもう繋がっているから。みんなで、少なくとも生徒会だけでも思い出を作っていけたら良いと思ってる」
「・・・、はい」
(あー、目が熱いー、顔がゆがむー、顔を洗う振りでごまかさないと。超エリート口が上手すぎるよ)
「僕はもう上がるよ」
「ボ俺はもう少し」
「風呂上がりにみんなでトランプでもしよう、じゃ、お先ー」
鉄臣君、しばらくぼーっとして湯船につかる。
風がかすかに枝を揺らす音に交じって虫の音がかすかに聞こえてくる。
いかがでしたでしょうか?
お読みいただいて、感謝です。
外の眺められるお風呂というのは、いいのもです。
筆者は家を建てるとき、お風呂にこだわりましたが敷地の広さの問題で
足を延ばせる浴槽はバイク置き場とのトレードオフになり、あきらめました。
さて鉄臣君、お風呂に浸かって何を思うのでしょうか?
少し加筆してから投稿します。




