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週が開けたその日、黒子の衣装に身を包んだマコトと燕尾服に身を包んだミックはお城の一室でお茶を飲んでいた。
「なぁ、ミック」
「なんだ?」
「よく考えたらさ、黒子の衣装で来る必要無いよね。ここで着替えればいいよね」
「おーようやく気づいたか。偉い。偉い」
ポフポフと可愛らしく拍手するミック。明らかにマコトを馬鹿にしていた。
「気づいてたんなら教えてよ!!お城の人たちに白い目で見られたじゃんか!!」
「お前でも人の目を気にするんだな。意外だ」
俺を何だと思ってるんだ、と落ち込むマコトを横目にミックは優雅にお茶を飲んだ。ぬいぐるみなのに飲み食いできるようだ。
「だいたい、今さら人の目を気にしているお前がおかしい」
ふぅと息をつきながらミックは呆れたようにマコトを見た。が、マコトはそんな目で見られる理由がわからないらしい。
「どういう意味だよ?」
「お前のこと商店街の連中が騎士団に通報しようとしてたこと知らないのか?」
「え?」
ミックの思いがけない一言に、マコトは自分の耳を疑った。そんな驚いた様子のマコトを無視して、ミックは先を続けた。
「お前、広場での初日もその格好で行っただろう」
「うん……あ!」
何かに思い至ったマコトは、小さく声をあげた。
「そういうこと。幸いすぐに劇を始めたから誤解がとけたみたいだが」
「…これからは気をつけるよ…少なくとも顔は出す。移動中は…」
それがいいな、と再びミックは優雅に茶をすすった。一方、マコトは劇の上演が始まる夕刻まで、いじけて過ごしたのだった。