部活動 5-4.7
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
鉄臣君、楠木さんが心配で張り込みに向かいます。
ではでは~
鉄臣君、遠くからだが、楠木さんのマンションのエントランスに制服警官がいるのを見かけた。
しかし、その警官に違和感を感じてしまったので、焦った。
慌てて楠木さんに電話をかける。
マンションに向かって駆けだしていた。
楠木さんは電話に出ない。
エレベーターの表示を見ると一基の階数が上に向かっている。
≪鉄臣クン?≫
「楠木さん、警官が上がったかもしれないけど、絶対扉を開けちゃいけないから」
≪え?≫
「お願いだから。今から俺もそっちに行くから、それまで待って」
≪わ、わかった≫
= = = = =
≪ピンポーン≫
1105室のインターホンが鳴る。
部屋からの反応はない。
≪ピンポーン、ピンポーン≫
ドアの前の男は、部屋に女の子が居るのは知っている。
エントランスからここまで来れたのはそのおかげ。
ドアの前の男は、エレベーターのドアが開くのに気が付いた。
高校生くらいの少年だ。
少年はポケットからカギを取り出し歩いてきた。
おそらくは、この階の住民だろう。
大丈夫、警官がいても不自然じゃない。
この部屋の住民がストーカーの届け出をしているのだから。
≪ピンポーン、ピンポーン。ドンドンドン≫
ドアの前の男は、少々手荒にノックする。
しかし、男の予想は外れた。
カバンを持つ腕に衝撃が走り、何が起きたかわからないまま、気を失った。
= = = = =
≪≪ピンポーン≫≫
「楠木さん、絶対出ないで。外から確認するから」
≪ツー、ツー≫
「電波が届かないか」
鉄臣君は焦った。
警官と思った男の恰好は不自然だった。
工具入れのようなカバンを持っていた。
ベルト周りが手錠や無線機みたいのでゴテゴテがなくてすっきりしていた気がする。
防弾ベストっぽい背中が無地だった。
導き出された予測は<ニセ警官>
インターホンから見ただけだと絶対騙される。
エレベータのドアが開く。
居た。
予測は確信に変わる。
警戒させないように近づかないと不意打ちができなくなってダメだ。
ポケットを探ると寮のカギがあった。
これ見よがしに弄んで見せた。
ニセ警官の注意がそれた。
鉄臣君、準備しておいた折りたたみ傘のようなモノをワンショルダーバッグから取り出して、ソレのスイッチの位置を確認すると深呼吸した。
大きな動きじゃなかったので、ニセ警官は気が付かない。
≪ドンドンドン≫
ニセ警官が乱暴にノックをするのが見えた。
鉄臣君、切れた。
大事な、自分が到底釣り合わない彼女に害をなすニセ警官を始末したい。
抑えきれない気持ちが鉄臣君を衝き動かす。
最初の目標は、カバンを持つ腕。
カバンを振り回されるとそれなりに厄介だ。
ましてや、中身が凶器だと取り出されると厄介どころじゃない。
駆けださず、すり足のように近寄り目標の腕に折りたたみ傘のようなモノを押し付けてスイッチを入れた。
≪バチッバチッバチッ!≫
手を叩くような音がすると、ニセ警官はカバンを落とした。
鉄臣君、間髪置かずに警棒型スタンガンを男の首に押し付け、スイッチを入れた。
≪バチッバチッバチッ!≫
≪バチッバチッ!≫
≪バチッバチッ!≫
男が短く呻いて倒れこむが、意識が無くなるまで断続的に電撃を続ける。
鉄臣君、父親から効果的な使いかたを教わっていた。
実家から送ってきたときは、呆れていたが、まさか使うことになるとは。
1105号室から、メイドが出てきた。
「三石さん、お疲れさまです」
「あ、こんばんは。えーと」
「クリスとお呼びください」
「クリスさん。もう大丈夫だと思いますが、警備員さんって、来てもらえますか?」
鉄臣君、気を失ったニセ警官に乗りかかって、スタンガンをいつでも使えるように押し付けていた。
「三石さん、外に待機しておりますので、しばらくお待ちください」
「はい、ありがとうございます。ボクじゃ、時間稼ぎくらいしかできませんから」
「クスッ。三石さんは面白い方ですね」
「ただのパンピーですから」
= = = = =
桃園家の警備員さんたちがニセ警官を拘束して、連れて行った。
「じゃあ、ボクも帰ります」
「あの、お嬢様がたにお会いにならないのですか?」
「ボク、ビビっちゃって、早く帰りたいんで、すみません」
「一言でも」
「ごめんなさい。帰ります」
鉄臣君、クリスさんが引き留めるのも聞かずに階段の方で降りていく。
エレベータを待っていたら、彼女たちが部屋から出てきて会ってしまうから逃げ出した。
ニセ警官のカバンの中身を確認した時点で、クリスさんが楠木さんと桃園さんを部屋から出さないようにしていたおかげでうまく逃げられた。
カバンの中には、ビニールシート数枚、包丁が3本、のこぎりが2本、針金、ビニール手袋数枚、ガムテープ、ゴミ袋数枚。
最悪の夜は防げた。
いかがでしたか?
鉄臣君、いろいろ持っていますねw
危機一髪でした。
次話をお待ちください。




