部活動 2-1.1
水平学園はGWを迎えます。
喪部部員は個人的に忙しいので部活動は、生徒会だけの行事になります。
苦学生鉄臣君にとっては、どうでもいい期間ですが、ちょっとした波乱が始まります。
ここまで、お読みいただいてありがとうございます。
平行執筆中のファンタジー「一人(と何人かの)旅」もよければ、お読みください。
「三石君、お花見はお疲れさまー」
「あざーす」
「さあ、大型連休も目の前だし、次の部活動が何がいいと思う?」
「いつもは何をしているんですか?」
「うーん、連休は皆予定が入るから特に何もしていないんだよ」
「はあ、まあ、そうでしょうね」
「君は予定を入れているのかい?」
「予定ないですよ。春休みは実家に帰っていましたし、バイトでも入れようかと」
「そうか、いいバイトがあるんだけど紹介しようか?」
「ええ、そうなんですか。どんなことです?」
「興味あるかい?」
「あります、あります」
眼鏡イケメンが意味ありげに笑みを浮かべる。
「とある山荘の掃除なんだけどね」
= = = = =
「あのー、どうして生徒会のみなさんがいらっしゃるのでしょうか?」
「ここは僕の叔父が借りていてね、掃除をすれば自由に使っていいことになっているんだよ」
「あー、なるほど」
(ボクが掃除をして、綺麗になったところにみんなが泊まるってこと・・・か!!!!え、え、え?ハーレム?もしかして堀田さん、全員とーーーーー)
「鉄臣君、大丈夫?顔色悪いよ?」
「いえ、大丈夫です。残りを片付けます」
「鉄臣君、なんか怒ってる?」
「いえ、別に」
「三石君、どうしたの?知らせていなかったの怒ってる?」
「いえいえ、そんなことはありません」
「怒っているなら言ってちょうだい」
「別に、怒ったりしていません。掃除に戻ります」
鉄臣君、頭では理解したつもりでいた。怒るな、リア充超エリートと一緒に居るとこういうことは日常茶飯事だぞ。
「正輝君、どうして黙ってたの?きっと誤解してるよ」
「ごめん、要。バイトの後はそのまま合宿って軽いサプライズのつもりだったんだけど」
「彼にはその発想はないのよ。他人の山荘に泊まるって」
「そうね、紫苑さんと私は喪部の行事でここを何回か使ってるけど三石君は今年初めてだから」
「あのー、わたし手伝っちゃダメですかぁ?」
「それ、わたしも手伝いたい、泊まるところですし」
「その前に彼の誤解を解かないとダメね」
「じゃあ、わたしが三石君に話してきましょうか」
「わたしが行くわね。鉄臣君とは話が合うみたいだし」
「それだったら、わたしも合ってますぅ」
「ふたりとも、会長の私が適任だから、任せてもらうわ」
「「私たちも副会長ですから」」
= = = = =
「どうして、超エリートの近くなんだろ?遠くから眺めるだけなら、格差を思い知らされることもないのにな。別荘かぁ、叔父さんとこが山と海に一軒ずつ持ってたよなぁ。田舎だから維持費は安いとか言ってたっけ」
鉄臣君、山荘の窓を全開にし、空気を入れ替え、ホコリを払い、床の拭き掃除をし、ゴミをまとめて作業は、終わった。
終わったころには空の色が変わり始めていた。
予定では夜まで掃除して、泊まって翌朝出発するはずだった。
しかし、今となってはハーレムの邪魔者でしかない自分の存在が情けなかった。
すでにこの建物の中に居るのは苦痛でしかない。
今なら時刻表で調べておいた最終バスには間に合うはず。
間に合わなくてもバス停に囲いと屋根があったから、最悪でも野宿できる。
(早く荷物をまとめて出発しよう。やべー、眼が熱くなってきた、最近多いなこのパターン)
鉄臣君はふと料理のいい匂いに気が付いた。
(ああ、みなさんはお食事ですか。それから・・・。ま、貧乏人には関係ないことだし)
鉄臣君、荷物をまとめた。
傾斜の大きい屋根のこの山荘はほとんどの部屋は一階にあるが、みんなが居ると思われるダイニングを通らず玄関に行けた。
初めて訪れた建物だが、掃除をして間取りは頭に入っていた。
音を立てずに玄関に向かった。
そのとき、声が聞こえた。
「鉄臣君、待ってたよ。里芋作ってきたから明日だし巻きお願いぃ!」
声の方に振り向くと桃園副会長が泣くのを我慢する子供のような顔で立っていた。
「どうして?」
「だから、掃除が終わるの待ってたのぉ」
「なんで?」
「みんなで夕飯を食べるからに決まってるでしょ!ほら、もう、ダメだから、もう、こーーちっ!」
鉄臣君、桃園さんに腕をつかまれ、ぐいぐい引っ張られた。
「鉄臣君、お疲れさま。手を洗って。みんなでお夕飯にしましょう」
「みんな、三石君の掃除が終わるまで食べようとしなかったからね」
「弥刀さん、それは黙っておいてと」
「あおいちゃん、そんなこと言ってた?」
「三石君、今回は僕のミスだった。悪かった許してくれ」
「え、いえ、大丈夫です・・・」
「どうしたの?何?」
「い、いや、どうして掃除が終わったのが、わかったのかなって」
「判らない?」
「はい」
「それはぁ、/////」
「桃園さんが何度も部屋の前に行っては、部屋の中の音をこっそり聞いていたからよ」
「久遠寺さん!それ言わないでぇー」
「鉄臣君がいろいろしていなくてよかったわ」
「そ、そんなことしませんよ」
「そうよね。私が勝手に想像しただけよ、ポニーテール」
「!!!」
「どうしたの?さあ、お夕飯をいただきましょう。書記長と会計長はあっちの席ね」
「「えーーー会長ーー!!」」
「何か?」
「なんか仲間はずれじゃないですかー」
「そうですよ、合宿でここに居るんですよ」
「そうなの?私はてっきり婚前外泊なのかと思ったのだけど?」
「そうですよねぇ、わたしたちはお邪魔ですよねぇ」
「わたしは、その、別にお二人の邪魔をするつもりはありません」
「リア充」(ボソッ
「「三石君まで!」」
鉄臣君、格差をひしひしと感じているために
知らず知らずに壁を作ってしまっています。
何とか乗り越えたようですが、まだ始まったばかり。




