5章 --2(夏休み中 その2)
そしてあるとき 高遠真紀がこう言って来たのだった。
「空野くんとわたしの 二人のときでは
下の名前で呼び合わない?
やっぱり下の名前で呼び合った方が
いいわよね。陽くん」
空野陽は突然のことで びっくりもしたから
こう返した。
「僕はそうですね。 あなたさえ良ければ
構いませんが 急にどうしたんですか」
「…それはあなたのことをもっと良く知るため
というか もっと今以上 お互いをわかり
合うためのその過程の一部なのよ。
だから陽くんも わたしの名前を呼んでみて
早く」
そう 高遠真紀に言われたので僕は 覚悟を
決めて 名前で呼んでみた。
「それでは 失礼ながら
改めてよろしくお願いします。
真紀さん」
高遠真紀は嬉しそうにこう言ってきた。
「良く出来ました。 でもその言葉の続きに
好きって言葉を付けてくれたら
もっと嬉しいのに。
それは 全然言ってくれないのね。
何とか言って欲しいものだわ」
と 僕にそう言うのであった。
好きって言うことには 僕自身にも
こだわりがあった。
確かに付き合ってはいるが
僕のこの口からその言葉を 本気で
好きになってからじゃないと
「好き」って言葉を 言えなかったのである。
好きは好きでも そんなに軽々しく
たとえ付き合っている仲でも
「好き」って なかなか言う勇気もなかった。
それだから 下の名前で呼び合うのを
OKしたのであった。
下の名前で 呼び合うのも結構 恥ずかしくて
少し抵抗があったが まあ二人の間だけならと
思って OKしたのだった。
それから 二人のときは 陽くん 真紀さんと
呼び合うことに決定したのだった。
そのことは 7月の下旬の夏休みの最中の
あるカフェでの 二人のデートのときに
決まったことだった。
こういう二人でのカフェに行ったり 本屋に
一緒に行ったり 図書館に入って本のことについて
話したりと 夏休みに入ってからは ほとんど
デートをする日々に なっていたのだった。
僕は そういうデートにとても 満足していた。
付き合うって こういうことなのかって
改めて感動もし きっと僕自身の心が
本当に強くなれると 信じて来るように
なりだしたのであった。




