部活動 5-6.2
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
えー、鉄臣君の家庭事情が少しわかる話です。
不愉快になる方がいらっしゃるかもしれませんので、
読み飛ばしても差し支えありません。
ではでは~
「あら、今日も不審者を見かけてしまったわ」
(うっ、またこのパターンか)
鉄臣君、ギギギと音が鳴りそうな動きで振り返り挨拶をする。
「会長、おはようございます」
「おはよう不審者くん。隠れていたみたいだけどどうしたの?」
「喪部の部員が集まっているところは、オーラが違うんで」
「ヤレヤレだぜぇ」
「すみません」
「もう、反応してよ。恥ずかしいじゃない」
「あ、似てましいてててて、ギブギブ」
鉄臣君、久遠寺さんに腕を決められ片膝をついている。
「似てても嬉しくないわよ」
プイと不満げにそっぽを向く。
そのかわいい横顔は、腕が痛くても間近で見られるとおつりがくる。
鉄臣君、久遠寺さんの肩を押さえ込んでいる手に合図をするため手を重ねる。
華奢で柔らかい感触に少し感動していると決められた技が緩む。
「ふ、不審者くん。い、行きましょうか」
鉄臣君の手から久遠寺さんの手が抜ける。
「はい」
鉄臣君、目の前に置かれていた荷物を拾い上げる。
「あ、自分のは自分で持つわ」
「ついでですから、運びます」
「あ、ありがと」
「どういたしまして」
= = = = =
(ふぁー。イベントだと違うんだー)
鉄臣君、初めて解放的な夏を感じていた。
思い起こせば、1年生の夏の時は、ただ、バイト、勉強、寝るの繰り返し、ギリギリで生きていた。
シャツに塩を吹くバイトを必死でこなしてしていた。
先輩の夜学生と同じように汗だくだった。
「先輩、俺、頑張ります」
「おう」
「三石君、君は、水平なんだろ?」
「はい、そうです」
「人の出会いは、いいよね」
「え?」
「三石君、人の出会いは、個人でどうにかなるんじゃ、ないんだよ」
「先輩・・・」
「三石君、美人がいたら紹介してよ。お金払うから!」
「先輩ー」
数年後先輩の就職先は、宇宙を巻き込み、先輩は、なぜか人類存続させた中心人物となっていた。
それはまた別の話。
= = = = =
「俺は、家事をこなしてくれる女がいいと考える」
「オヤジ・・・」
「いいか。お母さんみたいな女には気を付けろよ。アレは、俺に黙って、俺名義で400万借金するような、家計管理ができないヤツだから。下手したら寄生虫だ」
「・・・」
「専業主婦で飯を作るだけでダラダラ過ごすから、俺より10キロ重い。腹が出て見苦しくて海に行けなくなった。コンロ周りは油でギトギト、風呂やトイレの掃除は、お前が生まれてから5回もしてない」
「俺・・・」
「女は、外面と言い訳だけで生きてるのも多いと思うから、気をつけろ」
鉄臣君の母親は、家を出て暮らしていた。
相変わらず痩せもしない生活を送っているようだった。
本人曰く、通勤に便利とか理由をつけていたが、あまり言い訳の記憶がなく、油でギトつく台所の印象しかない。
母親にとって美味しいらしいが、市販の化学調味料で美味くもない料理を作ってくれた。
節約が下手で鉄臣君の父親の給料を使い切り、足りない分は自分で稼いでと、たちの悪い寄生虫のように今も借金を少しづつ増やしている。
鉄臣君、中学の頃は、電気代節約のため、LED懐中電灯の下で、父親と食事をするのが普通だった。
父親が工夫を凝らしたおかげで、テーブルの上は、暗くもなく不自由はなかった。
実家では、父親が食事を作ってくれた。
出汁やデミグラスソース、カレー粉、おおよそ家庭で使う調味料は、ほとんど自家製。
食費節約のために割高な市販品やレトルト食品が買えないだけだったが、鉄臣君の食生活の基本が、このとき作られたと思いおこす。
母が家を出た直後からキッチンが少しづつ綺麗になっていった。
中学を卒業するころには、使い込まれた調理器具の整然と並ぶ厨房のようになった。
青みがかった鉄のフライパン、使い込まれ焦げ付かないスキレット、チタン製の炊飯釜、珍しい調理器具が並んでいた。
それらは、物心ついたときからウチに有ったモノばかり。
母がそれらを使った記憶がない。
鉄臣君には、なぜ、そんな生活が続いているのか理解できなかった。
理解できないが、父親の努力がわかるような気がする。
離婚したら、母親が親権を持つらしい。
軽い吐き気がする。
= = = = =
「みなさん、おはようございます」
「「「「おはようございまーす」」」」
生徒会長が挨拶をすると喪部部員の返事が返ってくる。
喪部の輪が出来上がる。
(う、う、やっぱり、走り高跳びのような高いハードルだ)
鉄臣君、荷物持ちで近くに立っているが、輪には入っていない。
「「三石君、おはよう」」
堀田さんと弥刀さんが挨拶をしてくる。
「おはようございます。ハモってますね」
「要とは付き合っているからね」
(うおっ!自信満々のリア充発言だ)
「それより、三石君、誰かとデートしたの?」
「そんなぁ、可能性のないことを聞かないでくださいよ」
「とーぅ」
いつの間にか近くにいた竹腰さんが飛び蹴りを放つ。
「いげっ」
鉄臣君、背中に竹腰キックをまともに食らってよろめく。
運悪く弥刀さんに抱きついてしまった。
「キャッ。・・・フフ。ごめんなさいね。わたしには正輝君がいるの」
余裕の弥刀さん。
「す、すみません。耐えきれず」
「あー、要さんにちょっかい出してるー」
「ちょ、竹腰さん、痛かったんだよ。荒っぽい悪ふざけは止めてくださいよ。わざわざ靴脱いでるし」
「デレデレしているからですよーだ」
竹腰さんは靴を履きながら、鉄臣君の抗議に反論する。
「そ、変な誤解は止めてください。弥刀さんに聞いてくださいよ」
「要さん、この男はなんて言ってました」
「なんだっけ。【誰とデートしたのかは聞かないでくださいよ】だったかな」
「これから、生徒会の風紀を乱した三石君を尋問します」
「ちょ、会長。弥刀さんのジョークですよ」
「お曾祖母様に言いつける」
「竹腰さん、お姐さんは関係ないですよね」
鉄臣君、ピッーンチ。
いかがでしたか?
一部控えめに実話ですので、ご容赦ください。
次話から本格的に夏イベントの話しが始まります。
次話をお待ちください。




