スフィア
「いい加減にしてよ」
そう高崎寛斗はつぶやいた。
四月末。新しい高校生活にも慣れた頃。
家族はいない。死んだとかではなく寛斗は生まれてすぐ施設に捨てられた。
その施設も、高校入学と同時に出て一人暮らしをはじめた。
成績は中の中。身長は同年代に比べやや低く、細身でひ弱な印象を受ける体躯。その上女子と見紛うような中性的な顔立ち。もしお前が女なら彼氏には困らないとは一緒の施設で育った幼馴染の台詞。
性格は誰かと衝突するような性格ではないが、必要があれば敵を作ることにためらいがない。そのせいで高校は住み慣れた町を離れなければいけなくなっていた。
事の発端は、自分にカツアゲをしようとした(最初はナンパだった)不良たちを返り討ちにしたことだった。彼らは、この町ではそこそこ名の知れたグループだったらしく、そのグループをたった一人で返り討ちにした寛斗は町中の不良に目をつけられてしまった。
しかし施設にいた頃、施設長の方針で剣道、柔道などさまざまなものを習っておりそこで十年に一人の逸材とまで言われていた寛斗にとって不良グループなど取るに足らない存在となっていた。そして、中学卒業の頃には不本意ながら町の中最強とまで言われるようになっていた。
その結果、せめて高校生活は喧嘩とはかけ離れた普通の生活をしたいそう思って一人暮らしまでしたというのに、いつの間にか寛斗の名前は町の外の不良たちにまで広まっていた。
そして、四月に入ってからほぼ毎日挑んでくる不良を撃退するのが日常になっていた。
そんな寛斗の気分はすぐれていない。別に不良が毎日押しかけてきているからではない(まぁまったくないわけでもないが)。
寛斗はとにかく退屈だった。
毎日こちらが呆れるくらい不良たちは勝負を挑んでくるし、学校の宿題や友達と遊びに出かけたり充実した高校生活を過ごしているが、寛斗はこの生活に退屈さを感じていた。
しかしこの日常を自分から変化させるような行動をとることもなく、このまま高校生活を過ごしていくのだと寛斗は思っていた。
しかし、そんな生活は突如として終わりを告げた。
読んでくれてありがとう!!
自分にとって実質初作品になると思うので少しでも読んでくれる人ができるように頑張っていこうと思っていますよろしくお願いします!!