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一時間で書きました  作者: 己紫尾 尽座
7/16

ロールアウト

「先輩、ロールアウトです」

 扉を開けて部署に戻ってきた新入社員が、仲の良い先輩に向かって言った。

「何がロールアウトなんだ」

 言われた先輩はキーを叩いていた手を止めて新人を振り返った。

 新人が先輩の傍らに立って、そのまま雑談を始める。

 私はそれをチラチラ見ながら作業を続ける。私はこの新人も先輩も好きではなかった。ことあるごとに作業をやめ雑談してサボるのだ。

 ゲラゲラ笑い出す二人。

 何がおかしいのだ、仕事中だぞ。

 と言えると私も楽なのだが、臆病なせいで中々それもできない。せめてもの意思表示で非難の目は向けてみても、いまだ気付かれた事はない。

 二人はまだ雑談している。

 どうせ下らない話なのだ。新人が言ったロールアウトだって、きっとどこかで覚えて使ってみたかっただけだろう。そもそも下請けの会社なのだから、新商品のお披露目を意味するロールアウトなんて言葉とは無縁なのだ。元請けから依頼された物を作るだけ。新しい物を作っても、それをロールアウトするのは元請けなのだ。

 私はイラついた手付きでキーを叩く。新人の声が耳に障る。

 だいたいこの新人はやる気という物が全く感じられない。今雑談しているのもそうだし、仕事中席を立つことも多かった。さっきみたいにトイレにいって長い間戻って来なかったり、先輩のところに質問か雑談かをしに行って今みたいにそのまま話し込んだり。

 新人の笑い声。私はもう我慢ならなくなって、用を足すついでにトイレで落ち着くことにした。

 トイレの個室、便座に腰を下ろす。

 用を足しトイレットペーパーをとろうとして、私は気付いた。

 紙がない。

『先輩、ロールアウトです』

 新人の言葉の意味を知って、私は声をあげた。

「無くなったんなら換えとけよ!」




 

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