部活動 5-5.5
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
鉄臣君、すれ違いを重ねてきています。
ではでは~
鉄臣君、自室に到着。
一通の封筒を持っていた。
寮のエントランスの郵便受けに封筒が入っていた。
宛名や差出人が書いていなかった。
「誰からだろ?」
一瞬ストーカー男を警戒した。
「いやいや、楠木さんの身の危険を考えたら、警察とかに拘束されているはず」
封筒をLEDライトにかざして、透かしてみた。
「カミソリとかは入ってないか」
ポケットナイフで封を開けて、恐る恐る覗いてみた。
手紙のような紙が入っていた。
注意して取り出して、折られた紙を開く。
一行目に差し出した本人が名乗っていた。
送り主は桃園さんだった。
電話番号もメールアドレスも消去して、電話に出ず、メールは読まずに消していた。
何か書いてあってもその裏側では、悪意ではないにしても彼女から見下されていると思うと惨めで情けなくなる。
帰れと言われたときから、彼女とのコミュニケーションが怖くなっていた。
それ以上に、どんな立場に追い込まれるか、それを甘受できるのか不安で仕方がない。
生徒会のメンバーと会うときには、これが最後だと自分に言い聞かせていたりもする。
幸い、表向きに変わった様子はないので、かろうじて平静を装っていられる。
今の状況だとアヤメさんと楠木さんだけがマシ。
アヤメさんは、言われた通りするだけで何も考えなくていい。
楠木さんは、今回ストーカーの排除を手伝った分は、心証は悪くないはずだ。
堀田さんや弥刀さんもマシかもしれないが、婚約の現場に出しゃばったのが良かったのか悪かったのか。
婚約、結婚後も不倫の関係で過ごすのが当たり前だったかもしれない。
竹腰さんの気持ちを聞いて黙っていられなくなったに過ぎない。
みんなに迷惑をかけずにできたかもしれないと思うと後悔してしまう。
会長はどうだろう。
まだ、本音がわかる会話を交わしていないだけで、基本的に桃園さんと同じと思って大きな間違いはないと思う。
後輩のふたり。
中学から喪部部員。
先輩と呼ばれはしているものの、彼女らが年下というだけで、自分が彼らから何も秀でていない。
家庭教師も名ばかりで、役立たず。
切り捨てられてもおかしくない。
結果次第ではバイト代は辞退して、潔くしておきたいとも思っている。
ほかの喪部部員にしても同じだろう。
生徒会から、はじき出された時点で終わる。
いや、初めから始まっていないと考えた方がいいだろう。
鉄臣君、目が熱くなって蹲ってしまった。
「無理に水平にいる必要もないか」
一応考えがまとまったところで、考えるのは終わらせた。
着替えを引っ張り出し、シャワーを浴びに自室を出ていく。
ドアが閉まると携帯電話が鳴り始めた。
数回で鳴り止んだ。
= = = = =
「どうだい、準備は進んでいるかい」
「はい。こっちから持っていくものは一揃い」
「不安なら、予定を変更してもいいんだよ」
「父上は心配性ですね」
「いや、母さんも寂しいと思うからね」
「父上が留学した歳になりましたから、親の方が我慢してください」
「わたしは大丈夫なんだが、母さんがな」
「あなた、わたしは平気ですよ。むしろ、どなたか見つけてくれてもいいと思っているんですから」
「わたしが留守中、ジークが頑張ってくれますから」
「ジーク、お昼寝なら、お部屋に行きましょうね」
母が弟を連れて部屋を出ていった。
「コホン、向こうでは、ホッタやタケノコシが協力してくれるから」
「はい。ところで、お願いしていた件は大丈夫でしょうか?」
「それなら、手配しておいた。寮で過ごせるが、長期滞在ならホテルを使っても費用で賄えるよ。今からでも変えられるが」
「一学生として過ごしたいんです。わがまま言って、すみません」
「昔から、一度決めたら変えないな。どっちに似たのか」
「クスクス、強情なのは、父上の方かもしれません」
= = = = =
鉄臣君、シャワーから戻って、緊張していた。
また汗を掻きそうだった。
それも嫌な汗。
桃園さんからの手紙を目の前に置いている。
読まずに捨ててしまう選択肢もあるが、鉄臣君の性分として、存在しているモノを確認もせず処分するのは抵抗があった。
覚悟を決めて読むことにした。
どれほど罵詈雑言が書かれていても気にしない、逆におだてるような文言には騙されない、そんな覚悟だった。
読み始める。
<鉄臣君、この前、怒鳴ってしまったことを謝ります>
<鉄臣君がいつも私達を下から見上げるようにするのが我慢できなくなり、怒鳴ってしまいました>
<私のわがままで、ごめんなさい>
<鉄臣君、これだけは信じてください>
<私は、鉄臣君と友達だと今も思っています>
<鉄臣君は、私が喪部部員で生徒会の副会長だから、遠慮しているのではありませんか?>
<生徒会に入ったのは、鉄臣君が生徒会に入っていたからです>
<偶然、堀田さんに生徒会に誘われて、紫苑さんから副会長に任命されました>
<クラスが違うから、会うことのない鉄臣君と友達になりたかったからです>
<私には、喪部や生徒会よりも鉄臣君が友達でいてくれる方が大事です>
<知り合うことができたから、友達になれたと思ったから、みんなには悪いけど喪部と生徒会は不要になりました>
<どっちも辞めて一般生徒になったら、鉄臣君は遠慮しないですよね?>
<桃園ほのかは、三石鉄臣君の友達です>
<あおいちゃんを護ってくれて、ありがとうございます>
携帯電話が鳴る。
「はい、三石です」
≪あ、あの桃園です・・・≫
「・・・」
≪もしもし≫
「はい・・・」
≪手紙、読んだ?≫
「はい」
≪・・・良かった。グス、それだけ確認したかったのぉ゛≫
「・・・」
≪あ、あおいぢゃんをまぼってぐででありがどう≫
「桃園さん、泣かないで。友達が泣いていても慰め方がよくわからないんだ」
鉄臣君、桃園ほのかという友達がいること認めた。
いかがでしたか?
短い手紙でも思いを伝えるには充分なときがあると思います。
次話をお待ちください。




