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部活動 5-4.6

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


鉄臣君、橘ひよりと一緒に帰ります。


ではでは~


鉄臣君、橘ひよりにじゃれつかれながら駅まで歩くことになっていた。

目いっぱい手や腕を弄られる。

「せんぱーい、恋人だったら、腕を組んだりもしますよ」


「ねぇねぇ。恋人繋ぎってどう思いますか?」


「ふむふむ、先輩の腕はなかなかしっかりしていて、かっこいいです」


橘ひよりはフルアクセルだ。

駅までの間、ふたりっきりの時間をフル活用するためなのかもしれない。


「橘さん、そんなに無理しなくてもいいよ」

「無理はしてませんけど」

「だって、ほら。暑いから手のひらに汗かいてるみたいだし」

橘ひよりは、鉄臣君の何気ない指摘に耳まで真っ赤になった。


「せん、せんぱい。・・・気持ち悪い?」

「ぜんぜん。 かわいい子は汗もサラサラで羨ましいなって思うだけだけど?」


「・・・も、もうすぐ駅です」

「みたいだね」

鉄臣君、静かになった橘さんを見て、また何か、やっちまったと猛省していた。


 = = = = =


「えーと、橘さん?」

「はい」

「ボク、なんか気に障ること言ってたら、ごめん。人の気持ちがわからないから、ひどいこと言っちゃうんだろうと思う」

「くふふ、そうですね。せーんぱいは、人の気も知りません」

鉄臣君、電車に乗ってから、気まずさに耐えきれず、橘ひよりに謝った。

しかし、なぜか橘ひよりの機嫌が良いように思えた。


「先輩、夕飯はどうするんですか?今日は両親が帰ってきていますから、一緒にどうかなって思います」

聞くところによると、橘ひよりの父親は聞いたことのある舞台演出家、母親はオートクチュールのデザイナー。

ふたりが駆け出しの時、ブロードウェイに単身飛び込んでとある公演に携わったときに知り合い、紆余曲折の末、結婚したらしい。


「父は、オペラの研究もしていて、ヨーロッパにいることが多いんです。母は、舞台衣装を手掛けていたんですが、いつの間にかデザイナーになったそうです」

「へー、すごいね。もしかして、橘さんもヨーロッパによく行くの?」

「ボクは、中学になるまでは、ヨーロッパを行ったり来たりでした。合唱団に誘われたこともあるんですよ」

「納得。橘さんって声がきれいだもんな。澄んでるっていうか」


「・・・褒められるとちょっと恥ずかしいです。たまたまですから」

「そうかなぁ。スカウトとかしょっちゅうでしょ?」

「滅多にないですよぉ。ボク、平凡ですから」

「平凡じゃ中学から喪部に入部してないと思うけどな。ボクの場合は、モブ枠だから例外だし」

「ボクは、先輩のこと、すごい人だと思ってますから」

「・・・どこもすごくないよ」

鉄臣君、橘さんが嘘は言っていないっと思ったが、評価とかけ離れた自分を考えると複雑な心境だった。


 = = = = =


「先輩、もう少しお話しできます」

「来週は、ちゃんと勉強教えるからね」

鉄臣君、橘ひよりの降りる駅のホームで立ち話をしていた。

橘ひよりの両親が迎えに来るらしいから、それまで付き合うことにした。


「はーい」

「なんか、気の抜けた返事だね?」

「先輩、せっかくの夏休みだしぃー」

「だから俺はバイトで稼がないとダメなんだよ」

「ボクがお願いしてるんですからぁー」

「だから、勉強するんだよ。堀田さんたちの引継ぎするんだから」

「だってぇー」


「ふー、後輩が頑張ってる姿を見て励まされると思ったんだけど」

「先輩、ボク、頑張ります!」

「お、おお。俺も負けてられないな」


「あ、両親です」


鉄臣君、橘ひよりの視線の先を探ると普通じゃないオーラのカップルを見つけた。

「やっぱり、印象が違うね」

鉄臣君、特に何も考えず素直に感想を口にする。

「やっぱり、変ですか?」

「え、いやいや。僕ら一般人とは存在感が違うと思うだけだよ」


「先輩、ボクには変人って言ってるように聞こえます」

「ご、ごめん。やっぱり、俺ってダメダメ。ほんと、ごめん。ご両親は喪部OBたちみたいにすごいって、感じるだけだから。・・・言葉が全然足りてないんだよね」

「せんぱい・・・。ご、ごめんなさい。ボ、ボク、いつも、みんなが≪変わってるね≫っていうから」

鉄臣君、橘ひよりの言葉で、山荘で堀田さんの言った喪部の成り立ちを思い出した。

部員にとって、向けられる眼差しは、羨望も奇異も同じものに思えてしまうような疎外感を感じているのだと。


「橘さん、ボクは、橘さんが言ってくれるような男じゃないと思う」

「・・・せんぱい」

「それでなんだけど、みんなががっかりすることがあったら、ボクの方からいなくなるからね」


「・・・」

「じゃあ、もしよかったら、来週ね。・・・ご両親が待ってるよ」


鉄臣君、無言でとぼとぼ歩く橘ひよりを見送っていた。


橘ひよりは改札の向こうのご両親の許まで行くと抱きついた。


(橘さんちも仲がいいんだな)


 = = = = =


鉄臣君、部屋に戻ってきた。

「フフフ、さあ、戦争を始めよう。 ・・・シャワー浴びてこよっと」


 = = = = =


「ほのかちゃん、今日は、ほんとありがとう」

「おやすいごようですわ。あおいさま」

「もう、茶化さないでよ」

「フフフ、よかった。朝会ったとき、危ないって思ったんだもん」


「お嬢様、今日は3人残しましょうか?」

「クリスさん。警察にも相談したから、みなさんには戻って休んでいただきたいのですが」

「あおい様、お気遣いありがとうございます。みな、タフですから」

「でも」

「わたしたちは、お嬢様の笑顔は励みです。あおい様の安寧は、その励みの一助であるのは、紛れもない事実です」

任務を超えた言葉を楠木さんがくみ取った。

「お任せします。お願いします」


 = = = = =


マンションのエントランスでひとりの警官が1105室を呼び出していた。

いかがでしたか?


橘ひよりは鉄臣君に懐いています。


ストーカー問題は、早速警察が動いたようですが。


次話をお待ちください。

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